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ものぐさ太郎の独白

どうしたら毎日学校/会社に行かないで生きていけるんだろうか。高校生くらいからずっとそんなことを考えている。

高校の頃、学校が嫌いだった。かといって親にそれを言えなかったので、なるべく校内の滞在時間を減らそうとしていた。それで普段通りに家を出るものの6kmほどの道のりを歩いて登校したり、病院に行くと言って部活をさぼったりしたこともあった。当時は「不登校」とまでなる度胸がなく、なるべく「ちゃんとした人」の範囲で色んなことから逃れようとあがいていた。

特に文化祭や運動会など行事の前後に、学校全体が浮き足だったような空気に包まれるのが本当に苦手だった。

高校1年の文化祭の準備日にはいつものように行ってきますと家を出て、そのまま近所のスーパー銭湯に向かった。初めて母親に学校に行きたくないことを伝えて、学校に連絡してもらうよう頼んだ。その時はすごく真剣だったけど、学校をサボって風呂に行く高校生なんて滑稽で、今となっては笑える。

文化祭当日はなるべく部室か図書室に引きこもっていた。買い出しのフリをして学校を抜け出し、近くのスーパーでスイカを1玉買って、食堂のおばちゃんに切り分けてもらった。部室の扇風機の前にどかっと座って食べたスイカは後ろめたさも相まって本当に美味しかった。

文化祭中の図書室は人が入れないように仕切りが置いてあった。そこをすり抜け、奥のソファーに腰掛けて軍艦島の写真集を眺めた。よくわからないけれど、図書室で写真集を手に取っているところを他人に見られたくなかった。だからその日は思う存分、ほとんど全ての写真集に目を通した。図書館をひとり占めしている感覚は爽快で本当に気分がよかった。思い返してみると、いらないところまで見事にこじらせていたんだなと思う。

2日目は午後から学校を抜けて、他校の友達とカラオケ店で会った。みんな黙々と真面目に授業を受けていて気が詰まりそうだとか、学校の行事なんて無くなってほしいとか、訳の分からない愚痴をさんざん吐いた。友人もよく黙って聞いていてくれたものだ。

学校に戻ると文化祭の総括の集会のために全校生徒が体育館へと移動していた。駐輪場近くの校舎の物陰からしれっと列にまぎれるタイミングを見計らっていると、なぜか担任が車で駐車場に入ってきた。それで様子を伺っているところをすっかり見られてしまった。あの時は何も咎められなかったのでバレなかったかと一安心したが、どう考えても見逃してくれただけであろう。

そんな思い出たちも過去の話かと思ったら、全くそうとも言い切れない。

先月もアホらしいことが立て続けに起こり、ええい!と会社を休んだ。学生みたいに言ったらずる休みの類だ。
スーパー銭湯で汗を流して、動物園に行って、寿司を食べて、やりたい放題やってきた。普段の休日以上に楽しくて楽して仕方がなかった。

学生の頃は早く大人になって働きたいと考えていたけど、何でそんな風に思っていたのか不思議なくらい毎日会社に行きたくないと考えている。

なんとか遅刻や欠勤をせずに出社はしているが、自分のデスクで仕事をしていると、毎日こうやって時間を過ごしながら歳を重ねていくのかと考えてしまいゾッとすることがある。そんな時はラジオを聞いて気持ちを紛らわせているのだが、今度はマスクの下で何とか笑いを堪えるのに忙しい。

こんな調子で60代とか70代まで働き続けることができるんだろうか。心配でならない。

だからどこかにお金があまって大変な思いをしている人がいたら一声かけてほしい。きっと役に立てると思う。

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