テニス部に入部してから(いじめ?刑事事件と民事事件の違い)
こんにちは。弁護士の紙尾です。
前回、BさんがC先輩からいじめにあっていたケースを解説しました。
その時に宿題として持ち越した、刑事事件と民事事件の違いを解説します。
1 刑事事件
なぜかはわかりませんが、弁護士のところに相談に来る方は、トラブルが起きると、「警察に相談したい、警察に訴えたい」と言う方が一定数いるように感じます。
しかし、警察が捜査を行うのは、あなたの被害感情を回復するためではなく、国家が刑罰権を行使するためです。
したがって、捜査の結果、刑罰権を行使するに値しない(法律上、刑事罰に該当する行為が無い又は証拠によってきちんと確認できないなどの場合)場合には、告訴を受け付けてくれたとしても、実際に加害者が処罰されるなんてことはありません。
ちなみに、刑罰権を行使するためには、原則として刑事裁判を行って、裁判所の判決を得ることが必要となります。
その際に、刑事裁判に訴えるべき事案かどうかを決めたり、裁判が開かれた場合に、「この被告人は、刑事罰に該当する行為を行ったため、これくらいの刑事罰を与えることが相当です。」と主張、立証する責務を負っている職業が、「検察官」です。
私の世代だとヒーローのキムタクと説明すればわかってくれるのですが、若い人には何と説明すればよいのやら。。。
2 民事事件
1とは異なり、加害者に対して、直接何らかの請求を行うこともできます。これが民事事件です。
「何らかの請求」は、一般的には、「お金を払え」という賠償金請求を選択することが多いです。残念ながら、「その場で土下座しろ」とか「謝罪しろ」という被害者側が求めたいものの第1位の要求は、裁判所では認められません。裁判所が、そのような行為を強制するわけにいかないからです。
(ちなみに、謝罪文を作成して、それをどこどこに掲載せよという判決は実現可能なので、認められることがあります。)
なお、いじめの件を離れれば、「何らかの請求」については、物を引渡せ、登記名義を変更しろ、土地の上に立っている建物をどけて土地を明け渡せなどなど、金銭請求以外の請求を行うことも良くあります。
3 まとめ
以上のとおり、刑事事件と民事事件は、いずれも裁判所を通じて最終判断が可能だという点は共通ですが、訴訟を追行する主体も違えば、最後の判決の内容も違います。
なんでもすぐに警察に相談すれば何とかなるというものではありませんので、どんなことがあったのか「足跡」を残しておくことが重要だという点は忘れないでください。
なぜなら、民事事件は、あなた(またはあなたが選んだ弁護士)が主役ですから、裁判所にきちんと何があったかを理解させる役目を担うのは、あなたになるからです。
以上、弁護士の紙尾浩道でした。
記事をお読みいただきありがとうございます。弁護士は縁遠い存在と思われないよう、今後も地道に活動をしようと思いますので、ご支援よろしくお願いします。