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RAW現像ソフトをかいつまむ③SILKYPIX DEVELOPER STUDIO 11 Pro

画質革命
新たな画像処理技術で今までにない解像感を。

このキャッチコピーの背景は、雪山の(多分)犬。
これまで研いできた爪の鋭さ、自信あり。
そんな自負を感じるSILKYPIX DEVELOPER STUDIO 11。事実、この犬の写真の解像感は素晴らしいし、画の美しさを感じられ、引き込まれる。こんな写真を撮ってみたいと思わせる、このソフトにはプロフェッショナル版(¥22,000)とスタンダード版(¥13,200)がある。

Webページに記載してある黄土色で強調されたフレーズは下記の通り。機能性を前面に押し出し、やや情報過多な雰囲気は良くも悪くも日本製であることを強く認識させる。

  • 新次元デモザイク処理技術

  • 新たな合成機能

  • 次世代画像情報の利用

  • 細やかな色域で色変換

  • 不要物の除去

  • 新たな調整機能

  • 待望の機能を追加

  • 人気の機能をご紹介!

  • 機能比較一覧

  • 対応カメラ一覧

  • 動作環境

海外製ツールであれば、少なくとも「人気の機能をご紹介!」以下四項目の情報はサブページに置き、トップページの情報をもっと整理していると思う。これだけ列挙された機能を使いこなせるか自信が持てない。
ということで、無償30日間のトライアルを開始する。


インストール

「30日間無料体験する」ボタンを押すとメールアドレスとメインのカメラを入力することでインストーラをダウンロードできる。

インストール自体はスムーズに進み、初回起動時に「試用開始」を押下すると、30日間のトライアルを開始できる。
その後、レンズプロファイルの作成有無を尋ねてくるが、基本的に手動でレンズ補正をしたい人は少数派だと思うので、これはわざわざ聞かなくても良くないかな、と思った。

LUMIX DC-S5の画像でトライアル

使用する画像はこちら。

これまでも使用してきたサンプル画像だ。

取り込み、何もせずに出力

まずは、RAWファイルを取り込んですぐに書き出し。

青色の色味が若干異なってしまっているが、そこまで大きく異なっているわけではない。そんなに悪くない感触だ。(2023/10/31追記)撮って出しと「そんなに大きく変わらない」というのは、恐らくRAWデータを読み込み後、何らかの処理がなされたデータを見せているということになる。

お試し調整

早速調整を、と思い各ツールを開こうと思ったが、非常に難易度が高い印象を受けた。まずはそもそもUIがこれまで試したCapture One、Lightroomと全く異なる。これまでに試した2つのツールは、かなり直感的な操作をすることができた。しかしながら、SILKYPIXについては、まず機能配置の把握に苦労する。更に、パラメータを弄ろうとしても、なかなか癖があるように感じる。私がやりたいRAW現像の方向性とSILKYPIXの思想がマッチしていないように感じた。

上記のとおり、難易度を感じながらの調整になったためか、それなりに頑張ってみたもののどうしても明確な違いを演出することが難しかった。

Leica M Typ 240の画像でトライアル

使用する画像はこちら。

こちらも、これまでも使用してきたサンプル画像だ。

取り込み、何もせずに出力

例によって、RAWファイルを取り込んですぐにExport。

LUMIX DC-S5のときと比べ、撮って出しとそのままExportでは明確に差が出た。これまでに試してきた2つのツールでもそうだったが、Leicaの絵作りを再現するのは難しいのか、それともDNGファイルのデータ構造上の問題なのかわからないが、Leicaの撮って出しの雰囲気を出せるツールにはまだ出会っていない。(2023/10/31追記)RAW現像のそもそもの出発点から考えると、取り込んだRAWデータをそのままExportすると撮って出しと差が出るのは当然である。

