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The JOJOLands感想 14話「ハワイ州土地登記所」

あらすじ

メリルの指示によりジョディオ達は州管轄の土地登記所にやって来ていた。
メリルの狙いは登記所にある土地の譲渡証書DEEDにあった。DEED自体はあくまで譲渡の証明に過ぎず、それ自体を盗んだり損失させたとしても大した問題にはならない。
そもそも、証書そのものに何かのパワーがあるわけではない。それは本来ただの紙とインクで出来た紙幣も同じ事。証書や紙幣を通じて異なる二者間に「所有」の概念が発生する。人間が作ったこの価値に対して溶岩は反応しているとメリルは推察した。
メリルは溶岩の特性を利用し、DEEDに溶岩を近づけてHOWLERの所有している土地が全てこちら側に移すという計画を企てた。

ジョディオとパコが車内で待機し、ドラゴナ、ウサギ、チャーミング・マンが登記所に出向く。決して目立たず痕跡を残すなというメリルの念押しがあるにもかかわらず、ウサギは緊張で食べ物と共に派手に転び、周囲の目を引くミスをしてしまう。
そんな中でも、ドラゴナは免許証の偽造、チャーミング・マンは変装、ウサギは監視カメラの改竄と各々スタンド能力を使ってDEEDの閲覧にまで漕ぎ着ける。

そしてDEEDを溶岩に反応させ、3人は意気揚々と登記所を出た。
しかし、直後にウサギが突然嘔吐して倒れ込んでしまう。ドラゴナがウサギの身体を調べると、ウサギの首筋あたりに岩のような斑点がいくつも付着していた。
とうとうウサギの呼吸が止まってしまうも、証拠を残さない任務のため救急車は呼べない。車内で遠巻きにその様子を眺めていたジョディオ達はまだ事の異常さに気づいていない――という所で次回に続く。


溶岩の本質からその特性を利用した強奪ミッション、クライムサスペンスとしての風味を出してからの正体不明の攻撃。説明、潜入、襲撃とジョジョの様々な美味みが詰まった回と言える。

襲撃犯の正体も気になる所だが、溶岩の正確な特性が明らかになった事で、これまでのジョジョと地続きになっている概念であるとハッキリわかったのも興味深かった。
というわけで、感想と考察

価値観とメカニズム

そもそも溶岩が価値あるものを引き寄せるといっても、一体何を基準に判定を下しているのかが今まで判然としなかった。
「人間や動物が無意識に運んでいる」という所で気づくべきだったが、ここに来て人間の価値観に準じていると明かされた。
この特性がわかった時、自分の脳裏に浮かんだのはヴァレンタイン大統領の姿だ。
この「価値」の話はそのまま大統領のナプキンの話に繋がる。

君はこのテーブルに座った時…
ナプキンが目の前にあるが…
君はどちら側のナプキンを手に取る?
向かって「左」か? 「右」か?
左側のナプキンかね?
それとも右側のナプキンかね?
正解は『最初に取った者』に従う…だ
誰かが最初に右のナプキンを取ったら全員が「右」を取らざるを得ない。
もし左なら全員が左側のナプキンだ。そうせざるを得ない。
土地の値段は一体誰が最初に決めている?
お金の価値を最初に決めている者がいるはずだ、それは誰だ?
列車のレールのサイズや電気の規格は? そして法令や法律は?
一体 誰が最初に決めている?
民主主義だからみんなで決めてるか? それとも自由競争か?
違うッ!! ナプキンを取れる者が決めている!
これが「社会」だ……………

スティール・ボール・ラン

大統領は遺体の力を使い、自分ひいては祖国がナプキンを最初に取る者となるよう作中で暗躍していた。
遺体の力が悪いものを全て他の場所に吹き飛ばすものとすると、溶岩の力は価値あるものを無理やりこちら側に引き寄せる側面を持つ。

SBR以降のジョジョは公益、ジョディオ風に言うと「メカニズム」のトップに近い者が敵となっている傾向にある。
国家のトップたる大統領は言うに及ばず、岩人間たちも羽伴毅は「公益は悪ではない」と言ったように医師としてロカカカを利用しようとしていた。
動機はどうあれ、公益を意識していた敵という意味では「天国」を目指していたプッチ神父が原点のように思う。
とはいえ、プッチ神父の「天国」は思想は共感できても大多数の人間にはハタ迷惑なものでしかなく、結局はDIOの支配の反転とも言える結論であった。
大統領や岩人間は公益への行動を現実的な範囲に収めた敵であり、翻ってジョニィや定助のアウトローさを強調する要素にもなっていた。

ジョディオが目指す大富豪への道とはメカニズムの頂点に続く道であり、生態系とも称されたそれは、必ず公益とも結びつく。
大統領が語っていたナプキンの話がさらに突き詰められていくとすれば非常に楽しみだ。

5部チームとの差別化

ギャングという共通点から9部と5部はよく比較対象となるが、メリルの土地の権利についての話を聞いている際に皆一様にボヤ~ッとしているのが良い意味でブチャラティチームとの差別化があって良かった。

