白虎ぼぼ

会津若松市 公共施設マネジメントタウンミーティング

データ利活用した政策立案プロセスをデータアカデミーでは作成しましたが、行政として市民と共同でめざす姿を作り込むプロセスはここには入っていませんでした。

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そこで、今回は、研究対象として実際の公共施設マネジメントのタウンミーティングを通じて、どのようなワークショップの設計、人材の育成、地域での話し合いを重ねていくとよいのかを支援という形で市役所、市民の方と共に約1年かけて行ってきました。公共施設マネジメントは、大抵の場合は、施設の縮小・削減が含まれているため、住民との合意が不可欠になり、市町村合併が行われた地域を中心に、既に顕著化してきている題材でもあります。

※今回の支援は、Code for Japanの研究目的もあり費用はいただかず支援事業として実施しました。

データアカデミーについては、私の書籍を参考いただけると助かります。

<公共施設マネジメントとは>

「人口減少」「税収の減少」「施設の老朽化/長寿命化」「施設運営費の上昇」など複数の要因により今後、多くの地域で公共施設が維持できない状況となります。そこで、地域として公共施設をどのように管理していくのか、残していくのかを検討し、計画を立てようというのが、公共施設マネジメントです。そのために、施設カルテや、人口動態/人口推移/小中学生の人数などを含めて多くのデータを活用します。
方法としては、自治体によって、先に方針を立ててしまってから、地域に説明会という形をとるところや、住民の意見からまとめようと異なる意見をまとめるのに四苦八苦している方、コンサルの先生方と資料をまとめてパブリックコメントとして行うなど様々な方法があります。

これは余談ですが、実際のところ、揉め事や難しい交渉ごとを後回しにして、次の担当者に回してしまうことも見受けられます、数年間決断を伸ばすと運営費はかさんでしまったり、個別の計画(緑化計画や一部施設の長寿命化計画など)ができてしまって聖域化してしまったりするので、計画を立てるのであれば庁内のすり合わせはもちろんのこと、計画を立てる計画をしっかり立てて、最後の年に頑張るということにならないようにすることも大事だと思います。

今後は、施設という箱の提供から、行政サービス・市民サービスに変えていくことでどのように街のデザインをしていくことを、地域ごとの市民と合意形成が必要になると考えています、これについては、今回、会津若松市の公共施設マネジメントでご一緒させていただいた、堤先生の本も非常に参考になります。

「公共施設のしまいかた」

<ワークショップの事前準備>

会津若松市役所の方々と、現在の公共施設マネージメントの状況の確認、今年度のワークショップの目的とゴールを打ち合わせました。複数年にかけて行うことなので、今の立ち位置と、どのように進めていくかの方針を合わせずに進めると、価値が出なくなってしまうので、この部分の合意形成非常に大事です。

【ワークショップ自体の内容】
 1、全体ワークショップでは、市の施設の状況、市長や堤先生からのインプットをもとに、市全体の意見の総論の元となる、それぞれのアイデアや思いを引き出す。

 2、地区ワークショップでは、全体ワークショップの結果を受け、各地域の資源(施設)や課題を通じて、自分たちも含めて何がしていけるのか考える。ワークショップは、地区により2回、3回に分けて行う。自治体に何かして欲しいではなく、自分たちとこうしていこう!と地域の施設と活動を通じてサービスとして考える。

 3、全体ワークショップと地区ワークショップの結果を、2020/5/9に発表する。その際に、グラレコや、まとめた意見を活用する。

【地域の人材育成】
常に、私たちが来て対応するでは、地域が自分たちで決めることは進みません。そのために、ワークショップや合意形成自身も自分たちで運営できるようになる必要があります。そのために、3つの研修を市民向け、職員向けに実施することになりました。

1、市民ファシリテーター育成研修
 もともと、タウンミーティングは地域のことを地域住民で考えることが主になりますので、ワークショップや意見の引き出しができる、中立性の高い市民ファシリテーターの存在は地域の意見を集めるためにも、集約するためにも必要となります。今回は、まずは、テーブルファシリテーションができるレベルまで実現できる講座をセッティングしました。実際に、各回のワークショップでも活躍していただいています。

2、市民グラフィックレコーダー育成研修
 今回は、ワークショップ全てに成果物としてグラフィックレコーディングをする設定としていました。そのため、地域の方達にも覚えてもらい、普段使いできるグラフィックレコーディングということで研修を行っています。
 グラレコは、全体ワークショップに来れなかった人にも、前回の様子がわかるため、非常に説明や内容共有に役に立っています。実際に、グラフィックレコーディングをした後にお聞きしたものですが、地域のデザイナーが、地域活動に最初から入りデザインを活用する場ができるのがよいという意見もいただいています。

