終わりの感覚(ジュリアン・バーンズ)
noteを書き始めようとすると「読んだ本の感想をnoteで書いてみませんか?」と誘ってくるんですよね。この歳になって読書感想文!?子供の頃あんなに嫌だったものを敢えて書くのか?
当時は何をどう書くのが正解なのかがわからないのが特に嫌だったんですが、この歳になれば書いたものに対して文句つける人もいないので、好きなように書けばいいというのは安心ですよね。なんなら中身を理解してなくたって、その文章を読んで感じたことさえ書けばいいのだと思えば気楽です。
というわけで第一回。
https://www.shinchosha.co.jp/book/590099/
ジュリアン・バーンズはイングランド・イングランドを英語で読んだはずなのですがほとんど覚えていない・・・。あとはNew YorkerのFictionで読んだ作品のうち、いいなと思ったら彼だった気がする(中身は忘れた)。
というわけで、次のようなあらすじを頼りに読み始めることにしました。
穏やかな引退生活を送る男のもとに、見知らぬ弁護士から手紙が届く。日記と500ポンドをあなたに遺した女性がいると。記憶をたどるうち、その人が学生時代の恋人ベロニカの母親だったことを思い出す。託されたのは、高校時代の親友でケンブリッジ在学中に自殺したエイドリアンの日記。別れたあとベロニカは、彼の恋人となっていた。だがなぜ、その日記が母親のところに?―ウィットあふれる優美な文章。衝撃的エンディング。記憶と時間をめぐるサスペンスフルな中篇小説。2011年度ブッカー賞受賞作。
ミステリー調なところもあるということで、なんとか読み切ることができるんじゃないかと期待。
主人公の高校時代から話が始まります。そういう設定だからだとしても、めちゃインテリな生徒たちで驚く。歴史の先生に「歴史とは、不完全な記憶が文書の不備と出会うところに生まれる確信である」とか言う生徒、想像もつかないんだけど。さらにそれを超越する天才肌の転校生、その後大学で付き合う女の子とその家族、主人公以外の人物はミステリアスというとあれなんだけど、正直適当にしか書いてない気がする。
そして主人公がまあ格好悪い。
キレのいいその転校生や、元彼女に対して微妙な劣等感がありつつもなんとかマウントを取ろうという痛い態度だったり、負け犬根性丸出しの手紙を送りつけたり、歳をとってからもそういった情けないところは変わらない。そして辛いことに、そういったダメさが僕自身にもやたら刺さってくる気がするんですよね。
劣等感
この人にはかなわないな、って感じる経験は僕もなんどもあります。そんな時にひたすら卑下しまくったり、もしくは自分の方がマシだと思えるような点を探してなんとかプライドを保とうとしたり。客観的に見るととても痛いことをしているようなのですが、当人は自分を守るために必死なのだから仕方ない。
格好いい人の場合はどうするんだろう。他人は他人と割り切ることができればいいのだけれど。
プライド
この主人公の場合はできる彼女に振られた後、自分のプライドを保てるような相手を見つけて結婚することができたようです。先の彼女とも付き合うことができたように、この主人公にも多分光るものがあったに違いない。でも妙な劣等感でダメなところを取り繕うことの方につい意識が集中してしまっていたのかな。その結果、自分の方が上等だと思っていた奥さんにも呆れられ別れられてしまってる。
歳をとって振り返る際、いろいろあったけど人生は割と上手くやってきたと自分を納得させるように思い込んでいる風があります。そう、まさに「歴史とは、不完全な記憶が文書の不備と出会うところに生まれる確信である」になっちゃってるという強烈な皮肉。
でも実際の僕がプライドを保ちながら凡庸な人生を送るとしたら、このような割り切りも仕方ないじゃない、と感じます。
わかったつもり
そして終盤のあれこれに突き進んでいくのですが、自分に言い聞かせた「俺は結構上手くやってきたし、物事も見えている」という幻想がことごとく壊れていきます。そりゃそうだ、だって本当はわかってないんだから。「あなたは、昔も今も、わかっていない」ベロニカに言われてます・・・。わかったつもりで周りをかき回す主人公、見ているこっちはもうやめてあげてとお願いしたくなります。
でもどうしようもない
例えばこの本を主人公が読んでから自分の人生をやり直したとして、もっとましなことになるかな?と思うと、そんなことはなさそう。僕もこの本を読んで身をつまされるような思いに駆られますが、今日から生まれ変わることができるかというとそうは多分行かない。
この主人公が「終わりの感覚 The sense of an ending」として何を感じたのかはわかりませんが、そんなダメな自分を受け入れるしかないのかなと僕は感じます。劣等感やプライド、厄介なものを抱えていることを自覚しながら振り回されないように気をつけたい。
まとめ
こんな感じであまり「読んでみて!面白いから」というような紹介にはなりませんでしたが、刺さる人には刺さるのかなと思います。著者の意図を理解している自信がないのですが、僕としてはこういったことを考えるきっかけになったのでよかったなと思ってます。
ちなみに一番好きなシーンはベロニカのやんちゃすぎる運転です。←
本って人によって好みが違いすぎて、感想について語り合うことができないのですが、もしこんな文章で気になった人いて読んでみたってことあれば、ぜひ感想をお聞かせください。
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