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海外でちらし寿司を作って桃の節句を祝う。
海外でも桃の節句を祝う。
海外に住んでいるとはいえ、生まれも育ちも日本の生粋の日本人。そもそも日本にいた頃から年中行事はしっかりとする家庭で育ったので、節句などの季節行事はやらないとどうにも心地が悪い。
そういうわけで海外で生活するようになっても、できる限りは日本の行事は行うようにしている。今日は三月三日の桃の節句。さすがに菱餅だとか雛あられ なんてものは簡単には手に入らないので、こちらで購入できる材料でちらし寿司を作ることにする。
さて、現在スウェーデンに住んでいるのであるが、私の住む街では日本の食材が比較的 手に入る。そもそもスウェーデン人が日本好きなこともあり、また日本人の在住者も多いこともあり、日本食はある程度広く受け入れられている。そのため、スーパーなどでもいくつかの種類の日本食材/調味料は常に置かれている。
というわけで、桃の節句をちらし寿司を作って祝っていこう。
スウェーデンでちらし寿司作り。
酢飯作り
さて、ちらし寿司を作るのに最も必要なものといえば 米。しかも日本米(ジャポニカ米)である。さすがにインディカ米ではこれは代用できない。
残念ながら、私の住む街はスウェーデンの中でも田舎も田舎なので さすがに日本米が常備されているような店はない。これは需要と供給の観点からも仕方ないことなので、毎回ストックホルムから取り寄せをしている。
ストックホルムから取り寄せができる日本米には何種類かある。以前はスペイン産の秋田こまちを取り寄せていたのだけれど、今回は良い評判を聞くイタリア産のこしひかり"ゆめにしき"を新たに取り寄せてみることにしたのである。タイミングよくちょうど今日届いた(というか、近所の保管先のスーパーに取りに行った)ので、これを試してみよう。
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実はヨーロッパでもスペイン、イタリアでは日常的に米が食されていて(例えばスペインならパエーリャ、イタリアならリゾットなど)、米の生産量もスペイン、イタリアがヨーロッパの第一位と第二位なのだそう。
ちなみに、スペイン産の秋田こまちも、イタリア産のこしひかりもどちらもなかなか美味しく、悪くはない。私は米どころ出身ではないので、厳密なところはわからないが、日常使いに不満が無い程度には質は良いと思う。もちろん日本の米と比べると…
さて、スウェーデンでもライスクッカーが売られているが、私は一人暮らしな上に、毎日米を食べるわけでもないので米を炊くときは土鍋を使用している。
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土鍋で美味しく米を炊くにはあらかじめしっかりと米を水に浸けて吸わせておくことである。そして、炊き上がりの蒸らしも忘れてはならない。
さて、米が炊き上がれば酢飯を作る。残念ながらこちらでは日本で手に入るような米酢は見かけない。が、その代わりにSUSHI-VINAGERなるものが、どこのスーパーの棚を覗いても見つけることができるのである。
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"SUSHI"ブーム万々歳というやつだろうか。
一応、このSUSHI-VINAGERは米酢(日本産ではないが)と砂糖、塩から作られており、いわゆる酢飯用の合わせ酢と原料は同じである。
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個人的には単なる好奇心から購入したのだが、日本人の舌からすると酢の酸味がやや弱く、甘味が強い。使用する際は少なくとも塩を足すといい。塩を足すことでだいぶ仕上がりが良くなる。もし乾燥昆布を持っているなら、米を炊く際に昆布を入れて炊けばより良い。
米が炊き上がったら、塩を足したSushi-vinagerをまぶして酢飯を準備しておく。
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年始に帰国した際に地元の寿司屋産でもらった干支しゃもじがイキイキとして見える…ような・
具材 1 椎茸&かんぴょう
具材にはまずは定番の椎茸とかんぴょう。
実はスウェーデン人はキノコをよく食べる。そのためか、椎茸はこちらでも"Shiitake"として売られている。少々、香りが弱いのが玉に瑕だが…。
ただ ちらし寿司に使う椎茸の甘煮は、干し椎茸で作る方が良い。なので日本から持ってきている どんこ を使用する。干し椎茸は日本人在住者が日本から持ってくる食材の定番(のはず)なので、うちも例外でなく常備している。もちろんこちらの生椎茸を自分で干してみたこともあるが、どうにもうまく無いのである。
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続いてかんぴょう。もちろんこちらも日本からの持ち込みの食材。さすがにこちらでは手に入らない。
実際のところ、かんぴょうは別にちらし寿司に入れなくても良いのだが、せっかくあったので使うことに。
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かんぴょうは水で戻した後で塩揉みをして、椎茸と共に椎茸の戻し水を使って煮込む。
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味付けは砂糖と醤油と味醂…といいたいところだが味醂は手に入らない(スウェーデンではスーパーでは3.5%以上のアルコール商品を取り扱えないので味醂風調味料しか売られていない)ので料理酒で代用。
醤油は"KIKKOMAN"がスーパに常備されており、清酒は"GEKKEIKAN"がSystembolaget(スウェーデン国営の酒屋)で注文すれば手に入れることができる。
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かんぴょうは好みの固さになった辺りで先に取り出しておき、その後 椎茸は水気がなくなるまで炊き上げる。
