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国内学会での英語発表

以前の記事の続き的な感じで、学会の話です。よかったら前回記事も参照ください。

1:国内学会で英語で発表

大きな学会に行くとプレナリーセッションとかシンポジウムと呼ばれる発表があります。前者は学会に提出された抄録の中で、特に優秀だった演題を発表するもので、その年の学会のトップの発表です。後者は、専門分野に特化した発表で、エキスパートの新しい知見を聞くことができます。
最近、国際化の流れに沿って国内の学会では英語のセッションが増えており、プレナリーセッションやシンポジウムは英語で行われることが多いです。しかし個人的には無理に英語でやらなくてもいいんじゃないのと思っています。以下に、その理由を書いていきます。

2:日本人が英語で発表するとどうなるか

たしかクレヨンしんちゃんだったと思うのですが、英語を話せるようにやりたい、しんちゃんの両親が、これから英語しか話しちゃダメというルールを二人で決め、二人とも黙ってしまうという話があったような気がします。
国内学会の英語発表も同じです。たいてい質問が起きなくなります。聴講している先生のなかには英語が得意な先生もいらっしゃるので、盛り上げようと質問をするのですが、今度は演者が黙りこみます。下手すると、なんとかぽつぽつ単語を並べて時間オーバーで終了です。そもそも発表者も用意してある原稿を読んでいるだけのパターンが多いので、なんとなくギクシャクした発表になることが多い気がします。
ところがその学会の事後報告などをみると「最近の若い人は英語が上手でレベルが上がってきている」と書かれています。忖度なしに言うと完全な嘘です。もちろん一部にはネイティブ並みの素晴らしい英語の発表をされる方もいるし、頑張って勉強したのだろうなという感じで工夫をこらして発表される方もいらっしゃいます。しかし大抵は原稿を読むだけ、質問はなし、仮に質問されても答えられないという悲しい発表が多く、十分なディスカッションに発展しないことが多いです。

3:せめてプレナリーくらいは日本語で

プレナリーセッションは。その年の学会のトップ演題です。したがって国内学会だと基本的に日本人の発表しか選ばれません。発表内容はもちろん素晴らしいですし、勉強になることも多いです。中には世界的に有名な超一流雑誌に載った話だったりすることもあります。
しかし、その素晴らしい内容が英語のせいで、悲しいくらいみすぼらしいものに見えることがあります。また先に書いたように、発表はなんとか大丈夫でも、質疑応答にがっかりさせられることもあります。
シンポジウムだとエキスパートとして海外から先生を招待することがあるので、全編英語でのセッションができるのは仕方ないと思います。しかしせめてプレナリーセッションくらいは日本語でやってはダメなのでしょうか。また一部のシンポジウムは完全に日本語でやってはダメでしょうか。
その学会を国際化したいのもわかります。その学会の英語のレベルが上がっているとプロモーションしたいのもわかります。でも、そんなことのために、そして本質的ではない言語の問題で、せっかくの素晴らしい研究内容が全くダメな発表だったという評価に書き換えられるのはいかがなものでしょうか。また発表している方も言語の問題はクリアにした状態で、聴講している人やシニアの先生と十分なディスカッションがしたいのではないでしょうか。

4:じゃあ勉強しろよという意見

じゃあ英語の練習してこいよとか、勉強しろよという意見があるのもわかります。いい機会だしやれよということです。
でも30歳とか40歳を超えてから英語の勉強を始めてもネイティブにはなれないでしょう。一定のレベルに達すれば良いという意見もあるかもしれませんが、研究内容についてプレゼンして、深くディスカッションするのは日本語でも難しいです。ましてや英語では…
ただでさえ時間がないのに、英語の勉強に時間がとられ、もし本業が疎かになったりしたら、それこそ本末転倒ではないでしょうか。

5:まとめ

日本人は英語が話せないことを恥じていますが、母国語で医学や研究を学べることは先人達の苦労の賜な訳です。もちろん、そこまで話を大きくするつもりはありませんが、学会発表というせっかくの晴れ舞台、話してる方、聞いてる方共に少しでもストレスなく発表内容を発展させることができれば、最高だと思うのです。そして、そのためには、無理に英語で発表しなくてもいいじゃないかなと思ってしまうのです。
実は放射線科医の知人にこの話をしたところ、放射線科学会の中で、この内容(英語発表と日本語発表のどちらがよいか)についてディスカッションがするセッションが設けられていたと言っていました。意見が分かれて、かなり盛り上がったとのことでした。みな考えることは同じようです。
今回も長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

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