著作権の話は貿易の話

著作権は国内の法律ではありますが、実は貿易や外交とも密接なかかわりのある権利でもあります。

このあたりはJASRACの話にせよその他の著作物の話にせよ、基礎部であるにも関わらず議論においては良く抜け落ちている部分でもあります。

国際条約に基づいて形成されて行っている権利であると言う点についてまとめた資料が無い為でもあると思いますので、個人的にまとめてみたいと思います。皆様の理解の一助となれば幸いです。


ベルヌ条約

難しい話ではあるのでざっくりと単純化した説明をしますと、ベルヌ条約を締結している国家は「著作権を保護していく国際同盟」を結んでいます。

ソシャゲーなどでもよく見かけると思いますが、ギルド間で同盟を結んだ場合、例えば共通する敵を攻撃する場合にはその約束を守らないといけませんよね。国家間で著作権を保護する同盟を結ぶと言う事は、このベルヌ条約に沿って国内法を整備していく必要がある、と言う事になります。

この同盟の義務を果たさない場合どうなるかと言うと、貿易の制裁を受ける事になります。

BGMからの徴収

よく店舗のBGM利用についてJASRACが悪であるとやり玉に挙げられるのですが、実は外交的な圧力があり、上記の貿易制裁一歩手前まで行ったという経緯があります。

WHOには加盟国間で紛争が発生した際に紛争処理機関に解決を付託することができるという、TRIPS協定が定められています。このTRIPS理事会において日本はEUから「BGMの徴収を行わないのは条約違反ではないかと」公式に指摘がされています。1996年7月のTRIPS理事会でのことでした。

これに関しては著作権を語る上の歴史的な事実として、そして、外交や貿易の話でもあるという強い側面を理解するためにもかなり重要な出来事です。

類似の問題

似たような問題として音楽教室からの徴収も話題に上がりますが、この辺りの外交問題を鑑みても、既に海外では徴収されている音楽教室での利用について国内で徴収しないという判断は難しいように思います。

他、例えばHDDやスマホへの私的録音の補償金なども同様に海外からの圧力を背景とするもので、基本的には著作権の権利は拡大方向にあります。

権利の縮小について

貿易問題として権利拡大が世界の意向であるとなると、著作権の権利の縮小にはかなり大きなハードルが存在します。国際社会を納得させ、各国の権利者も受け入れる内容にしていかねばなりません。一度手にした権利を手放す人は早々いません。

もしも強引に権利を縮小しようと考えるならばベルヌ条約からの脱退をも視野に入れる必要があります。

この辺りは集団的自衛権同様に、他国の権利を守るからこそ自国の権利が守られると言う性質ですから、仮にベルヌ条約から脱退し権利の縮小がなされた場合、他国の著作物が日本に流れ込んでこなくなる可能性が大きくなります。映画や音楽ももちろんですが、windowsやmac等のOSも著作物である事を忘れてはいけません。

脱退をするなら脱退をするで、国産の著作物でインフラなどをしっかりと賄えるような開発をしておく必要があるでしょうし、個人的には権利者としては海外市場の喪失、個人としては他国の著作物と言う娯楽の喪失の両方をもたらしかねないため反対はします。

とかくJASRACを批判したいがためにこういった貿易等の側面を無視した論理展開が良く見受けられますが、歴史的な理解のためにも重要な事実ですので是非押さえておいてください。

宣伝

音源作ってます

主催ライブイベント



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?