ブチャラティチームも当初はジョディオ達と同じチンピラではあったものの、ブチャラティチームは主人公のジョルノの存在も相まって知的な雰囲気がある。構成員の出自も様々で、彩り豊かなチームだった。
ジョルノは元から成熟しており、ブチャラティやその部下もメンバーの精神年齢は高い傾向にある。
一方、メリルの説明を聞いても理解度がほぼ同順なジョディオ達はまさしくチンピラといった風情だ。ちょっとした事で騒いだりはしゃいだりするが、会話がない時は各々好きな事をして過ごす。より等身大の若者という印象を受ける。

ジョルノといえばもともとギャングスターになる目的の為にあえてギャングの道を志していたのは言うまでもない。
対してジョディオ達はドラゴナが自らを負け犬と称していたように、本来的にはジョディオやドラゴナの境遇の方が現実的には「よくある」ものである。

さらにジョディオチームは兄弟のドラゴナとジョディオ以外は仕事仲間以上の距離感はなく(一応、ある程度の情はあるとはいえ)、ここもブチャラティ(とジョルノ)のカリスマで成り立っていたブチャラティチームとは一線を画する所だ。

ブチャラティ達のような正義感や大義を持っているわけではない、あくまで若者の寄せ集めに過ぎないジョディオチーム。だからこそ、彼らの地に足のついた願望はより切実に映る。

ジョルノと違い、正義感からくる大志を持たないジョディオを黄金の精神と比較して落胆する声も見受けられるが、個人的にはそのような「正義」の話は徐倫の物語を以て一旦区切りがついたと考えている。

ジョジョはご存知の通り「人間讃歌」がテーマである。「正義讃歌」ではない。
人間とは必ずしも「正義」を成して良しとするものか?
ジョジョは敵も味方も本気の信念でぶつかり合う。そして我々はその両方に輝きを見出していたはずである。

ジョルノもジョディオも目的の差異はあれど、志に関しては優劣をつけられるものではない。
だからこその「人間讃歌」だろう。


クライムサスペンス

登記所でのシーンは、戦闘とは違った側面で三者三様に能力を使っており、クライムサスペンスとしてのジョジョを存分に堪能できた。

ジョジョリオンのカレラが「毛を生やす」だけのしょうもない能力でATMの暗証番号を探り当てる所がすごく好きで、こういった能力の使い方はジョジョに求めている「捻り」の一つでもある。
ドラゴナの免許証とウサギの監視カメラ改竄は既出の技だったが、チャーミング・マンの偽装能力にポテンシャルを感じた。

透明になれる点ではメタリカに近しいものの、チャーミング・マンはダミーを作り出す事も可能で、騙し騙されのジョジョではこれほど汎用性の高い能力もない。現時点でもスタンド名が明かされていないのが若干もどかしい。

ジョディオチーム5人とも能力に単純なパワー勝負、近距離パワー型のようなわかりやすいランドマークが無い分、それぞれよりフラットに能力の性能を見れるようになっていると思う。


敵の襲撃と今後

奪取ミッションが平気で進むわけもなく、謎の攻撃を受けたウサギ。
まだ手がかりは何もない状態ではあるが、敵の予想はある程度つく。

①HOWLER側の刺客

登記所での異変に気づいたHOWLERが早速刺客を差し向けてきたというパターン。HOWLER側が溶岩の性能を知っているとすると、メリルが立てた作戦はHOWLERあるいはそれに類する何者かも警戒しているはずで、登記所に番人を置いている可能性は十分にある。

となると、ウサギの病変はスタンド能力によるものと考えるのが妥当だが、発動条件が気になる所だ。どこかのタイミングで接触されたのか、あるいは何かの条件を満たしたせいで発病しているのだろうか?

②溶岩の隠されたデメリット

500億ドルという巨大すぎる価値を何のリスクもなく所有できるわけがなく、ウサギの症状は溶岩が「積載量」を超えた価値を持った事による反動が現れたもの、という推理。

ウサギの皮膚が岩化している所からも関連性がありそうだ。そのまま放置しておくとウサギが溶岩化してしまうのだろうか?
ウサギが嘔吐した直後に「医者を呼んでくれ」と言った点も気になる。ウサギは経験こそ浅いものの、鋭い観察眼を持っている。
自らの症状をスタンド能力ではなく医者が必要と即座に判断した所を見ると、何かの持病を抱えており、溶岩がそれを増大させた可能性もあり得る。

いずれにしろ溶岩が原因とすれば、登記の所有を「戻す」必要があるが、奪うはともかく戻すのはどうすれば良いのか?
SBRのシュガーマウンテン回のような展開がされそうだ。

③全然知らない第三者

これはちょっと可能性は低いと思うが、ジョジョリオンも当初は東方家との対決から始まって様々な勢力の岩人間と戦っていたので、今回も複数勢力と事を構える事もあるかもしれない。


これまでジョディオ達が戦ってきたのは露伴とチャーミング・マンのみで、個人で行動している者としか対峙していない。
敵の全体像が全く見えないのが現状なので、次回あたりでその輪郭が掴めると同時に、作品のテーマもしっかり見えてくるだろうと思われる。

今どきな若者で付かず離れずな距離感のジョディオチームがかなり好きになっている。特段仲が良いわけでもないのだが、彼らがつるむ様をずっと見ていたくなる。
ジョディオがチャーミング・マンに好きな曲を聞く下りは短いながらも敵だったチャーミング・マンに親近感を覚えるクリティカルな場面だった。

彼らはこれからどのような旅路を示されるのか? 次回が楽しみだ。

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