盛り塩・偽

近所のご老人からうわさ話を聞いた。
彼の屋敷には大切に祀られている人形があるという。
その昔、これをぞんざいに扱ったものに、
須らく良くないことが起こったそうだ。
この村では知らぬものが無い話であったが、
それも今は昔。
こんな田舎にも家が建つようになり、
いつしか誰も口にせぬ話となった。
当代の主人は若い時分を都会で過ごした。
人形の話を迷信であると頑なに信じないそうだ。
大きな門の隅にある盛り塩は崩れかけていた。