認知症でも成年後見人をつけずに相続ができる場合を解説【遺産分割協議・遺言等】
相続人に認知症のある方がいても相続手続きを行える場合は多々あります!
「相続人の中に認知症がいたら成年後見人をつけないと相続手続きはできません。」
ほとんどの相続の専門家がこのような回答をしてしまいますが、これは間違った考え方です。
認知症でも成年後見人無しで相続手続きを行える場合は案外多いものです。
今回は、相続人が認知症でも成年後見人無しで相続手続きを行えるケースについて解説していきたいと思います。
長谷川式スケールにおいて「軽度の認知症」となる場合には成年後見人無しで遺産分割協議ができる場合がある
「長谷川式スケール」とは、現在最も多く用いられている認知症の診断に使われる検査方法です。
いくつかの記憶に関する質問を行い、その回答を点数化して認知症の程度を測ります。
(長谷川式検査の一例)
もちろん認知症には程度がありますので、軽い認知症なのか、重い認知症なのかを判断する基準にもなります。
(上記からより詳細な解説をご覧になれます)
長谷川式で行った検査が「軽度」にあたる認知症患者の中には、判断能力がある程度しっかりした人もたくさんいます。
物忘れはあるけれど、昔の記憶をしっかり覚えており、また話をしっかり理解することができる人などです。
こういった方の中には有効な遺産分割協議ができる人が多いと言うことができるでしょう。
有効な遺産分割協議ができ、遺産分割協議書に署名、押印ができる人であれば、相続に関しては成年後見人をつける必要はありません。
すでに遺言が作られている場合
すでに遺言が作られている場合も、成年後見人をつけずに相続手続きを行うことが可能です。(ただし、遺言の内容によっては成年後見人が必要な場合もあります。)
例えば、認知症の母と子一人が相続人であり、亡くなった父が「子に全財産を相続させる」という内容の遺言を残している場合、原則的には子一人でその財産を自分に移転させる手続きができます。
(上記からより詳細な解説がご覧になれます)
遺留分を渡さなくちゃいけないんじゃないの?
よく「遺留分」という言葉を聞くと思います。
専門家から「遺言で全財産をもらえるように書いてもらっても遺留分があるので必ずそれを渡さなくてはいけませんよ。」と言われた方もいると思います。
しかしそれは間違いです。
遺留分とは、自分の法定相続分の一部をもらえる権利のことです。上記の例であれば、母には法定相続分の2分の1を遺留分として受け取れる権利があります。
ただしその遺留分は「請求しなければもらえない」という決まりがあります。そのため、上記の例では全財産を受け取った子は、母の請求があって初めて遺留分を渡さなければならないという義務が発生します。
ということは「母が請求しなければ渡さなくて良い」ということになります。母がその点を理解し、遺留分を請求しないという考えであれば一年後に遺留分を請求する権利を失います。
「認知症=成年後見人」と安直に考えないこと
以上、認知症の相続人がいても成年後見人をつけずに相続手続きができる場合についてお伝えしました。
社会的に成年後見人という言葉が広がっていますが、それとともに認知症について専門的な知識の無い銀行や証券会社が誤った解釈をしてしまうことが多くなっています。
「認知症=成年後見人」では無く、「遺産分割協議を理解するに値する判断能力が無い=成年後見人(等)」という考え方が正確な理解の仕方です。
そのため、認知症に関する相続手続きは「福祉現場で知識と経験を養った専門家」に相談することが重要となります。
行政書士花村秋洋事務所では、福祉現場での経験が豊富な行政書士が対応させていただきますので、安心してご相談ください。
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