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文句なしの目覚ましい成果が出ても広がらないのはなぜか?

全体最適の行政マネジメント研究会 行政課題解決セミナーレポート
2022年9月10日 オンライン開催

 ご存じの通り、TOCには、組織で長年未解決の問題でさえ、既成概念を覆し、目覚ましい成果を出せる様々な公式があります。
 世界中の様々な組織でテストされ、実証されてきた確固とした公式を使えば、目覚ましい成果が出るのは、当然とも言えますが、目覚ましい成果がでれば、組織中に広がるかというと、必ずしもそうではないことが、しばしば報告されています。

・一部の成果だけでとどまってしまう。
・あの人だからできると、結果的に広がらない。
・組織に危機感がなくて、関心を持ってくれない。

などなど、広がらない理由は、さまざま。
 目覚ましい成果を出した後に、どう素早く水平展開して成果を出すか、TOCには、そういった知見もあります。
 今回のワークショップでは、実際の事例を使って、その威力を体感してもらおうと思っています。

講師(岸良裕司)メッセージより

ワークショップレポート

 今回のワークショップでは、北九州市役所の三浦さんのチームで実践している、WIPボード※1×集中タイム※2の横展開について議論しました。

※1 WIPボード:Work in Process ボード。仕事の投入量を適切に制限することで、バットマルチタスクを防止したり、仕事の滞留が見える化されることで、助け合いが生まれる。
※2 集中タイム:自分にしかできない仕事(付加価値の高い仕事)に集中する時間。その時間中は、問い合わせ等の取り次ぎをしない。

 三浦さんのチームでは、WIPボード×集中タイムを導入したことで、仕事の質と量が向上したり、有休を取得できるようになったりと、効果を実感。同じ取組が他部署にも広がり、市役所全体が効率的な職場になればと望んでいましたが、実際のところは広がっていかず、横展開の仕方を悩んでいました。

 (岸良)目覚ましい成果を出したんだけど広まらなかった。起きたことをちゃんとまとめてみればどう?

 ワークショップが始まりました、岸良さんのファシリテートのもと、取組みが他部署に広がらない理由が明らかになっていきます。その理由は、他部署からすると、「成果が上がる理由がわからない」ということでした。

 (岸良)ショート&クリアに言葉をきれいに整える。CLR※3という技を使うのが肝中の肝。それをやらないと、みんな違うことを考える。

※3 CLR:Categories of Legitimate Reservation。ちゃんと論理的に考えるチェック項目で、①明瞭性(単語が文章の意味があいまい)、②存在(それが本当かどうか、事実なのか)、③因果関係(因果関係が本当に成り立っているか)、④十分性(他にも原因があるのでは)の4つがある。

 上手く行かない理由がわかったので、次はそれを解消する上手い方法を考えます。

 (岸良)相手のプラスばかり言うとどうなるか?人はプラスには共感しない。なぜならば、それを経験していないから。人は経験したことの無いことには共感しない。自分が経験しているマイナスのことに共感する。マイナスをリストアップして「こういうことありませんか?」って聞いてみたらどう?そして、WIPボードを入れることでこう(プラスに)なったと説明したらどう?

 このワークでは、WIPボード×集中タイム導入前のマイナスの状況と導入後のプラスの状況を整理し、WIPボード×集中タイムでどんなマイナスをプラスに変えたかを明確にしました。この内容を説明すれば、相手の共感を得つつ、導入のメリットを上手く説明することができます。加えて、自分たちの部署で成果が上がった理由を整理し伝えることで、他部署への横展開が期待できます。

今回の学び

 上手くいかない時は、直ぐに対策を考えるのではなく、状況を整理し、上手くいかなかった理由を明確にすることが問題解決のファーストステップ。その理由が明らかになることで、同じ失敗を繰り返さなくなり、成功確率が上がると理解できました。

講師・ファシリテーター

岸良裕司
 株式会社Goldratt Japan CEO。全体最適のマネジメントサイエンスであるTOC(Theory Of Constraint:制約理論) をあらゆる産業界、行政改革で実践。最先端のTOC知識体系の、「楽しく」、「わかりやすく」、「実践的」な講義と、参加者をワークに集中させるファシリテーションから、たくさんの学びが得られると大好評である。

全体最適の行政マネジメント研究会

 全体最適のマネジメント理論TOC(制約理論)を活用し、「お金を使わず 知恵を使って」を合言葉に、行政、民間の参加者が垣根を越えて、日本をよくするために知恵を出し合い、問題解決に取り組むNPO法人。そのセミナーは、身近な行政課題を題材に、TOCを実践的に学べる場となっている。


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