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映画「女神の見えざる手」 仕事に人生を懸けれるか

あらすじ

大手ロビー会社に務める敏腕ロビースト、エリザベス・スローンは銃擁護派団体から、銃規制緩和のため女性の支持者を増やしたいという依頼を受ける。アメリカで多発する銃犯罪を懸念するエリザベスは、信念に反する仕事はできないと断り、銃規制派の小さな会社に移籍する。銃規制法案について両陣営の熾烈な心理戦が繰り広げられる。腹心の部下に裏切られ、セックススキャンダルまで露呈してしまう。絶体絶命のエリザベスだが...


内容と感想

まず、ロビーって何???
と、序盤から馴染みのない単語や専門用語満載で、最初の方はあまり話が入ってこなかった。
けれど、見てるうちに、エリザベスの勝ちに対する信念と、先の先の先まで読んだ巧妙な戦略に呑まれ、ラストまで続く緊張感で、あっという間に見終わっていた。

ロビー活動とは、特定の主張を有する個人または団体が政府の政策に影響を及ぼすことを目的として行う私的な政治活動である。
簡単にいうと、クライアント(企業や団体)の不利益になる法案や条例ができるのを裏で妨げたり、利益になる法案や条例を通すよう動いたりする。具体的には、議会議員に接触し根回ししたり、マスコミを操り世論を動かす、いわば影の政治家

冒頭、エリザベスのセリフ。

ロビー活動とは予言すること。
敵の動きを予測し、対策を考えること。
勝者は敵の一歩先を読んで計画し、
敵が切り札を使った後、自分の札を出す。
敵の不意をつくこと。
自分が不意をつかれてはいけない。


調べてみると、日本でもロビー活動は行われているらしいが、政治家との癒着や買収というイメージが強く、有権者からは快く見られないことから、表立って行われていない。そのため他国と比べてどの程度影響力があるか定かでないらしい。

映画では、ロビーストがメディアに出たりして、大々的にキャンペーンを行っていたが、実際にどれくらいの人がロビー活動を認知しているのか気になったので、アメリカ人の友人に聞いてみた。

アメリカでは、政治活動においてロビーストは必須であるということは常識で、ロビー活動の認知度は高い。ロビーストは、全ての政治的活動に関わっている。なかでも、力を持っているのが、銃のロビーだ。
もちろん、大統領選挙にも深く関わっており、大統領候補は、広告、ホテル、交通費などの選挙費用を、ロビーストから集めている。
ロビー活動は、政治活動において、望みを叶えるために重要である。
選挙に影響を与えるため、人々や企業、時には外国企業から違法に資金を得ている。


映画のなかでも、ロビーストたちは勝つために、違法な手段や同僚への裏切り行為など、両陣営とも手段を選ばなかった。
自分の仕事次第で、ダイレクトに世の中が良くも悪くもなるので、プレッシャーも半端ない。正直、あんな環境で働いていたら日々精神が削られて、失うものも大きいだろう。

しかし、エリザベスは自分の信念に基づいて、文字通り、人生を懸けてロビーストとして働いている。
時に非道だが、常に気丈で、率直で、発する言葉ひとつひとつに信念というか気概が感じられる。キャリアのためプライベートを捨て、一切媚びない。
なぜそこまでロビー活動に捧げられるのか、そこに至るまでどういう人生を歩んできたのか、劇中ではあまり触れていなかったが、仕事に誇りと自信をもっていて、自分が世の中を変えていくんだという気概がひしひしと伝わってきた。

「私はあなたを買い、キャリアのため捨てた人生を想像する。」
「後悔してる?」
「少しも。」

劇中のエリザベスの発言ひとつひとつがなんというか、哲学的で、力強い。
私たちが”なんとなく”思っていることややっていること、当然であったのものはそもそも正しいのか?
はっとさせられる瞬間がいくつかあった。


ちなみに、エリザベスを演じた主演のジェシカ・チャステインは、女性の権利を守る様々な社会的活動をしているそうだ。信念を確率している芯の強さが、エリザベスとリンクしていて、かなり説得力があった。


概要

『女神の見えざる手』(Miss Sloane)
2016年に公開されたアメリカの社会派サスペンス。監督はジョン・マッデン、主演はジェシカ・チャステインが務めた。


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