見出し画像

文章にならなかった散文たち(2023.10)

・「明日のあれどうしよう」とか未来の不安要素をひたすら考えた最終地点が「まあその時の私がどうにかするでしょ」になるんですけど、実際どうにかする。

・「うしなう」の漢字って上に突き出るっけ?と迷うと、まず「矢」と書いてから、いや違うな、と感じ、上にちょんと突き出させるということを、もう15年程続けている。

・「は」と「ほ」がわからなくなる瞬間がある。「ぱ」と「ぽ」も同じようにわかりにくい。「ば」と「ぼ」は少しわかりやすくて、「ハ」と「ホ」に関しては余裕でわかる。

・私だってマッシュアップしてほしい。

・「髪に芋けんぴついてるよ」はしばしばネットでおもちゃになっているが、私は「あの、髪にカメムシがついてます」と言われたことがある。申し訳無さそうに伝えてくれたお兄さんとは恋に落ちなかったし、カメムシは素手で追い払った。あまり人間をなめるなよ。

・川に水鳥のようにただのゴミがいくらか浮いていた。ここが私の故郷である。

・強さは誇れることであり、弱さは忌むべきことであるという価値観で物事が語られることが多いが、強さが弱さを包括していたり、弱さにはそうあることができる強さが隠されていたり、そこに優劣をつけることはできず、一義的に考えることは絶対にできないということを、私は忘れずにいたい。

・朝、横断歩道で信号を待つ人の群れは皆、戦士の顔をしている。
JR大阪駅から阪急方面に向かう横断歩道、ここではいかに人の隙間に入ってスタートしやすいポジションを勝ち取り、いかに信号が変わるタイミングを見極め、その一歩を踏み出すかがカギである。位置取り一つ、タイミング一つ違えれば、ただ人の波に流されるのみになる。
私は転職をして、ここの戦士の一員となった。
ここにいるのは名も素性も何も知らない者たちであるが、この横断歩道をどうにか早く抜け出したいという思いは皆同じであるため、どこか仲間意識のようなものが生まれる。
すれ違う戦士たちの群れの中で、一枚の紙を受け取ったのは、私がここに仲間入りをして2週間が経とうとしていた時だった。雑踏の中で誰かに握らされたのだろうか、とにかく横断歩道を渡り切った時、私の右手にはくしゃくしゃになった紙が一枚収まっていた。
人気のない場所に移動し、紙を開く。
「この手紙を10人に回さないと不幸が訪れます。」
どうやらあそこには戦士とは別の性質を持つ人間も混じっているらしい。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?