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衿沢世衣子『光の箱』

こんばんわ、マンチー餃子太郎です。あまり文章としてがんばらないでおすすめ漫画の感想メモを書いてゆきます。今回は『ベランダは難攻不落のラ・フランス』や『制服ぬすまれた』でお馴染み、衿沢世衣子先生の『光の箱』という漫画。

​あらすじ

生と死の狭間に立つコンビニエンスストア。
その明かりに引き寄せられる人々が最後に買い求めるものは何なのか。
そして、そこで働く青年二人の秘密とは――

トーチ系の漫画とかが好きな人にはドンピシャです。浅野いにお作品や凪のお暇、変な話ちいかわが漫画として好きな人もいける口ではないでしょうか。

暗闇に光るコンビニの記憶

私は深夜の散歩が大好きで、でも時折、見知らなすぎる住宅街や昼間よりくらい道路では心細くなる。そんな時、とくに用事がなくても入ってしまうコンビニ。陳列を見て、見慣れたあの店舗と微妙に違うなとかどうでもいいこと確認して、とりあえずコーヒーとチョコとか買って出ていく。そこがどんなに見知らぬ土地でも、そこに明かりがあって人がいることで、この深夜の時間の共有者がいることに少し安心する。

「光の箱」は死と生のはざまにあるコンビニに引き寄せられた人々がただ何かを買って出て行ったり、何かを買って出ていくだけでは終わらなかったりするストーリーのオムニバス。そしてそのまま死に至る人もいれば、とくになんてこともなく生還する人もいたりする。

死に際というほとんどの人が経験したことのない時間・空間で、私たちが一番安堵できるのは、案外家族とかの映像よりも日常生活にあるコンビニの明かりなんだろうかなと思った。私の死に際があったならコンビニでちょっと値段の高いコーヒーとチョコを買う寄り道をしてから終わりたいとか思う。

衿沢さんワールド入門編

衿沢さんの絵は線のメリハリが利いていて読みやすく、登場人物の表情の機微もわかりやすいのが良い。

他作品もいくつか読んでいるが、単純に短巻で1つの題材という読みやすさもある。意外と淡々としているコマ割り、独特のテンポ感や小ネタ(手に「ま」が彫られているとか)が少しシュールで世界観に引き込まれる。まず三途の川ではなくコンビニってところから独創性がすごいよね。衿沢さんの漫画の中でも入門編といってもいいと思う。読了後の余韻もよい。

買い悩んでいる人はぜひ

ぜひおすすめです。コンビニで買った128円のお菓子でも食べながら、深めのソファでゆるりと読み返したいと思う。

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