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この絵はこの詩から生まれました ──詩の世界をアートに [第42回]

私にとって詩は、絵を創作する際の起爆剤のようなものです。
いったん誘発されたイメージは自由に展開しますので、
できあがった絵は元々の詩とは異なることもあります。
詩の説明図ではありませんので、この点ご理解ください。

初夏江村  礒部晴樹・画


初夏江村          初夏のこうそん

軽衣軟履歩江沙       軽き衣 やわらかき靴 こうさにあゆむ
樹暗前村定幾家       樹暗く 前村さだめていくばくの家
水満乳鳧翻藕葉       水満ちて にゅうふ 蓮の葉をひるがえし
風疎飛燕拂桐花       風まばらに 飛燕 桐の花をはらう
渡頭正見横漁艇       ととう まさに漁艇を横たえるを見る
林外時聞響緯車       林外 時に聞く いしゃの響くを
最是黄梅時節近       最もこれ 黄梅の時節近し
雨餘帰路有鳴蛙       うよの帰路 鳴ける蛙あり

高啓

Tシャツ、Gパン、スニーカーで 河原の砂を歩けば
木陰のむこうに なん軒かの家
たっぷりした水に 鴨のひなが 蓮の葉をゆらして遊び
そよ風に つばめが 桐の花をかすめて飛ぶ
船着き場に ボートが横になって置いてあり
林のそとでは 糸車の音がする
そういえばもう 梅の実も色づく季節だなあ
雨上がりの帰り道 かえるが鳴いていた


*今回、古典詩を現代風に超訳してみました。
「源氏物語」や「般若心経」の超訳というのを
見たことがありますが、
やってみると、けっこう楽しいものです。

詩から絵を創作するようになって、
私の画境は、おおきく広がりました。
久しく忘れていた、
キャンバスとアクリル絵の具の匂いが
ただよってきました。

現在、絵本「かいぶつデゴン」の仕上げ中です。
近日公開予定です。



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