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「契約自由が原則で、明文化してある工事でも無効にできる可能性がある」

RCAA協会でプロボノ活動をやっています理事長の萩原大巳です。

最近クライアントの法務担当者より民法改正で借地借家法における原状回復実務の相談をよく受けるようになりました。
借地借家法においては、不動産投資のサブリース(家賃保証)の問題で世間を騒がせた「かぼちゃの馬車」水戸大家の物件に融資していたスルガ銀行、及びその他銀行の不正融資の問題が記憶に新しいと思います。

ここでは事業用不動産の原状回復の実務はどうなるのかを解説いたします。

法治国家の基本、六法とは?

実質的意義における憲法・民法・商法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法を六法といいます。六法という言葉は、箕作麟祥先生がフランス法を翻訳、山田 顕義初代司法大臣、日本大学学祖が民法・商法・民事訴訟法を編纂しました。フランスのリベラル思想を範としたわけです。刑法・刑事訴訟法は、大英帝国を範としています。

では、すべての法律の根っこである憲法はどうでしょう?

これは、ワイマール憲法(通称ドイツ共和国憲法)を範としています。当時としては、国民主権、議会制民主主義、社会権の保障、男女人権の平等を明確に記した理想を明記した憲法です。
それと共に進駐軍の法務関係者が「アメリカ合衆国憲法」「フランス人権主義」の理想を加味したと言われています。
ただし、第9条(戦争放棄、戦力不保持、交戦権否に関する法理)はアメリカの進駐軍の日本を二度と戦争できない農業国にする意向が記されたと言われています。
世界の情勢の変化により、憲法解釈も議論され現在に至っております。

民法改正(第621条)とは?

【賃借人の原状回復義務】
第621条 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の消耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない。
【最高裁平成17年判決の骨子】
「建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である」
(2005年12月16日判決、敷金返還請求事件、事件番号:平成16(受)1573)
                   引用:日経不動産マーケット情報


原状回復の明文化とは?

原状回復とは、賃貸物件を退去する際に「入居の状態を原状とし」原状を賃貸人・賃借人が共有し、証を残し原状回復する義務を賃借人が負う。回復する内容の詳細を明確化し、賃借人の理解を得ることです。

住居の原状回復は、大成出版社【再改定版】「賃貸住宅の原状回復をめぐるトラブル事例とガイドライン」の通りです。経年劣化、通常損耗の負担は賃借人にありません。
要は、原状回復工事は実質ないということです。ただし、特別損耗の負担はあります。

【特別損耗解説】
故意又はずさんな使用によって発生した汚れや傷、へこみなどの事

住居仕様の原状回復には特別損耗の復旧以外、養生も諸経費も記されておりませんし、特別損耗の復旧の際、養生、諸経費、残置物処理が発生します。また、賃借人に全て負担していただきますと明記する必要があるわけです。したがって、特別損耗がない場合は、所有物を撤去してクリーニング費用のみが原状回復となるわけです。

事業用不動産賃貸借契約では、床・壁・天井を新規貼替が認められるか?

これは住まいと違い、事業用不動産の場合、使用用途により不特定多数の人が出入りし、損耗、経年劣化が予想できないため、原状を賃貸人・賃借人が共有し明確化、承諾の証のある場合、新規貼替の法理となるわけです。

もう一つの法理は、「契約自由の原則」です。契約内容を当事者同士で納得合意して契約書を作成することは、内容の如何を問わず自由ですよということです。ただし、違法性がある契約書は無効となります。

「原状回復の特約」が明文化されていない項目は無効なのか?

これが実は知る人ぞ知る大問題なのです。
原状回復を明文化されている工事項目を全て指定業者の貼替内容をチェックしてください。

1.仮設工事
直接仮設工事、共通仮設工事、特別仮設工事

2.ビル運営上、必要と思われる付随する工事
警備員費、安全対策費、仮設事務所、仮設トイレ、中央管理室のデータ書き替え変更工事、諸官庁申請、申請図書作成、etc. いくらでも好きなように書けますね。

3.諸経費
諸経費とは何ぞや?賃貸借契約書特約に明記されていますか?

この原状回復工事をするための必要経費、ビル運営の経費雑費ですね。
これが明記されていません説明も賃借人は受けておりません。

筆者の意見は、賃借人に負担させる法務根拠はないと解釈できます。この法理の考え方は、裁判官も弁護士も、各自違いがあります。六法で説明した通り、フランス及び大陸ヨーロッパは法令に記されていないから負担義務なしという考え方です。

一方、英国・米・豪・カナダ・ニュージーランドのアングロサクソン系国家は、ソフトローで柔軟性が高いです。直接工事に付随する工事ですから、それは賃借人もある程度負担する必要があるのでは?
陪審員制度のため、多数決で社会的な普通の人々の意見が反映されやすいわけです。適応性が高い法制度ですね。

原状回復費用、高い・安い、工事費高騰問題はどうなるの?

これも法律文書で記しますと「社会通念上著しく不公正」になります。要は2割高いのか、不公正なのか、4割高いのか不公正なのか法律文書は理解不能です。

特に原状回復の指定業者が法律で認められている国は日本だけですので、当然他業者では施工ができませんので競争原理が働かず、競争見積も意味を持たなくなります。
これも法律文書は近隣芒種の指定業者と比べ著しく不公正の工事費用となるわけです。
近隣芒種の指定業者の見積りと比較するなんて、できるわけないですよね。ましてや賃貸借契約書は守秘義務で開示不可能です。

では、どうするの?

ご安心ください。守秘義務、非弁行為、競争原理のエビデンス、原状回復の法理までクリアしている協会があります。それが私たちRCAA協会です。ご相談、簡易査定は無料です。

大手ビル管理、デベロッパーの行動は?

彼らは賃貸借に対する知見は高いです。また、日々業務としているので経験豊富です。百戦錬磨の強者です。強者は紳士、腰が低い、言葉遣いが丁寧、コミュニケーションがうまく全てそろっています。

まず彼らは、賃貸借契約書、及び原状回復特約があいまいな箇所があると更新の際わかりやすく加筆しておきました、覚書に捺印をお願いします。

また、賃借人の経営判断で解約予告を提出しますと、原状回復見積書作成のため、原状回復確認書に基づき原状回復見積を作成しますので、原状回復確認書の説明、及び捺印をお願いしますと低姿勢でお願いにわざわざ来社します。
これに捺印したら、原状は確定され、回復内容もしばられ、事前説明承諾の証となります。捺印は厳禁です。

最後に

RCAA協会法務指導弁護士野間啓先生の民法第621条シンプルコメントを紹介します。

【原状回復 民法改正について】
原状回復義務については、これまで明文規定はありませんでしたが、今回の改正民法第621条により、通常損耗部分を除いた損傷部分についての原状回復義務が明文化されました(但し、賃借人に帰責事由がない原因の場合は負担が免除されます)。これは従前の判例法理を明文化したもので、実務的な変化はありません。
しかしながら、今回条文に明記されたことにより、賃借人が消費者(消費者契約)の場合は、通常損耗部分の負担特約について消費者契約法第10条により無効とされる可能性が強くなったと考えられます。

引用:一般社団法人RCAA協会HP Newsプラス【「原状回復費」敷金では不足。その原状回復費は、本当に適正ですか?】

これは、契約自由が原則で、明確に明文化してある工事でも無効にできる可能性があることをコメントしております。


最後に、ワークプレイスの見直しを計画されている経営者の皆様の一助となれば協会理事長として嬉しく思います。

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