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ぬさんたら学事始

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マレー世界についての記事。
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マレーシア語とインドネシア語

 マレーシアに留学していたという話をしたときに「インドネシア語専攻だったのにマレーシア?」と言われることがあります。専攻する言語が使われている地域以外に留学する人はじつはあまり珍しくないのですが、それはともかく僕は「インドネシア語とマレー語はおなじ言語なんですよ」なんて言ってます。  使い方を間違えるとかなり誤解を招きかねない表現ではあるのですが、マレー語(Bahasa Melayu)という言語をもとにマレーシア語(Bahasa Malaysia)とインドネシア語(Baha

調査地に行きたくない話

 唸るほどの田舎。マレーシアはボルネオ島の山間の町に滞在しながらそんなことばを発していた。四方を見渡すと緑のジャングル。大阪うまれの僕にはあまりにも田舎すぎた。  この国は周辺国と比べると頭ふたつくらい抜けた経済力がある。経済力があるのでこの山奥でもみんな車に乗っているから渋滞が発生する。その渋滞が発生するのは日曜日。教会に入る車の列が目抜き通りを塞いでいる。それだけカトリックの信徒が多い地域で、マレーシアのカトリックを研究する僕にとって調査地になり得るだろうかと予備調査に

バックパッカーをしていたあの頃

 ヒンドゥスタン平野を東に向かって駆け抜ける特急列車。スリーパークラスという一番安い三段寝台の最上段のベッドで、盗まれないように天井の扇風機の上に靴を置き、天井にぶつからないようあぐらをかいて寝台に座っていた。向かいあっていたのは当時大学に通っていたお兄さんで、そのときにはつぎの4月から就職だったはずだ。そして僕は大学進学を控えた18歳だった。インドに旅立つ前、第一志望の大学に合格していたらメールを寄越してくれ、と親に言ったが、合格発表の日を過ぎてもメールは来なかった。入試が

マレー語ポップスを聴こう!Knock Knock

Knock Knock Knock Knock 歌:Elizabeth Tan Bulan, bintang kau janjikan Tidak aku teruja Cakap memang mudah Semuanya mampu 天に誓うというけれど期待していないわ なんでもできると言うのは簡単だけど Kata manis kau beri Kuterpikat belum tentu Cakap memang murah Oh, kau pun tahu

マレー語ポップスを聴こう!Malaikat

Malaikat 天使 歌:Hazama Tuhanku Kamu tolonglah hantarkan kepadanya Malaikat tuk jaganya bila ku tiada Tunaikan semua permintaannya Kerna ku cintanya sungguh-sungguh 主よ、あなたの天使を彼女に送り わたしがいないときにも守ってください この願いにすべてをかけます 彼女をほんとうに愛していますから Pagi pet

付き合って二週間、いまがいちばん楽しい

 このままいっしょに長く付き合えるのだろうかと不安になるときもあるが、まだ付き合い始めて2週間である。まだよくわかっていないけれど、きっと好きになれる。いや、もう既に好きだ。  一日30分ほどしか会えないのがもどかしい。僕はふだん大学院で研究したり食い口を探すのに仕事したりしているので、会うための時間をなかなかとることができない。それでも合間を縫って毎日顔を見るようにしている。ほんとうはずっといっしょにいたいけど、一日10時間はいっしょにいたいけど、物理的にそれができないの

独裁政権時代がよかったと言う人たち

 大学でインドネシア語を専攻していたとき、インドネシア人の先生が「いまよりもスハルト時代のほうがよかった」とぼやいたのを覚えている。大統領選挙まっただなかで、現在のジョコウィ大統領の対抗馬であったプラボウォはスハルト時代を賛美していた。学部の一回生だった僕はよくわからなかったが、まさかスハルト時代がいいだなんて・・・、とドキッとしたというのか、少し身構えてしまった。  国土が東西5000kmに広がり、1万2千もの島々があり、海を隔てずとも隣村とですら言語も変わるような島々。