お試し調整

先ほどと同じく、フィルム風演出、Teal Orange、Black Orangeをトライ。

こちらもLUMIX DC-S5での例と同様に、いやむしろそれ以上に味付けの違いを出すことが出来なかった。

所感

既述の通り、私がやりたいRAW現像の方向性とSILKYPIXの思想がマッチしていないように感じる。SILKYPIXの場合は、現場で作り込んだ作品に対して微調整を加える、言い換えれば「分かりやすい演出」や「デジタルカメラで撮れる世界から大きく雰囲気を変える演出」をするツールではない。
SYLKYPIXを作った設計者が悪いわけでも、演出を加えたい撮影者が悪いわけでもなく、考え方が違うだけなのだと思う。

そんなSYLKYPIXにあって(?)素晴らしいと感じた機能を紹介する。
SILKYPIXには「ファインカラーコントローラ」というRGB+各中間色の六色の色相、彩度、輝度を調整するツールがある。このような機能は他社ツールにも備わっているが、他社ツールはそれぞれスライダーで調整するだけだが、SILKYPIXの場合はこれが色相環のようになっており、色相のずれ(白いポイントが円周方向に移動する)や彩度(白いポイントが遠心方向に移動する)、そして輝度(白いポイントの大きさが変わる)という表現により一目で傾向を把握できる。これが非常に面白く、そして直感的で操作しやすい。発明といっても過言ではない表現方法だと思う。

その一方で、Capture OneやLightroomでは備わっているハイライトやシャドウの色被り演出機能(そうなんだっけ?)が無い(もしくは見当たらなかった)し、白レベル補正と黒レベル補正は強める方向にしか働かない(白はより白く、黒はより黒くなる方向しか調整できない)。
白・黒レベル補正については、現像での調整幅が限られることから、SILKYPIXを使うのであればカメラマンにその技量を求めることになる。

評価

SILKYPIXも採用を見送ることにした。
カメラ撮影についてもRAW現像についても玄人向けのツールである。
今回現像ツールを一気に比較する中で、インストラクションを参照せずに現像体験をしてみる、というやり方をしていることもあり、「使い慣れなければならないツール」に対しては残念ながら辛口評価になってしまう。

使いやすさ★★☆☆☆

所感項で述べた通り、ファインカラーコントローラ機能はかなり直感的で使いやすいものの、ツールの配置が独特で、なかなか慣れることができない。UIについては、一見さんお断りの如く断崖絶壁として立ちはだかる。

仕上がり ★★★☆☆

記述の通り、写した景色を微調整するような使い方であれば、非常にクオリティの高い作品を作れると思う。しかしながら、「演出」を加えたい場合や白・黒レベル補正を積極的に使いたい画像を撮った場合には、SILKYPIXで出来ることは限られてしまう。

操作性  ★★☆☆☆

パラメータを調整すると、一秒ほどラグが発生したのち調整内容が反映される。画質を優先するためなのかもしれないが、調整工程での勢いをそがれてしまう。

動作安定性★★★★★

ソフトウェアの動作自体は、全く問題は無かった。

コスパ  ★★☆☆☆

何度も申し上げているように、私がやりたいこととSILKYPIXで出来ることの「方向性」に乖離があった。もし写真の微修正を行うだけであれば、このツールを選ぶことも考慮に入る。例えば、まず他のツールで大雑把に調整を行いDNGファイル等に出力後、SILKYPIXで微細な修正を行うなどは考えられる流れなのかな、と思う。しかし、私のやりたいこととしては、一つのツールでなるべく全てのことを済ませることである(今回のRAW現像ツールお試しのモチベーションは下記記事をご覧ください)。

また、私の写真撮影の技量が伴っていないため、SILKYPIXの調整機能を最大限に活かせるようなスイートスポットに収まる写真を撮ることが難しく、「私のレベルでは」コスパが上がってこない。

RAW現像例

今回はかなり難易度が高く、心が折れてしまったので2枚だけしか現像しなかった。

月が見えているんです。
何となく悪くはないかな。

さて、気を取り直して、次はDxO PhotoLab 7だ。
このツールではどんな体験を出来るのだろうか。

余談

Capture Oneの新しいバージョンがリリースされたようです。

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