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『荒神』 宮部みゆき

「あれは、ここらのお山の悪気を集めたもののけだ」

【あらすじ】
時は元禄、徳川五代将軍家光の時代。
東北の山間の仁谷村が一夜にして壊滅状態となる。
隣村の永津野の朱音により
かろうじて命を取り留めた少年蓑吉。

実は、仁谷村を擁する香山藩と永津野藩は
関ケ原の戦い時からの因縁があり
互いに牽制しあっている。
奇異な風土病を巡る騒動…
不穏さをはらむこの香山藩に
「怪物」が現れた。

その後永津野藩の領地に現れる。
香山藩では病みついた小姓・小日向直弥や少年・蓑吉らが
香山と反目する永津野藩では
専横な藩主側近の曽谷弾正や
心優しきその妹・朱音らが
山での凶事に巻き込まれていく

NHKドラマ「荒神」より

【感想】★若干のネタバレあり★
私は宮部みゆきさんは「火車」「ソロモンの偽証」など
リアリティがある作品が好きなので
この作品を知ったときは「怪物か…」と遠ざけていました。

1か月ほど前にビデオで「シン・ゴジラ」を観て
そのあとにオタキングこと岡田斗司夫氏のYouTubeで
「シン・ゴジラ」の解説とともに、
この本を紹介をしていたので
読んでみようと思ったのです。

岡田氏は「庵野くんは、この本を読んでシン・ゴジラを作った」
と言っていたので読んでみると…
いや、その形態と進化は…「シン・ゴジラ」やん!!
なるほどと思いました。

小説に現れる怪物は人が作ったもの
人はいつの時代も自分の領土を守るために
怪物を作り出していきます。

荒神の世界…江戸時代では術による怪物であり
今の世では科学による核兵器や化学兵器です。
物語では人が作ったものが、人を襲い人の手に負えなくなります。
兵器もそうなっていくのではないでしょうか。

直弥はこう言います。
「こうしたことをみんな、誰も悪いと思って
しているのではない。よかれと思ってやっているのだ」
我が藩の領民のため、大事な家族のため、
この地に生きる民を守るため
と続きます。

これをエゴだな…と思ってしまうのは簡単。
よく考えてみると、私自身も「私が」「家族が」と
範囲の大小はあれども
エゴの塊やん!!
「私(だけ)が」から「私も(あなたも)」の発想が必要なんですよね。

内田有紀さん主演でドラマにもなっています。

560ページ
朝日新聞出版
‎ 2014/8/20初版
1034円(税込み)
文庫本あり

著者 宮部みゆき
1960(昭和35)年、東京生れ。
1987年「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞。
1989(平成元)年『魔術はささやく』で日本推理サスペンス大賞を受賞。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、
『本所深川ふしぎ草紙』で吉川英治文学新人賞を受賞。
1993年『火車』で山本周五郎賞を受賞。
1997年『蒲生邸事件』で日本SF大賞を受賞。
1999年には『理由』で直木賞を受賞。
2001年『模倣犯』で毎日出版文化賞特別賞、
2002年には司馬遼太郎賞、芸術選奨文部科学大臣賞(文学部門)を受賞。2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞を受賞した。

著書
『ソロモンの偽証』
『英雄の書』
『悲嘆の門』
『小暮写眞館』
『この世の春』などがある。


最後まで読んで頂きありがとうございます。



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