見出し画像

鯛か鰆か

こんにちは、那須野です。
今日は月曜日なんですね、1日遅れの更新となりました。。

私は今、愛知へ向かう電車に乗っています。
普段は京都大阪へ出かける事が多い私にとっては、いつもとは違う方向、違う景色。
ゴールデンウィークだから旅行でしょうか、Googleマップではなく紙の地図を広げる人は、私の旅気分を盛り上げてくれます。
トレッキングポールをお持ちのご婦人は、どちらの山へ行かれるのでしょう。
しかし、この狭い島国の中を、多くの方があっちへこっちへと移動しているのですね。


お釈迦様はお弟子が60人に達したとき、人々の利益と幸福のため、世間への憐愍のために、遊行せよと勧められたそうです。
1人でも多くの人に教えを説くために、2人で行くな、1人で行け、と。
なんとも効率がよろしいですね。

教えを伝え歩くという意味では、近江商人が阿弥陀さまのお慈悲とお供に全国行脚されたことも、それに値するのではないでしょうか。
近江商人の精神を表現する言葉として、「三方よし」というものがあります。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」
という三方です。
売り手買い手だけでなく、社会もよくするという視点は、現代社会に蔓延る詐欺グループに、百万回聞かせてやりたいスローガンです。
(最近ちょっとありまして。。)


世間よしと謳う近江商人は、実際には各地に橋や学校を作ったり、仏教会館を建てられたりされたそうですね。

先日、とある会社の会長さん、社長さんと一緒に、食事をいただく機会がありました。

大変美味しくいただきました。
大変美味しくいただいたのですが、私の中では引っかかる点がひとつ。

(さっきこのお店の人、「このお刺身は鯛ですか?」
という質問に、「はい」って答えたよな…
これどう見ても鯛じゃないやん。鰆でしょ。
そのくらい知っとかないけんやろ〜)

という何ともしょうもない疑問です。
しかし私は魚屋の娘、これが鯛でないことはおそらく間違いないであろう。
だがこれを共有してくれる人が居ない。
モヤモヤとそのお魚をいただいたのです。

目の前では、
「鯛ですか、美味しいですね。さっきのアンコウも美味しかった、嬉しいですね」
と嬉しそうにお話しする会長さんと社長さんがおられます。
滋賀の人は魚の見分けがつかんのやろか?
そんな失礼な事までチラついたのがこの私です。


いい感じにお酒も回り、会を終え、ではまたとお別れをしてふと気付きました。

あのお二人が気付かん訳ないよなという事を。
いくら私が魚屋の娘で、あちらが海なし滋賀にお住まいだと言っても、仕事柄様々なお食事を呼ばれて、また旅行に行けば旅先の新鮮なお魚も幾度も呼ばれておいでる事でしょうから、私より色んな海を知ってるはずです。
分かっていながら、「あなたこれは鰆でしょう」と言うことも「ちょっと勉強不足ね」と陰口言うこともなく、「鯛と言うのだからこれは鯛、美味しいね、ありがたくいただきます」とニコニコ頬張られて居たのでしょう。

近江商人ってこういう事かーと、感心しきりの夜になりました。

そもそも鯛だの鰆だの、魚の方には知った事じゃない話です。
こちらが勝手に名前つけて、それを知ってて当然の様に、また間違えたら恥ずかしい様に思い込んで居るのです。
どちらが恥ずかしいか。

鰆を鯛だといただいただけで、特別な社会貢献をされた訳ではありません。
しかしそこに、仏教に生きる先輩の人生を見たように思うのです。
そしてその姿を思い出すと、またまたお念仏のお育ていただいたのはこの私でありました。

おかげさまです、なんまんだぶ。
ありがとうございます、なんまんだぶ。

さて、そろそろ愛知に入りました。
行脚とは程遠い、乗ったら目的地に着く電車での短い旅です。
お慈悲とご一緒の小旅行(荷物を取りに行くだけですが)、残りは車窓の景色を楽しみたいと思います。

皆さまの連休もお慈悲と共にありますよう。


称名

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?