3、職員向けファシリテーター/グラフィックレコーダー育成研修
 職員向けで気をつけたポイントは、通常の庁内の会議でも利活用できるようなパッケージにまとめたことです。イベントの時だけ使えるものになってしまうと、使う場が少なくなってしまうため、普段の仕事の中でも使えることで自然に身につけて、市民とも一緒に話せるようセットしました。今では、職員さんのなかでも活用してくださる人が出てきています。

全体ワークショップ この段階のドラフト

地区別ワークショップ この段階のドラフト

<ワークショップ全体構成>
CfJ支援分としては、全体ワークショップは1日。地区としては、全部で11地区を対象に5日に分けてワークショップを実施。これ以外に、昨年度から行っているエリアについては別途会津若松市役所と市民ファシリテーターの方で対応していただいています。

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<全体ワークショップ>
全体ワークショップは、下記の流れで行っています。
全体ワークショップでは、メインファシリテーターを市川博之、グラフィックレコーディングを市川希美、そして市民ファシリテーターの方に各テーブルに入っていただき対応をしています。

全体ワークショップの大きな流れは、下記の通りです。1−3で市民の皆さんに全体的な話をインプットし、4でワークショップを実施、5でまとめと確認をする構成です。

1、市長のお話
2、堤先生のお話
3、施設再編先行事例(北会津・川藤・湊地区住民)
4、全体ワークショップの実施
5、全体の構成と結果まとめ

特に、成果物をグラレコで作った場合に活きてくるのが、最後に自分の意見をこれだけは載せてよ!という確認が取りやすくなります。全体の総論的な意見もまとめつつ、個別の想いも受け入れる形です。

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ワークショップの結果(上が咲かせたい価値、下が悪い養分となる課題)

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<地区別ワークショップ>
地区別ワークショップでは、大きく5つのステップで進めました。
いきなり課題と、解決アイデアを考えさせると、目先の小さなことや、気になっていることだけが羅列されてしまい、本当に地域で取り組むことがわかりにくくなります。今回も、個々に気になっていることは多くあることもわかりましたが、逆にコアとなる部分で各地域ごとに同じことを考えている部分も多いよねというのが見えてきました。

1、地域の課題を明確化
2、地域の資源を明確化
→ 地域の課題と資源を天秤の形でグラレコでまとめる(価値の天秤)。
 価値の天秤は、課題を減らせば軽くなり、資源を有効に使えれば重くなる。

3、未来の地域のグッドエンド/バッドエンドの検討
→ 交通、教育・・・などをテーマに、このまま何もしなかったらどういう未来になるか、逆にすごく良いパターンになるものはあるかを考える。

4、理想の地域の姿・現実に向けたアイデアの検討
→ 良い未来に近づくため、悪い未来にならないようにするためには、どんな施設や資源をどう使っていくと良いか考える。

5、理想の実現に向けたアイデアのまとめ
→ 4で出たアイデアは、公共、企業、コミュニティ、住民のそれぞれが何をすれば達成できるのか考える。誰も、やり手がいないものや、公共だけに頼るものは解決しないアイデアとなることを理解する。

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<地区別ワークショップ>
地区別ワークショップでも、メインファシリテーター、テーブルファリテーター、グラフィックレコーダーの3つのロールを分けて実施しました。地区別ミーティングでは、テーブルファシリテーター、グラフィックレコーダーの両方を市民研修に参加いただいた方にも対応してもらっています。また、スタッフが少ない時には、長岡造形大学より、古沢菜月さん、竹内葉留子さん、鈴木音羽さんにもグラフィックレコーディングを支援いただいて、ワークショップを無事に完了させることができました。

市民ファシリテーターが入ることで、意見の引き出しや、まとめが噛み合うこと、グラフィックレコーダーが、テーブルごとの内容をまとめ、最後に確認することで、そうそう自分たちの議論はこれだよね!と参加者たちにも納得感が生まれることがよく分かったのが地区別ワークショップです。

また、前後の回で、参加者が違うことがあり、情報伝達に苦しむところもありました(これは、今後のワークショップ設計の課題)。しかし、各回でグラフィックレコーディングで成果物をまとめておいたのと、会場に貼っておいて事前に見れるようにしていたため、前回までの検討内容を共有するのが非常に楽になりました。

複数地域を、それぞれのチームで検討してもらったのも非常に効果がありました。それは、他の地域はこんなことを考えているのか、という気づきを得られることもそうですが、同様の課題を思っていることもあり、実は広域で取り組むことなのではないか?という気づきもあったためです。思っているよりも、自分の地域以外のことは知らず、他の地区のことは初めて知ったことも多いという意見もありました。

