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きみはポラリス/三浦しをん

 11の短編を集めた一冊。さまざまな視点から「愛」が描かれていた。一歩引いたところから見れば理解し得ない形をした愛もある。それでも本を開き、一歩踏み込めば、目の前にいろんな愛の形があって、その人たちの愛の形を当たり前のように、すぐそこにあるかのように感じられた。

 日々様々なニュースがあるけれど、私が考えるのは愛って2人の中にあるものだから、誰かをめちゃくちゃ傷つけない限り、外野がどれだけ否定しても、おかしいと笑っても、ふざけてると怒っても、2人が納得すれば誰がなんと言おうとそれは愛でしかないということ。2人の愛のかたちを赤の他人に納得させる必要はないはずだから。

 表題にある「ポラリス」というのはこぐま座のひとつで、最も明るい星。ほとんど動かないことから、道しるべや目印として利用される星、とのこと。自分を導いてくれる人(もの)、自分の行くべき先にいる人(もの)、それは愛すべき対象だということ?なーんてぼやーっと考えてみたけど、そんなことはどうでも良いくらいに「きみはポラリス」という言葉の響きは綺麗だなぁ。

どうして恋に落ちたとき、人はそれを恋だと分かるのだろう。三角関係、同性愛、片想い、禁断の愛……言葉でいくら定義しても、この地球上にどれひとつとして同じ関係性はない。けれど、人は生まれながらにして、恋を恋だと知っている──。誰かをとても大切に思うとき放たれる、ただひとつの特別な光。カタチに囚われずその光を見出し、感情の宇宙を限りなく広げる、最強の恋愛小説集。

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