食器はiittalaに決めていた【メロンソーダの泡と日常】
彼と一緒に住むことになったので、ひとつだったものをふたつにする準備を整えている。そのうちで一番時間がかかっているのは食器だ。
ひとり暮らしの私のキッチンに並ぶ食器は、ほとんど全てがiittalaで揃えられている。特にiittalaに統一する理由はないのだけれど、ひとり暮らしを始める際に知り合いから頂いた器がiittalaだったのをきっかけに「何となく揃っていると心地良いかな」くらいの気持ちで少しずつ集めてきた。当初は何となく選んでいた器たちも、今ではすべてお気に入りだ。
ある日、彼とちょっとした喧嘩をした。
きっかけは、彼の何気ない一言。
「今きらりが持っている食器は1人用だからさ、2人用に買い直さないといけないなと思って。」
買い直すということは、今の食器は処分するということ?お気に入りだし、思い出が詰まっているのに…?
決して安くはなかった器の金額を思うと、処分するという決断はなかなか難しい。
思い入れがあるから使えるものは使いたいなぁ、と思っていたけれど、食器に詳しくない彼にとっては5000円のお皿1枚よりも2500円のお皿2枚の方が合理的に思えるだろう。そう思ったら、口を噤むしかなかった。
限られた収入の中で選んで買った食器たちを捨てることは、大切にしてきたペットとお別れするような気持ちだ。
手放すにしても、価値がないものとしてお別れするのは嫌だ。だって、私の生活は3年間、この食器たちとともにあったのだから。
2晩ほど考えて私は彼に「食器たちは売ろうと思う」と伝えた。どうせなら誰かに使ってもらえる道を選びたかった。どうか、彼がこの選択を受け入れてくれますように…。
「iittalaで揃えようか」
え?と、すっとんきょうな声が出た。いいの?高いんだよ?
「洗い物をしているときに丈夫なのは分かったし、調べてみたらいろんなデザインのものがあったし。安いのを買ってすぐに割るよりは、大事に好きなものを使った方がいいかなって」
滅多に買わないからちゃんと吟味しなよ、と彼が笑う。
食器に詳しくない、こだわりのない彼だけれど、私の思いを汲み取って一生懸命考えてくれたのだ。
今、私たちは2人でお店を回ったり公式通販サイトを眺めたりして食器を選んでいる。価値観の違う人間同士が、主張してぶつけ合って、悩んで考えて、譲り合って、少しずつ同じ方向を向いていく。人と生きるってこういうことなんだなぁ。
これから先もきっと、ささやかなことで衝突することはあるかもしれない。でも、そのたびにきちんと向き合って、最善の方法を決めていけたらいいなと思う。
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