Time for old friend

快晴を背負った飛行機の小窓から見える風景は海と空の区別もなく不思議な感覚になる。
海を泳ぐ子供の雲、空に張り付いた大きな雲。
限りない地平線とその間を飛ぶ金属の塊。
地上に根を張って生きている僕ら人間は嘘をつかれている気すらする。

狭い機内の読書灯の照らす文字に疲れを感じ厚手の文庫本を閉じた。数秒間、表紙のタイトルを見つめて今までのストーリーを噛み砕く。
友達はどれくらいの期間会わなくなったら旧友へと変わるのだろうか。些細な疑問で飛行機が揺れ、少し不気味な音が響いて機内アナウンスが鳴る。「ただいま気流の悪いところを通過中です。揺れましても飛行には影響ございません。」
教室や様々なコミュニティで出会った友人達は歳を重ねるたびに増えていった。連絡をまめに取ってる人もいれば、記憶の中に埋もれた人、名前さえ聞けば顔を思い浮かべることのできる人。間違いなく当時は暖かな友人関係を築いていたはず。全ての答えを時の流れに一存するのは考え症の僕には難しく、また、忘れてしまった日々に失礼な気がした。

こんな行き先の決まった乗り物の中で、終点の無い考え事をしているうちに飛行機は着陸し、滑走路で模型のようになった。
重い荷物を抱え何よりもリアルな地上を歩く、一歩ずつ根を張るように。

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