和食。 なぜ肉を遠ざけた?
「食」の話って面白いですよね。
誰にとっても身近な話題だけれど、自分とまったく同じ感覚でおいしさについて語る人は、おそらく誰ひとりいない。同じ釜の飯を食う家族や仲間であっても……。さらには、あまりに領域が広く深いので、うっかりしたことがいえない。たいがい突っ込まれますから。苦笑
その上であえていうと、和食って、興味深い調理法だと思います。
鳥獣類の肉はほとんど使われない。
油や香辛料の使用が限られている。
こうして特徴を並べたら、分かりきったことを今さら、と思うかもしれませんが、まさに、そこ!なのです。
肉の臭みや油っぽいものを疎むとか、香辛料の刺激をあまり好まないとか、そういう感覚は、私たち日本人には特別なことではない(個人差はあるでしょうけど)。だから、ことさら語る必要も感じない……。
ただ生き物としてみたら、そのことがどうもしっくりしません。
なぜなら、たとえば肉にあるタンパク質や油の脂質は三大栄養素にあげられる大事なエネルギー源なわけで、それらを効率的に摂れる食材を避けるのは、生体恒常性の維持からすると割に合わないように思うからです。
人は、何のために食べるのか。と問われれば、それはやはり生きるため。生命を長らえるため、と答えます。
ですから、栄養とはうらはらに、肉を食べようとしない、油を摂ろうとしない食のあり方を選び、その条件の下に味と技法を追求していった結果、肉や油や香辛料に頼らなくても十分においしさを表現できる調理法に行き着いた、この土地に生きた古の人々には、敬意を払わずにはいられません。一方では、「その大胆なトライ・アンド・エラー。着地点があってよかったですね」という思いもありますが。笑
だって、お肉はおいしいもの。
栄養価は高く、昔も今も世界の多くの人を虜にしています。そんな便利な、もとい優れた食材を、和食ではなぜ、長いこと使わないでいることができたのでしょう。個人的にそれが不思議なのです。
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