インドネシアの空の旅事情

 インドネシア語を専攻していた学部生時代、教員たちから「よほどのことがない限りインドネシアの飛行機はガルーダ以外に乗るな」と言われていた。ガルーダとは彼の国のフラッグシップキャリア、ガルーダ・インドネシア航空のことであり、インドネシアでいちばんちゃんとした航空会社であると言われている。もっとも、そのガルーダですらEUへの乗り入れが禁止されていた時期もあるのだが、いまはもう改善されて安全になったと言ってもいいだろう。  ローコストキャリアことLCCが空の旅の世界を席巻し人々の

楽しい乗り物ぺてぺて

 世の中には様々な乗り物が存在する。古典的な乗り物としては馬やロバが車を曳くというのがあったし、現代では鉄の塊が空を飛んでいる。自分でころころ漕いでいく自転車もあれば、都市の地下には無数の地下鉄トンネルが通っている。  そんな都市のなかで便利な移動手段のひとつといえばバスである。決まったルート上にある停留所で乗客を乗降させ、料金体系もはっきりしている。僕の出身の大阪やいま住んでいる東京であれば都市内での運賃は均一でわかりやすい。電車ほどは大きくないものの、ある程度の詰め込みが

イスラーム的便利な表現

 たいしたものではないのだが、語学教室の講師を務めたことがある。入門クラスなので文字の読み書きと発音から始まって、基本的な表現、新出単語などを攫っていく。多くの場合は会話ができるようになることを望まれており、というわけで挨拶表現なども学ぶのだが、これがまた曲者なのである。挨拶表現はいろいろな言語でわりと例外的な語彙や表現をすることが多く、初学者にはあまりいきなり教えたくないのである。  いや、挨拶表現はもうそういうものだと割り切って覚えさせるという方法もある。アラビア語での

ポップ・ムラユを聴こう Kuala Lumpur Oh Kuala Lumpur

Kuala Lumpur Oh Kuala Lumpur クアラルンプール、嗚呼クアラルンプール 歌手:Melak Ridzuan Aku datang dari desa Hanya sebatang kara Meninggalkan kampung tercinta Dan sanak-saudara 愛する故郷と家族を捨てて ※desa:村 田舎から出てきた孤独な俺 Setiba di kota raya Ku giat berkerja Berlumba-l

日本人になりたい

 数年前にインドネシアの友人リタ(仮名)が大阪の日本語学校に留学するので「関空へ車で迎えに来てほしい」とお願いされた。荷物も重いだろうし予定もない、特に断る理由はないのでオッケーを出した。ところが空港に行く前日にリタから「自分のほかに2人いる」との連絡が入った。留学エージェントがおなじで3人ともまとめて飛行機に乗せるということなのだろうが、ほかのふたりがリタに「車の迎えがあるならいっしょに日本語学校に送ってほしい」と言ったそうだ。  インドネシア人とかかわっているとこういうこ

回族と「民族」

 マレーシアの国立大学に留学していたときに、キャンパスのほぼ中心に中国料理店が開店した。マレーシアの総人口の約2~3割が中華系民族であるが、その店を動かしていたのは華人と呼ばれるマレーシア国籍を持つ中華系民族ではなく、中国大陸から来た留学生たちだった。ハラールの中国料理は宗教、民族を問わないこともあって瞬く間に学生のあいだで人気になり、学部棟のすぐ隣にあったため僕もまた常連となった。そして毎日お昼に通っていると、店員の中国人留学生たちとも仲良くなったのである。  彼らは中国の

POP MELAYUを聴こう!Suasana Hari Raya

 ラマダンも半分を折り返してきましたね。といっても朕はカトリック信者なので断食の義務はないのですが、一日くらい隣人に心を合わせて断食に挑戦する気概も欲しいところです(彼らはそれを30日も続けるのですし)。  というわけでマレーシアやインドネシアではそろそろ、ショッピングモールなどでハリラヤの曲が流れているかもしれません。今年は新型コロナウイルスの関係でもしかしたら気軽に帰省できないかもしれませんが、それでもこのハリラヤ関係の曲、マレー語でラグラヤ(Lagu Raya=ラヤの