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【読書】 楪 一志の レゾンデートルの誓い を読む

レゾンデートルの誓い
楪 一志
2022年9月5日発行

前作 レゾンデートルの祈り の続きの話し
安楽死が合法化された社会で、安楽死希望者の話を聞き介助をするアシスターが主人公

興味を惹かれるテーマなんだけど、話しは
子供っぽくて、わざとらしい
軽くて読みやすいのは良い面なのかもしれないが、小説としては物足りなさを感じてしまった
安楽死希望者とか、希死念慮があるだとか 
やっぱり架空の想像物語りだと、いじいじしたお涙頂戴の作り話になってしまってるな と感じる
いじけた感情を明るく描くとこうなるのかな
借り物の言葉で書かれた嘘っぽい物語りを読んだ気分だ



女の子らしく目先だけの現実に涙したり、死にたいとか生きるのが苦しいだとかの繰り返しだ
生死を考えていると言うより、生死をネタに使ってるだけの物語りになっている

癌で苦しんで安楽死を決めた男が、敢えて面談が必要になる手続きを選択した話しを盛り込んでいるが、少しはリアル感を出したいからなのだろうが、その男も結局 割り切れて安楽死をするだけであって病気の苦しみも絶望感も描けずに終わってる

死んでめでたしなのだ  ばからしくなる
やはり、高齢者や病人や障害者などは世の中のお荷物という感覚が根底に流れていると痛感する

歌手が喉を手術をして思うような歌声が出なくなってしまい安楽死を申請する話し
この歌手は歌を届け続けることに希望を見出して生きる道を選ぶ   めでたし
安楽死のアシスターの母親が申請をして面談を重ねる話し
我が子を見捨てた母親だったから育ての親ではない 
毒親だった母親が娘からの言葉で安楽死の申請を取り下げて  めでたし
こんな話しなら、もっともらしいかなと工夫を重ねて書いたのかもしれないが、子供目線では成り立つお話しなのかもしれないが、明らかにリアリティは無い  作り話しも甚だしく感じてしまう
薄っぺらいお話になってしまって残念

アシスターの同期だった女性が退職した後、安楽死の申請をして面談する話しが最後だが、同期ならではの対話で気持ちを立て直して生きる途を選択する
これでは 一時の気の迷いでしたと言うのと同じ
友達と一緒に涙を流して立ち直りました  めでたし
こんな生の苦渋や死の尊厳とは無縁の物語だけしかエピソードがない
子供っぽい
安楽死を考えるにしても、空想の範囲を出ていない中で書いたのがよく伝わってきた
そもそも人の心の機微を言葉にしようと女子目線に頼ったのも、読んでもらえそうかどうかという判断基準しか見えてこない
生と死を語るのには、文章が軽々しく感じてしまい痛々しくもある
人が生きていると生活や性格にまとわりついてくるものがある
業という言い方もできるかもしれないし、ふるまいという言い方もできるかもしれない

生々しい感情が伝わるにはどんな書き方をすれば良いのかまでは指摘できないものの、伝わってきた時にはこちらの感情も揺すぶられるので、はっきりと判るものだ
死を意識する人がSNSで発信するような言説に接すると既成事実のようになってしまうが、そんなのは物事の側面でしかないのだろうと思う
きっと物語りもこんな一側面の言葉の奥底と時間軸が澱んでいる中に潜んでいるのではないだろうかと期待する

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