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「モバイルペイメント」に立ちはだかるハードルと浸透のポイント

今回はちょっとサービス作りの話から離れて自分が今いるFinTech、その中でもペイメントのお話です。

昨年末Pay Payの100億円キャンペーンで話題となったモバイルペイメント。
メルペイもいよいよスタートかということで最近も盛り上がりましたが、
LINE Pay、楽天ペイ、Origamiなどのサービスも含めて多くのプレイヤーがリアルでの決済データを手に入れようとしのぎを削っていますね。
貨幣の信用が高く、現金が大好きな日本においてモバイルペイメントが浸透するまでのハードルとポイントを個人的な意見・仮説としてまとめてみます。

クレジットカードの手数料が高い

中国のAlipayやWeChat Pay、インドのPaytmなどの事例を見てみるとまずは利用できる店舗がたくさん存在していることが重要です。
使えるお店がないのであればそもそもその決済手段は意味をなしません。
国内の加盟店の開拓で最も高いハードルとなるのがクレジットカード手数料です。
規模や業種、カード会社にもよりますが 実店舗でのクレジットカード手数料はだいたい3%~5%。これはイシュアー、アクワイアラー、国際ブランド、決済代行会社といった関係各社に手数料を支払う必要のあるためです。
ちなみに消費税対応のポイント還元対象が3.25%以下となるため最大値が3.25%になると思います。また、楽天はイシュアーとアクワイアラーの機能を持っているため楽天ペイの登録を楽天カードに限定すれば他社と比べて手数料を下げることができるはずです。)
これまで現金決済をメインとしている企業や街の小さなお店などにとっては大きな打撃となります。ましてや現金での支払がまだまだ多い日本ですからわざわざ手数料を払ってまでモバイルペイメントを導入しようとすら思いません。
Pay Payや楽天ペイ、Origamiはクレジットカードでの決済を基本とし、インターフェイスをQRやバーコードとしています。つまり本質的にはクレジットカードの決済と変わりません。
Pay Payは手数料無料で加盟店を広げるという戦略を取っているようですがマーケコストが尽きる前に消費者を一気に取りきり、かつ一定の利用率を確保できなければ手数料を徴収し始めたタイミングで解約する加盟店が出てきてしまうのではないかと思っています。

ユーザービリティの低下を招く銀行口座直つなぎ

手数料を下げるためにどうするか。
ここで出てくるのが銀行口座を直接つなぎこみ、(リアルタイムで)チャージさせた額を決済で使わせる方法です。LINE Payがこの方法を取っており、最近では前出のOrigamiも銀行との連携を進めています。
銀行口座を直接つなぎこむ場合、原価は銀行へのリアルタイム口座振替の費用を払うだけとなり、クレジットカードに比べて下げることができる一方、モバイルペイメントを利用するエンドユーザーのユーザビリティの観点で2つの問題が出てきます。

1つ目が口座登録のめんどくささ
口座登録を行うためにはチャージさせるサービスと口座をつなげるための登録が必要となり、本人の意思であることを確認する必要があります。
口座の確認を行うためには
・インターネットバンキングのログイン
・オンラインでの本人確認の手続き

のいずれかを行う必要があります。
しかし、デロイトトーマツグループの調査によると日本のインターネットバンキングの利用率は24%。そこからID、パスワードを忘れてしまっている人などを考えるともう少し減ってくると考えられます。
本人確認の手続きは銀行によって異なりますが、銀行の記帳最終記帳残高の確認などがそれにあたります。
その場でサクッと確認できるケースが少ないことが多いため登録自体を諦めるユーザーが相当数出ていることが予想されます。

2つ目が日本におけるデビットカードの浸透度です。
銀行口座から代金をリアルタイムで引き落とすデビットカード。
世界各国では当たり前のように使われている決済手段ですが、日本ではあまり馴染みがなく(各銀行は力を入れていますが…)、利用率は約10%(2017年度)。
仮に銀行口座を結びつけ、モバイルペイメントができるようになったとしてもリアルタイムで口座から引き落としがかかることに抵抗がある人もいるのではないでしょうか。
支払タイミングを遅らせることができ、ポイントもつくクレジットのメリットを認識している私達にとって馴染みのないデビット方式に切り替えることにはある程度の心理的ハードルが存在しているように感じます。

メリットを感じてもらうためにポイントとなるのは入金ではないか

ここまで
・店舗への導入を促すためには手数料を下げる必要がある
・ただし口座をつなぎこもうとすると面倒くささと心理的ハードルが存在する
という2点をモバイルペイメント浸透のハードルとしてについてお話をしてきました。
ここからは上記ハードルを前提としてモバイルペイメントが浸透するためのポイントについてお話してみようと思います。

私もいちユーザーとしてモバイルペイメントを愛用していますが本当に便利です。ここ1年財布を出すことがほとんどなくなりました。
ポイントがたくさん貯まったり、クーポンでお得に買い物できたりと本当にいいことばかりです。

ユーザーがメリットを認識するまで複数回かつ数ヶ月モバイルペイメントを使う必要があります。UX的なメリットだけでなく、ポイントやキャッシュバックなどの金銭的メリットを感じる必要があるためです。
個人的に特定のモバイルペイメントを利用回数がN回(マジックナンバー)を超えると定着率が一気に上がるのではないかと仮説を持っています。

では、継続的な利用を促すためどうするか。
ここで重要になってくるのがいかにして「モバイルペイメントのアプリ(=お財布)に利用できるお金を入れるか・入れさせるか」です。
皆さん、お財布に貯金のできないお金があったらもちろんお金より優先的に使いますよね?Pay PayやLINE Payで返ってきたお金を使わないなんてもったいない。

お財布にお金を入れる方法はポイントやキャッシュバックだけではありません。
メルペイや楽天ペイはフリマで販売した金額をお財布に入れそれを他の場所で利用できるようにしようとしています。
他にもシェアリングのサービス経由で稼いだお金やリユースの会社に何かを売って得たお金、公営競技の配当金など「オンライン→オフライン」または「オフライン→オフライン」という流れで動いているお金を「オンライン→オンライン→オフライン」または「オフライン→オンライン→オフライン」と変えることができれば利用頻度も高まり、よりモバイルペイメントを定着させることができると思っています。
例えば「シェアリングサービスで稼いだ額をモバイルペイメントへチャージ→モバイルペイメントの加盟店で決済利用」、「リユースの店舗まで本を売りに行く→現金でもらうのではなくモバイルペイメントへチャージ→モバイルペイメントの加盟店で決済利用」のようなイメージです。
モバイルペイメント事業社は今後、支払サイドのキャンペーンだけではなくシェリングやリユースの企業と組んで入金サイドのキャンペーンもより積極的に行うのではないでしょうか。

最後に

と好き勝手書いてみましたが自分はモバイルペイメントの事業者に所属しているわけでもなく、また上記内容もあくまで個人的なの意見・仮説でしかないので各事業者の今後の展開を眺めながらあーだこーだ考え続けてたいと思います。
ぜひ皆様のご意見も聞かせてください!

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