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手作りシュトレン ふたたび

 スーパーでお惣菜を選んでいたら、聞き覚えのあるアップテンポの曲が耳に飛び込んできた。鈴がシャンシャン、木槌がパカパカ。

 なんだっけこれ。雪渡りだっけ?いや、雪渡りはあれだ、かたゆきかんこ、しみゆきしんこ……じゃなくて、5文字の、なんだっけ、クリスマスの……。どうにも曲名が思い出せない。悶々としながら布団に入ってようやく思い出した。「そりすべり」だ。気付けばお店のBGMも、街中の飾り付けも、すっかりクリスマス一色になっている。

 ……というわけで、作りました!今年も、シュトレンを!

 シュトレン、シュトーレン、どっち?と結局わからないまま、調べてみたら本場ドイツでは「シュトレン」と言うらしい。元ドイツ語選択らしく、シュトレンと呼ぶことにする。男性名詞も女性名詞も人称変化も、ぜんぶ記憶の彼方だけれど。

 去年初めて作り、びっくりするくらい美味しかったので、今年は4本作ることにした。1本は実家に、3本は家で消費する予定。作るのに丸一日かかる上、とんでもなく手間もかかる。スーパーやパン屋さんで売っているシュトレンが高いのも頷ける。

 よく晴れた日曜日、夫が午後から出勤だったので、リビングを占領して作ることに。早速朝から買い出しに出かける。いつも使っているスーパーで全部揃うだろうと高を括っていたら、ドライフルーツミックスとラム酒が品切れだった。普段は行かない、ちょっと良いスーパーでやっとこさ手に入れた。うう高い……。きっと美味しくなるはず……。

 シュトレン作りのおともは、Amazonプライムの『カルテット』。冬になると観たくなるんだよなぁ。音楽はもちろん、大人達が、冬の夜に、暖炉のある別荘で駄弁る、あのシーンがたまらなく好き。

 さて、いざ!

 お湯でふやかしたドライフルーツミックスと、オレンジピールをラム酒に漬け込む。


 ミックスナッツをオーブンで焼く。
 途中から焦げた匂いがして、開けた時には7割方黒焦げだった。時すでに、おすし。落ち込みつつ、食べられるものとそうでないものを選り分ける。夫は全部入れちゃえばいいよと言うけれど、せっかく作るのに苦いのは悲しいじゃない……。ナッツは多めに買っていたので、とりあえず事なきを得る(でもやっぱり、食べてみたら少々物足りなかった。来年はクルミをメインにたくさん入れよう)。


 温めた牛乳にドライイーストを加えて、強力粉・薄力粉と混ぜ、発酵種を作る。
 ここで1時間寝かせると、

 こんなに膨らみます!


 バター、卵黄、砂糖、アーモンドプードル、塩、シナモンを混ぜ、強力粉・薄力粉と馴染ませたら、発酵種をちぎって入れる。全体が混ざるまでこねる。


 ラム酒漬けにしたドライフルーツと、ミックスナッツを加えて、成型する。焼く前に40分寝かせる。

 カルテットを観ながら、黒焦げになったナッツはドライフルーツを漬けたラム酒の残りに浸して食べた。ドライフルーツの糖分が移ったラム酒は甘くて、黒焦げのナッツは香ばしくて、これがめちゃくちゃに美味しかった。そして酔う。ラム酒って45度もあるもんね。


 寝かせ終えたら、オーブンで30分焼く。ナッツの二の舞にはするまいとオーブンの前にはりついて、20分焼いたところでアルミホイルを被せた。いい感じの焼き上がり!


 溶かしバターをたっっぷり塗る。こんなに塗っていいの!?と慄きながら塗りたくる。


 極め付けはグラニュー糖。これでもかというくらいにまぶす。調べてみたら、バターと砂糖でコーティングして、酸化を防ぐという意味もあるらしい。なら仕方ないよね。


 一晩寝かせて、まんべんなく粉砂糖をまぶしたら出来上がり。木の幹に降り積もった雪みたいで、きれい。もうちょっと、上下に膨らみをもたせればよかったかな。


どーーーーん!完成。おくるみに包まれた幼子イエスに見えなくもない。


 断面はこんな感じ。フルーツとナッツたっぷり!


 食べるときはこうして真ん中から切って、食べた後は両端を合わせておく。乾燥や酸化をなるべく防ぐためらしい。


 自分で作ると、好きに分厚く切れるのも嬉しい。


 実家では大好評だった。一緒に食べた母はおいしいおいしいと舌鼓を打ってくれ、滅多にLINEをしない父が絵文字付きで「ご馳走様でした」と送ってきた。妹には、お姉ちゃんのシュトーレンおいしすぎ!と言ってもらい、鼻高々である。

 一方で、夫の評価はあまり芳しくない……気がする。おいしいよ!と言ってくれつつも、薄くて小さい一切れを選ぶので、お見通しである。そういえば、今年はシナモンをたっぷり入れてしまったのだった。ジンジャークッキーが苦手な彼の口には合わなかったのかもしれない。

 ならば私がと、喜んで彼の分も食べるつもりである(カロリーには目をつぶることにして)。
 粉砂糖にくるまれて、ちんまりと佇む姿は愛おしい。日が経つごとに、ラム酒の味が馴染んで美味しくなっていく。毎日少しずつ切り分けて食べるというのも、特別感があって楽しい。

 ひとりで消費しきれなさそうだったら、気心の知れた友人に、ちょっとずつおすそ分けしようかなと考えている。可愛くラッピングしちゃったりもして。シュトレンを口実に会えるのも嬉しいな。


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