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第一巻 工場街育ち 8、爆竹で大変な事に

8、爆竹で大変な事に

※この小説は、すでにAmazonの電子版で出版しておりますが、より多くの人に読んでいただきたく、少しづつここに公開する事にしました。

 当時の男の子はよく2Bという爆竹みたいなもので遊んでいた。爆竹と違うのは一個一個に分かれていて、その個々にマッチの軸についているような火薬が塗ってある。マッチ箱のヘリで擦ると火が付いて、ビンなどに入れると瓶ごと爆発して気持ちが良い。

工場街にはいろいろな所があって、そこで爆発させて喜んでいた。中学に行って、山手の子供たちも同じような遊びをしていることを知った。彼らは、カエルの口に突っ込んで破裂させたことを自慢していたが、俺にはそれほど残虐なことはできなかった、もっとも工場街ではカエルなど見たこともなかったが、、、。

 俺は、この2Bでとても怖い思いをした。いろんなところで破裂させて、面白いところはほとんど終わってそろそろ飽きてきた頃、俺は面白いところを発見した。

それは、いつもハンダの切れ端を拾いにいく工場の中庭だった。ある日、工場の中庭には直径二メートル程の円形に白い粉が埋めてあった。よく見るとそれは白い粉ではなくて、銀色のアルミの粉だった。

俺は、近所の悪友を誘ってその中庭に行った。工場の休みの土曜か日曜日を狙って潜入し、2B攻撃をした。あたりは、ちょうど夕方になった頃で少し暮れかかっていた。工場の中庭の丸いサークルのアルミの粉に何発かの2Bを投げ込み爆発させた。しかしその後、予想外のことが起こった。二メートルのアルミのサークルが真っ赤に燃え上がったのだ。

その頃、マグネシウムリボンが燃えることを知っていたかどうか覚えていないが、まさかアルミの粉が燃えるとは思っていなかった。俺は、工場の建物まで火が回るのではないかと心配して慌てて足で消そうとしたが、足が燃え上がってしまった。みんなも同じことをやっていた。あたりは真っ暗になっていたが、丸い大きなサークルだけは真っ赤に燃えていて、凄かった。誰かが水をかけようと言い出したが、アルミの粉だから水の表面に浮いて広がってしまったら万事休すだ。

俺は、「みんなで土をかけよう」と、言って実行した。いくら金属とはいえ、空気さえ遮れば何とかなると思った。幸い周りには乾いた土がたくさんあった。土のかけはじめは同じように火の手が上がって怖かったが、だんだんおとなしくなった。数人でかけたので早く全面にかけられて、早々と俺たちは逃げた。

俺はそれでも心配で、次の日の工場は休みではなかったが、門の外から中庭を見に行った。何ともないのを見てやっと安心した。よっぽど懲りたのだろう、これ以後俺は決して2Bで遊ぶことはなかった。

 爆竹の 破壊の力 魅せられて アルミサークル 火の海となる 


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