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怪談 超ショート あっという間に読める恐怖の物語。

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実体験、体験者からの伝聞、創作など、様々な怪奇と不思議な短編をまとめました。 #ショートショート #短編 #怪談 #不思議 #恐怖
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2023年12月の記事一覧

「柱の傷は」・・・あっという間に読める超ショート不思議な話。

「柱の傷は」 「母さんが亡くなったぞ」 父から電話があったのが金曜日の午前10時。 その日の仕事を同僚にお願いして、九州の実家に飛んだ。 空港からタクシーで40分。 里山と田んぼに囲まれた一軒家が俺の生まれた家だ。 農家の長男として生まれた父は、25歳で母と結婚し、 生涯先祖代々の農地を守って生きて来た。 「家を継ぐ必要なんかないぞ」 俺が18の時、父はそう言って大学に行かせてくれた。 その言葉に甘えて俺は東京の大学に行き、東京で就職した。 年に数回の帰省が、年に

「圏外」・・・超ショートホラーかな。歯ぎしり? 寝言? 夫が求めたのは。

「圏外」 夫とは、共通の友人である前田さんの紹介で知り合った。 「こいつ寝つきは良いんだけど、歯ぎしりが酷いんだ」 前田さんがからかい半分に紹介し、交際開始記念だと言って 耳栓をプレゼントしてくれた。 茶目っ気のある前田さんの冗談に、照れながら笑う夫の姿が印象的だった。 そして付き合いが始まった。 私も夫も両親をすでに亡くしていて、田舎の親族とも縁は薄い。 特に許可を取る相手も無いので、すぐに私は夫の家に転がり込んだ。 夫の希望だった。若い二人だけの気楽な同棲生活が

「伝説の橋」・・・超ショート怪談。河童伝説を訪ねる。

「伝説の橋」 大学の怪談研究会の旅行で、 河童伝説のある古い橋にやって来た。 かつて、この橋は何度掛けても水に流されてしまい、 酷い時には、年老いた祖母が幼い孫を残して橋ごと水に流され 亡くなったこともあるらしい。 その後、橋をかけ替えようとした時に、水の中から河童が現れて工事を手伝った。おかげで橋は無事に掛けられて、今も当時の姿で残されているのだという。 私たちは、橋の上でポーズを取ったり、遠目から橋を眺めて見たりして 沢山の写真を撮って、大学に帰って来た。 「あ

「壊す」・・・小学生の身に起こった怪奇な現象。友達を失くした少女は。

「壊す」 青山颯良(そら)ちゃんが、クラスで浮き始めたのは小学校の3年生くらいからだった。 「颯良ちゃんが触ると壊れるからもう来ないで」 同級生の誕生会で言われたのがきっかけだった。 確かに私の周りではよくモノが壊れる。 花瓶が割れ、人形の首が落ち、楽器から音が出なくなる。 それも自分のものは壊れず、友達が持っているものだけが壊れるから 周りの目は余計苦しくなる。 小学校に入ってからは、徐々に頻繁に起こるようになっていった。 まさかそんな事が・・・と信じなかっ

「サービスエリア」・・・超ショート怪談。話したのは誰。

「サービスエリア」 これはAさんが中学3年の時の、修学旅行のお話です。 私たちの修学旅行は、鉄道で東北の方に行って、 期間中の移動はバスを使う旅でした。 二日目の旅館に向かう途中、高速のサービスエリアで 休憩を取ることになりました。 「出発は30分後だ。買い物やお話に夢中になって遅れるなよ」 「は~い」 先生の注意なんかどこ吹く風、みんな自由気ままにお土産を買ったり、 休憩スペースで夢中になって話をしています。 私も、友達のB子、C美と一緒に 旅館で食べた食事や

「八重垣神社の鏡池のご縁占い」・・・頼らず、信じる事。

八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくるその八重垣 出雲路の八重垣神社は、須佐之男命と稲田姫が、 日本で始めて結婚式を行ったと伝えられている。 それにあやかり、隣接する鏡池には、 運試しをする女性が多く訪れる。 恋占いの紙に小銭を乗せて池に浮かべ、神託を待ち、 早く沈めば、良縁が近く、遅く沈めばまだ期は熟していない。 ある夏の日、私は、鏡池のほとりで浮かべた恋占いの紙を見詰めていた。 「あなたとの出会いは、運命だよ」 一週間前、友人だと思っていた同僚からそんな