材料 2 卵
ちらし寿司に絶対になくてはならないものは意外にも錦糸卵である。
他の具材はなんだかんだで変えも効くことが多いが、錦糸卵だけはなくてはどうにもならない。
フライパンに油を敷いて、薄焼き卵を焼く。仕上がりをきれいにするためには、ここで卵を焦がしてはならない。
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個人的な印象だが、スウェーデンの鶏卵は日本のものに比べて色がやや薄いように思う。日本の鶏卵の卵黄はややオレンジよりだが、スウェーデンの鶏卵の黄身はその名の通り黄色である。
焼き上がった薄焼き卵は十分に冷ましたのち、たたんだ上で細く切って錦糸に仕上げる。
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ちなみにスウェーデンの鶏卵はサルモネラフリーであるので生食も可能である。…もちろん個人の責任においてであるが。
スウェーデンの食品鮮度管理の意識は日本のそれとは比べるべくもないほどなことは忘れないようにしなくてはならない。
残念ながらスウェーデン人の多くは鶏卵を生で食べることには抵抗があるそうで、卵ご飯の話などをすると顔を顰められることも少なくはない。…刺身は徐々に受け入れられてきているのだがなぁ。
材料 3 海老とイクラ
海老はもちろんこちらでも手に入る、よく食べられる食材である。
特にソフトシェルシュリンプや小エビは人気で、前者は塩茹でされたものがスーパーで量り売りされているし、後者は殻付き、殻なしのどちらの形態でも冷凍されたものが300g入り以上の袋で売られており、さまざまなスウェーデン料理に使われる。ちなみにイクラも日本のものに比べると小粒なものだが売られている。
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海老はせっかくなので寿司開きにする。
尾の方から串をさし、背の身と殻の間に通して塩茹でにする。この作業によって加熱時に縮まって丸まることを防ぎ、まっすぐな状態で茹で上がる。
小エビもさっと塩茹でにしておく。
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海老はそのまま冷ましてから殻を剥き、竹串を抜く。腹側から切り込みを入れ…
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海老の寿司開き一丁あがり。
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材料 4 緑のお野菜と彩りのお麩
ちらし寿司は彩りも大切。ということで、緑色の野菜が何か欲しい。
残念ながら日本と違いスウェーデンでは葉物野菜の種類が少ない。特に冬の間は根菜ばかりなのだが、さやえんどうは年間を通してみられ、和食にも使える貴重な緑野菜である。
あとは、小ネギもどこでも手に入るので助かっている。しかし、こちらの野菜の扱いは雑で、ネギなどは無造作に数本がゴムで束ねられた上で裸のまま冷蔵庫に入れられている。そんな管理状態なので、当然 表面は水気がなくなりカサカサにペリペリに、中には一部が萎れて…枯れているようなものさえある。
ひどい場合は冷蔵障害を起こしているような野菜もあるくらい。正直、店側にもはたして商売する気があるのだろうかと不思議に思う次第である。
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さて、正直 ここまでの具材でも十分彩があるとは思うのだが、せっかくの節句、祝いの料理である。他にも何か使えるものはないかと、食糧庫を探したところ、先だっての帰国の際に購入した加賀麩を見つけた。
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京都に10年以上住んでいたこともあり、これまでは京都の老舗 半兵衛麩のお麩ばかりを使っていたのだが、今回 治部煮用のすだれ麩を探しているうちに、加賀麩が通販で購入できることを知り、初めて購入してみたのだった。ちなみに、こちらは加賀麩の不室屋産さんのお麩。
手毬麩は祝い料理にはよく使われるし、この小花麩というのはピンクの花をかたどった麩ということで、桃の節句にはちょうど良い(桃の花ではないが)。せっかくなので使ってこう。
具材の準備完了
さて、これで具材も準備完了。
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酢飯は既に完成しているので、あとは盛り付けていくだけ。
結局今回用意した具材は…
椎茸の甘煮
かんぴょう
錦糸卵
小海老
海老(開き)
絹さや
小ネギ
小花麩
おてまり麩
盛り付け&完成
残念ながら和食器で大きなものは我が家にはないので、こちらのホームセンターで購入した北欧風のボウルを使うことにする。
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錦糸卵を酢飯の上にちらし…
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後の具材は、順不同。とりあえず最終的な見栄えができる限りよくなるように頑張るだけ。
というわけで、出来上がりはこちら。まあ、悪くないのではなかろうか。
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せっかくなのでお吸い物も添えて…。残念ながらこちらでは蛤は手に入らず、二枚貝というとムール貝だけなので…。まあ、うちに女の子はいないので、これくらいは良いだろう。
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ということで、スウェーデンにて桃の節句を無事に祝うことができました、とさ。
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