見出し画像

【読書】 楪 一志の レゾンデートルの祈り を読む

レゾンデートルの祈り
楪 一志
2021年6月25日発行

こんなに死が軽くて良いのだろうか
安楽死を求める人と、それに寄り添う人の物語
安楽死を求める人たちの描写
寄り添う人たちの描写

設定は、ウィルス災疫後に日本で安楽死が合法化された社会

安楽死の認可を
単純に認められる条件と、
手続きが必要になる条件とに分けている

物語では、手続きが必要になるケースを描いている
そこには寄り添う人との10回の面談が手続きのひとつだからだ
面談でのやり取りの中に生死についての話しを盛り込んでいる

しかしながら単純に認められる条件とは
80歳以上の人
難病、治療法の無い病気の人
自分で何も判断できない状態の人

これらの人は どうぞ自由に死んでくださいと言うのと同じだ
現実では、介護福祉の対象者ともいえる
生きるためのサポートをしている人たちはいるが、死ぬためのサポートをする人はいない
ましてや死のうとする人に寄り添う仕事など無い



物語りでは、安楽死の申請をしてアシスターとの10回面談を経て最終判断をするケース
主人公のアシスターの女性と、10代〜30代の申請者
即ち安楽死希望者だ
どんな人が安楽死を申請するのか、この小説でのリアリティが興味を唆る処だ

パティシエの女性は、ウィルス蔓延で経済活動も止まり仕事をやめた
自衛隊の彼氏ができたが、国外の紛争地域に邦人救出に行き命を落とした
アシスターは、フォトフレームのプレゼントで申請者の心を開くことができた

若年生アルツハイマーで記憶を失い死んでいった妻を追うように申請した男性には、
残された娘のために生きる事を選択させることができた

しかし、安楽死の選択を変えない男もいた
アシスターは安楽死を見届ける役割も担うという
もし現実にあったとしたら、その心の負担はものすごいものだと思う

引きこもりの男は、アシスターの寄り添う言葉で、RPGの勇者を目指す
ヒッチハイクから始めた
掲示板への書き込みと匿名や名無しからのレス
勇者は九州一周ヒッチハイクから帰る
そしてアシスターへの報告後には、駅のホームから転落した人を助けに全力で線路に飛び降りる

親に捨てられ施設で育った18歳の女性
アシスターと面談と称するおでかけを繰り返し心が開かれる
その女性は申請者からアシスターの途を選択する

死を考える事と、生きる事が難しいと考える事は同等でないことがある

それは難病の人も、若い人も同様の扱いでなければいけないだろう
安楽死と尊厳死は同じではない
年齢や病気の有無で死の選択を線引きする必要はないのではないかと感じる
選択した人へのサポートも同じだ

死を選択することの合法性が有るかないかの違いだけだろう
スイスやベルギーでの安楽死の事例との比較も確認できるとおもしろいのかも
小説を読んだから現実の社会で強く生きられると言うものでもない
架空の設定の中で生死を考え妄想した一例として読むことができる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?