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〈小説〉スカートとズボンの話 #2

 そうだ、パパの雑誌に載っているかもしれない。
 パパの鞄には、いつもおじさん向けの週刊誌が入っている。それなら、もっとわかりやすく書いているかもしれない。わたしは忍び足で玄関に行って、パパの鞄からそっと週刊誌を抜き取って部屋に持ち込む。開くと早速、記事を見つけた。

平成の大悪法!「女性下衣選択法」ってナンだ?
 
「女性下衣選択法」が可決された。簡単にいうと「オンナは一生、スカートかズボンかどちらかしかはくべからず」という珍法律だ。
 読者諸兄の、奥方や娘さんはどうだろうか。生涯スカートだけ?ズボンだけ?どちらかしか選べないなら、スカートを選んでほしいと思うのは、男のサガ。「ワタシは、ズボンを選ぶのよ!」と高らかに宣言され、右往左往する貴方、ご愁傷様です。
 法律は、今秋に施行の予定。街でスカートの女性が増えるカナ?なんてご期待の諸兄も多いのでは。何かと意図の不明なこの法律、もしかしたら、議員のオジサン達の願望の具現化だったりして!?

「週刊ポスタル」1992年Y月X日号

 次のページをめくると、知らない女優が素っ裸でポーズを取っている。
 ふーん、これがヘアヌードなんだ。わたしは2秒だけじっと眺めて、雑誌を閉じた。おじさん週刊誌って、どうしてこう、すみからすみまで気持ち悪いんだろう。

 でも、とってもわかりやすかった。おかげでいろいろなことがわかった。

 お口直し、とつぶやきながら、わたしはまたさっきの雑誌の、リーバイスを穿いたモデルのページを広げた。
 写真の下には「ジーンズ ¥8,900(mer bleue)」と書いてある。商品の値段と、売っているお店の名前だ。

 巻末の「掲載商品お問い合わせ」のページを探すと「mer bleue マーブル」と書かれた横に、住所と電話番号がある。東京23区ではないその住所と電話番号で、わたしはピンときた。中央線に乗ってあの駅で降りれば、多分ここに行ける。


つづく

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