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37歳女オタク、バーキンを買う。②

続きです。

あまりにも自分に似合うバッグで購入を決意しかけたのもつかの間、値段に驚いた私。
友人の馴染みの店なら信用できるし、何よりそこで買ったという証明ができるので三百万出したとしても偽物を掴まされることはほぼないだろう。
とはいえ当オタク、転売ヤーには恨みしかないため、プレ値になっている品を買うのは気が引ける。

そもそもプレ値になっている理由は供給が少ないからだそう。
バーキンは正規店で購入実績をつくり、ようやく担当さんから紹介される物らしい。
それも、希望の色やサイズを選べないのだという。

正規店でいくつもいらないもの(すみません)を買っても出てくるバッグが希望の色かどうかは分からない……焦らしプレイか?
ドMの石油王向けの道楽……?
庶民にはつらすぎるし、あいにく私にそういう性癖はない。

あれこれと思い悩んでいるうちに、ショップのスタッフさんからくだんのバーキンが売れてしまったという連絡が入った。
私たちが店をあとにしてすぐに、別のご夫婦が来店して購入していったのだという。
ゆくべきところへ行ったのなら私とはご縁がなかったということなのだ。

これで忘れられたらよかったのに……
寝ても覚めても思い出すあのバッグ。
何せ似合っていたのだ。
オタクの思い込みの激しさはこういうところにも発揮される。

私は「エルメスのバッグ」が欲しいのだろうか。
それとも「私に似合うバッグ」が欲しいのだろうか。
もしあのバッグにHermèsのロゴがついていなくて、バーキンという名前がなかったとしても欲しいだろうか。

そう考えながら、同時に国内で販売されている中価格帯以下のバーキンと同型(つまりパクリ)のバッグのことを考えた。
私はあれをバーキンの形だと知っていて持てるだろうか。

無理!

(即答)

以前から私は、「ブランドのアイコンバッグを持った女」ではなく、「〇〇のブランドの服を着ていた女」と覚えられたいという話を身内にしていた。
誰が見てもそれとわかるアイコンバッグは目立ちやすく、ともすればその人の印象がバッグに集約されてしまう。
バッグが全アイテムの中で最も自分を象徴することを良しとする人にとってはそれでいいかもしれないが、私の場合はそうではない。
いかに自分のファッションに馴染み、個性の「一部」となってくれるかが重要なのだ。
私がバッグを持ったときの印象を友人に尋ねると、「似合っていたと思う。バッグに持たれていないし、全体を見てからやっと『あぁ、バーキンを持っていたのね』って気づくくらい馴染んでいた」とのことだった。
はー、買うか……

調べてみると、エルメス専門の二次流通ショップや、ハイブランド専門の卸業者等が開いているストアがあると分かった。
何気なくブラウザを斜めに見てスクロールしているうちに、とある業者の商品の説明文が目に留まった。
十年以内の刻印で、二百万円を切っている。
箱、レインカバー欠品だが状態は悪くはない。
おそらく年に数回使っていたらこうなるだろうなという革製品のコバの状態である。
最初に店頭で見た品よりも全体的な状態は良く、しかも年数も経っていないというのであれば敢えて古いものを選ぶ必要はない。
とりあえずお気に入りに登録して、一度ブラウザを閉じた。

それからもう一度、別のブラウザを立ち上げる。
私はバーキンについて書かれた記事を読み漁った。
大体が「いつかはバーキン」と書いてあるのだが、同時に「子供や孫が受け継ぐことのできるバッグ」とも書いてある。
子供や孫へ世代を渡って持たせられるような、修理環境も丈夫さもそなえたバッグであるらしい。
正直なところ、これを読んだ私の感想は

「一生使えるバッグを六十代で買って、十年しか使えないのは悲しいと思った」

これだ。
こんなにも長持ちするバッグを、何故我慢して我慢して、足腰が弱るころに買わなくてはいけないのか。
気力も筋肉もついて体力的にも問題なく、血管エコーも異常なし(重要)の今持たなくてどうするのか。
これから私は感性も感情も衰えてゆく。
新鮮な感動を味わえるうちに手にしたい。

そんな力強い思い込みで、私はついに購入ボタンを押した…………

届くまでの間にツイリーも買った。
だって可愛いじゃないですか。
これから一年服飾品買わない覚悟で買ってるんですよこっちは。
バッグは十年は買わないぞ。

バーキンが届いた翌日、疑い深い私は真贋を確かめるためにあるところへ(有料部分記載)バッグを持ち込んだ。
本物でなければ出ない結果が出た。
「いいバッグをお持ちですね」
とスタッフさんからの言葉に、「はい!」と返して笑顔で友人と合流。
友人にもいっぱい撫でてもらった。

いつかしわくちゃのおばあちゃんになったときに、楽しかったり辛かったりした記憶のいろんな場面に登場する名脇役みたいな存在になってほしい。
一緒に歳を取って行こうな。

でもお前(バッグ)はお店でリペアしてもらえば若返るんだよな……(唐突な仲間割れ)

推しの誕生日に出会ったバッグとの生活が待っていると思うと、37歳女オタクの前途は想像していたよりずっと楽しい。




※ここから先は手に入れたバーキンのスペック、どうやって選んだか、真贋の確認はどうしたのか等を記載してあります。
読む必要は特にありません。
思いのたけはすでに綴った。





うちの笑い猫バーキンの詳細はこんなだよ!<3<3

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