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雨ン中の、らくだ②

肝心の落語についてもこの本は面白い切り口で紹介してくれます。

落語とはとても面白いもので現代でいうところのネタバレ状態から話を聞くものです。
そもそも古典落語というのは今も演じられている演目で200席くらいしかなくて、この200席は江戸時代からずっと語られているものです。
これだけしかないので落語ファンであれば当然、ほとんどの噺(はなし)の内容は既に知っています。
つまり、落語とは知っている同じ話を何回も聞くという変わった芸なんです。

ただ、これが落語の面白さを際立たせているとも言えて、江戸時代から変わっていないが故に、昭和の名人と言われる落語家の70年前の音声でもほとんど違和感なく聞くことが出来ます。
同じ噺でも落語家の個性によって受ける印象に違いがあり、その違いやアレンジを楽しむんですね。

僕は語れるレベルには当然ないのですが、落語は歌によく似ているのではないかと思います。
同じ歌でも歌う人が変われば印象が違いますし、演奏をジャズっぽくしたりオーケストラっぽくしたりすればまた印象は変わります。
落語の名人というのは落語が単に上手いということではなくて、表現力に優れ客席の雰囲気を一気に自分色に染めてくれるような人の事を言うんだと思います。超有名歌手が少し歌えば皆が聞き入ってしまうのと同じですね。

そういう意味では立川談志師匠というのはまさに落語の名人です。
唯一無二の世界観を持っていて、豊かな表現力を駆使して落語を演じるとどの噺も全て談志節になる。お客さんは落語そのものというより談志節を聞きに来るんだそうです。

本書は談志師匠との思い出にちなんで、志らくさんならではの目線で談志落語を論じてくれています。
「あの落語に出てくる誰々はこの時の師匠の様で・・・」といった具合でエピソードを交えて語ってくれるので、落語の登場人物の心情描写が非常にわかりやすいですし、談志落語の特徴や談志落語から見る落語の本質に迫る見解は非常に納得感があります。

落語は長い期間かけて醸成されてきた伝統芸能なので、時代を超えて人々に愛され続けているのには理由があります。
落語は現代の様に映像がなかった時代の演芸です。
1人の人間が演じているのを観衆が自分なりに想像力を巡らせながら見る。それ故にどの噺でも必ずどこかに共感出来るんです。

ビジネスの世界でも教養として落語を楽しんでいる方も多いので、落語とビジネスの共通点についてもまた書きたいと思います。

ではまた!



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