見出し画像

男子テニスATP大会の仕組み

 テニスは、ラグビーなどと違って、一見スマートで激しいスポーツに見えない。しかし、実際にシングルスのテニスをやったことのある人はそうは思わないだろう。特に、グランドスラム大会では、男子は5セットマッチとなることも多く、4時間を越える激闘になることも少なくない。そのような試合が、1日か2日を空けただけで2週間も続くのである。個人スポーツとしては、マラソンなどをはるかに超えて、おそらく最も激しいスポーツだろう。

そんな状況の中で、ほとんど信じられないような奇跡的なショットが随所に見られる男子テニスは、本当に魅力的なスポーツだと思う。特に現在は、テニスの歴史上で最も面白い時期にあたっている。この時代に巡り会えたことを、心から幸せに思っている。このような凄い時期を見逃したら、本当にもったいないことだ。ぜひ多くの人にこの素晴らしいテニスの数々の試合を見ていただきたい。

第1章 ATP大会の仕組み

 テニスの国際的な試合はたくさんあるが、そのレベルはいろいろある。自分がどのレベルの試合を見たいのかを知るためには、ATPランキングの決まり方を良く理解しておく必要がある。ここでは、その決まり方を少し考えて見よう。

 プロのテニス協会は、昔はただ一つだったが、ビリー・ジーン・キング(アメリカ)選手が女子の懸賞金が男子に比べて低すぎるとして、女子テニス協会(Women'sTennis Association WTA)を設立してから、男子と女子のプロテニス興行は別々に行われるようになった。ファンとしてはとても残念なことなのだが、、、。

 ATPランキングというのは、男子プロテニス協会(Association of Tennis Professionals ATP)であるATPが決めるポイントの合計で決まる順位のことだ。なお、ATPのホームページは、次に記載した。

http://www.atpworldtour.com/en/tournaments

 このホームページには、ツアーの予定や現在のランキングなどすべてのことが載っていて、とても参考になる。

 これに対して、同じように女子テニス協会(Women'sTennis Association WTA)であるWTAが決めるポイントの順位を、WTAランキングと言う。WTAのホームページは、次に載せた。

http://www.wtatennis.com/calendar

 ATPの大会とは、年4回のグランドスラム大会、その下にATP1000の大会が9回、ATP500の試合が13回、ATP250の試合が40試合程度ある。ATPランキングは、4つのグランドスラム大会の点数とこれらマスターズATP1000、ATP500、ATP250の大会の成績の合計点で決まる。グランドスラム大会の優勝者には、2000点が与えられ。ATP1000やATP500の優勝者には、それぞれ1000、500ポイントが与えられる。

準優勝者には、優勝者の6割程度の点が与えられるが、大会によって微妙に違う。準決勝出場者には、準優勝者の6割程度の点数が与えられるが、これも大会によって微妙に違う。負けた相手にずいぶん高い点数が与えられるような気がするが、テニスは相手あってのスポーツで、相手が強くなければちっとも面白くない。その意味では、良い試合、レベルの高い試合をするには相手の技量が大切だ。

このため、敗者の点数も高くなっているのだろう。このポイントは、1年間有効で、次の年の同じ大会が始まる時に消える。他にデビスカップ大会での加点もあるが、寄与が小さいのと計算が複雑なのでここでは省略する。

 高いランキングを得るためにはどの大会にも出てポイントを稼げばいいが、実際には体が持たない。一般的に言えることは、強い選手はグランドスラム大会やATP1000やATP500の試合に多く出てポイントを稼ぐ。弱くなるに従ってATP250やその下のチャレンジャー大会に出てポイントを獲得してランキングを上げていく。

 したがって、グランドスラム大会はもちろんだが、ATP1000大会は、たいへん重要になる。錦織は残念ながら、まだATP1000大会ではまだ優勝経験がない。このことの意味することは大きく、ATP1000大会はたいへんレベルが高いということである。3セットマッチということ以外、グランドスラム大会とほとんど違いがない。事実、これまではほとんどの試合の優勝者を4強が占めていた。

 ATPランク30位以内の選手は、グランドスラム大会やATP大会でシード権が与えられるために多くの義務がある。彼らの出場する試合は、当然ながらレベルが高くなり面白い。したがって、彼らはATPポイントの高い大会に出場しなければならないようになっている。

つまり、ATP30位以内の選手は、全てのグランドスラム大会と全てのATP1000大会に出場しなければならない。さらに、年13回あるATP500大会の中の3大会と、年40回程度あるATP250大会の中の2大会に参加しなくてはいけない。もちろん、ATP500とATP250の大会はこれ以上出場しても構わないが、ATP30位以内の選手のポイントには、加算できない。その代わりに、多く大会に出た場合はその中の良い成績のものを選んで良い。

実際には、グランドスラム4大会、ATP1000の9大会、ATP500と250大会の5大会に出れば、かなりの試合数になる。大会で勝ち進めば進むほど試合数は増え、体に負担がかかり故障が多くなる。今は、全体的に試合数が多く、それだけ故障の選手も増え、選手寿命も短くなる傾向がある。そんな中で、フェデラーをはじめとした3強は、長寿を誇っていた。素晴らしい体調管理をしていると思う。

 毎年、11月の初めにファイナルズを除いたATPの大会がすべて終わり、各選手のその年の合計ポイントが決まる。その中の上位8位までの選手だけが参加できる特別な大会がある。これを、ATPファイナルズと呼ぶ。また、9位から20位の選手がその年のグランドスラム大会に優勝している場合は、その選手がATP8位の選手に代わって出場する。

ファイナルズの試合形式は、少し複雑だ。選ばれた8人のエリート選手は、4人づつの2つのグループに分けられ、グループ内のリーグ戦を行う。このリーグ戦をラウンドロビンと呼んでいる。9、10位の選手は補欠として出場できる。各グループの上位2人が、決勝トーナメント戦に出場して、準決勝、決勝を行う。予選で1勝するたびに200ポイントが加算され、準決勝の勝利で400ポイント、そして優勝すると500ポイントが与えられる。そのため優勝者は、最大で1500ATPポイントを獲得できる。したがって、このファイナルズの優勝ポイントが加算されて、最終的なATPチャンピオンは決まる。

 このATPファイナルズは、言わばその年の超人達の戦いだから、本来は面白いはずなのだが、現実には1年間の激しい戦いの終わりなので、故障している選手も多く、実際には興ざめの試合も多い。選手を責めることはできないが、、、。それでも、すべてのテニス選手は、この大会に選ばれることに憧れている。たとえ補欠でも良いから出場したいと思う選手は多く、それはこの大会の豪華さにもよるらしい。

錦織圭が初めて出場した時には、その豪華さに仰天したと語っている。それは、部屋の待遇や優勝賞金の高さだけでなく、試合ごとの出場賞金や勝利賞金が豪華なことにもあるらしい。少し前までは、補欠の選手は、怪我を理由に出場拒否が多かったこともあるらしいが、最近は補欠でも良いから出たいと思う選手が多いのは、どうも出場賞金のせいらしい。ちなみに、現在のこの大会のメインスポンサーは、日本の会社であることも付け加えておきたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?