成年後見人をつけない相続のリスクを考えてみる【知識とリスクヘッジの対応が必須】
成年後見人をつけない相続は可能
認知症や知的障害、精神障害をお持ちの方などで判断能力が無い方が有効な契約行為を行うには成年後見制度の利用が必要と言われています。
相続手続きにおける「遺産分割協議」も契約行為の一種ですので、有効な遺産分割協議を行うには成年後見制度の活用が求められます。
しかし、成年後見制度は「利用しなければならない」という義務が課される制度ではありません。成年後見制度を利用するもしないも個人の自由に任されているのです。
成年後見人をつけない相続に必要なもの
それでは、成年後見人をつけない相続とはどのようなものでしょう。
結果的には「通常と同様の相続手続きを行う」ということになります。
手続き自体は一般的な相続手続きと何ら変わらないことになります。必要なのは「知識」と「リスクヘッジ」です。
成年後見人をつけない相続手続きのリスクとは
それでは、成年後見人をつけない相続のリスクとはどのようなものでしょう。
主なリスクとして考えられるのは「遺産分割協議の内容が無効となる可能性がある」ということです。
これは多くの専門家などが発信しているリスクの一つであり、確かに法的に考えるととても正しいことです。
しかし、実際問題遺産分割協議が無効となることはあり得るのでしょうか?
実際は、「遺産について争いがある場合は可能性は高い」が、「遺産について争いが無く、円満相続が見込める場合は可能性は低い」と考えます。
遺産分割協議が無効になった場合
しかし、遺産分割協議が無効となるとかなり厄介なことになります。
原則的には「遺産分割協議のやり直し」、即ち「成年後見人を選任して遺産分割協議を行う」こととなります。
分配した遺産を再度分け合うことになる。しかも成年後見人の選任手続きも事前に行わなければならない。これは非常に大変な手間となるでしょう。
遺産分割協議の無効に備えたリスクヘッジ
とはいえ、万が一遺産分割協議が無効となった場合でも、その備えをしておけばかなりの手間を軽減できると思います。
そのため、当事務所では「リスクに対応できる相続手続き」を勧めています。
まずは「成年後見人をつけない相続を行うことのリスク」を充分に理解していただき、「リスクに対応しやすい遺産分割協議方法」をご説明しています。これらをしっかりと理解することにより、万が一遺産分割協議が無効となっても比較的負担無く手続きを進めることができます。
成年後見人をつけずに相続を行ったほうがメリットは大きいことが多い
一概には言えませんが、多くのご家庭では成年後見人をつけずに相続手続きを行ったほうが得られる恩恵は大きいと言えるでしょう。
「費用がかからない」ことや「財産を凍結させなくて済む」というメリットがあるため、ご家庭によってはその恩恵は1,000万円だったり数億円だったりもします。
逆に相続でトラブルが起こりそうな家庭では、絶対に成年後見人をつけたほうが良いと思います。家族関係がこじれて何年も裁判をするようなことになったら元も子もありません。
ご家庭ごとに取れる手法は違うため、まずは自身の家族関係や財産等をよく考慮した上で計画を立てる必要があります。
考慮すべき項目
成年後見人をつけない相続を行うにあたり、考慮すべき項目をいくつか挙げてみます。
①考えている遺産分割の方法で障害等のある本人を保護することができるか
②遺産に不動産が多い場合、本人の法定相続分に相当する現金を確保することができるか
③本人のコミュニケーション能力、署名をすることができるか
④将来、どのタイミングで成年後見人をつけることになるのか(親亡き後等)
理由としては説明が複雑になるためここでは省きますが、私が重要視するポイントは以上のようなことです。
成年後見人をつけたくなければ遺言が有効
「成年後見人をつけたくなければとりあえず遺言を残しておく」これが最もコストがかからず、最も簡単な相続対策です。
「自筆証書遺言」であれば自分でも作成することができ、法務局の保管制度を利用するための費用も安価です。
しかしほとんどのご家庭では「まだ大丈夫」と思っているうちに相続が始まってしまい、路頭に迷うというケースが多いのです。
成年後見人をつけたくなければまずは「成年後見人をつけない相続を考える」
当たり前のことですが、成年後見人をつけたくなければ、まずは成年後見人をつけない相続を考えることです。
周囲から言われるままに成年後見制度の利用申込みを行ってしまえばもう後には戻れません。
成年後見人をつけない相続についての知識がある専門家はほとんどいませんので、参考資料などもほとんどありません。
当事務所のHPには成年後見人をつけない相続に関する情報を数多く掲載しておりますので、ご参考になれば幸いです。
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