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また、このようなタウンミーティングでは、対話ではなく、自分の言いたいことをずっと話してしまう方が来てしまうこともあります。意見をもっていることは問題ないのですが、その方の演説だけで、その会場全体の時間を食ってしまうのは、他の参加者にとってマイナスでしかありません(こうするべきだ!という意見がある方は、請願という手もあるので、使っていただければいいのです)。
タウンミーティングは対話の場なので、上記のようなグラウンドルールを作成することで、この段階でご賛同いただけない方には、お帰りいただくこともありました。これは、ファシリテーターが中立性や、今回の目的のために必要な対話ができるかを担保する上でも引き受ける役割だと思います。自治体の皆さんと、市民とで直接バトルになってしまうと、収集が付かなくなることもありますので、ファシリテーターは中間に入って、ゴールに資することを進める心づもりでいましょう。

時間についても課題が発生しやすいです、特に市民の方に、最後まとめを説明してもらうと、時間を超過しやすいので、タイムマネジメントについては多少の余裕を持たせてワークショップを設計するのがコツです。早く終わっているのであれば、検討時間を伸ばせばよいので、この辺り焦らず、ファシリテーターの方は進めましょう。市民ファシリテーターやグラレコの担当の方は、端的にキーワードやメッセージを議論の中から準備すると、まとめの際にわかりやすくなります。

今後の課題としては、参加者の平均年齢を下げることが挙げられます。
今回、実際参加してみた若い人たちからは、こういう感じで考えられるならいいですね!という意見もいただいており、ワークショップの作りや、説明方法、チームで考えるという方法を含めて、年上の人の話ばかりを聞く会ではないことがわかればより参加者も増えることになるのでは?と思っています。参加しやすい場作り、子連れでも来れる環境づくり含めて、次年度の検討事項となります。

<地区ワークショップのグラレコの例>
南地区第1回(市川電産:市川希美さん)

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北地区第2回(長岡造形大学:鈴木音羽さん)

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中央/東地区第1回(市川電産:市川希美)

iOS の画像 (1)

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中央/東地区第2回(市川電産:市川希美さん)

全体グラレコ

中央/東地区第2回(長岡造形大学:古沢菜月さん)

名称未設定

中央/東地区第3回(長岡造形大学:竹内葉留子さん)

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<タウンミーティングの結果>
個別の施策や案については、ここでは論じませんが(市役所でまとめて5月に発表会をするので)、多くの価値と結果は出せていると思います。これをもとに、政策立案/計画立案のフェーズに入っていければ、研究事業としても良かったと言えます。

・各地域ごとのキャッチフレーズ、めざす姿と行動の案が完成
 → 目的達成、次年度これを個別の部分でどう織りなしていくのか考えていく。
 →ただし、20年後の未来と言いながらも、本来の世代が少なかったのでチグハグが出るところはあるかもしれない。これから活躍する層に一緒にやる方法を確認も必要かもしれない。

・市民ファシリテーターの育成
 → テーブルファシリテーションは可能となった。
  次は全体ファシリテーションだが、これは、場数を踏むなど経験をつんでいこう。

・グラフィックレコーダーの育成
 → 市民の中からもグラフィックレコーディンができるようになった方が出てきた。今回は長岡造形大学の学生もデビュー戦として行ったが、地域の大学生も今後は巻き込めるとなお良いと思う。
 → 終了後も、良かった点、悪かった点をグラレコ見ながら振り返りもできていた。

・参加者には、施設からサービスへということが伝わりつつあった。
・物→コトへ、コト→物へ、考え続けながら自らコミットしてゆき、地域の公共施設マネジメントをしていこう。

・振り返りの様子はこちら(振り返りすらグラレコとする)

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私の思いとしては、地域が育つには、地域で普通に地域のことに参加できることろが必要だと思っており、その1つ目が「人材育成」、そして2つ目が「場作り」、3つ目が「共にビジョンを作る」、4つ目が「ビジョンとエビデンスに基づいた政策立案」、そして5つ目が「地域の対話と共創と自治」だと感じています。

単に、アリバイ作りのためのワークショップは止めましょう、街の目標やゴールを一緒に作るための市民協働、市民対話を通じて、政策立案に進める。これが、データアカデミーの次の姿です。

実際に準備や、調整事項など、本当に多くて大変だけれども(これは需要があれば、別途話します)、こういうネタで相談できないか?があれば、Code for Japanまでご相談ください。

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