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カーテンの隙間・偽

今日も彼は窓辺でだるそうに外を眺め、
ガラス窓に頭を預けている。
どことなくにやけながらボソボソと何か独り言を呟いている。
気にしない風を装いながら、少し近づき腰掛ける。
聞き耳を立て、
意識を彼に向けると彼は歌っているようだ。
懐かしいような旋律。
風で揺れたカーテンと窓の僅かな隙間に、
小さく畳まれたかのように痩せこけた女が見えた。
首を傾け、彼から何かを吸っていた。
それと目が合わない様に、
私はその場を離れた。

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