見出し画像

医療保険を見直して気づいたこと

5年ほど前に掛け捨ての医療保険に入りました。入った理由は、「なんとなく心配で」です。昨年秋頃に保険会社から電話があり、「内容の見直しをしませんか?」と言われたので、その時のことを書いていきます。

1.保険会社のお姉さんの話

5年前、保険に入った時は35歳で、掛け捨て金額は月々6000円でした。保険会社のお姉さんが言うには、5年経ち、医療も色々、変わったので当時の契約内容だと合わない部分も出てますからバージョンアップしませんかというお誘いでした。
具体的には「5年前は大病を患ったら入院がメインだったので、いまの契約だと入院5日目からお金が出ることになっています。最近は入院期間も短くなっていますし、がんでも入院しないで外来で治療を始める場合があります。ですので入院1日目からお金がおりる契約にし、外来通院でもカバーできる特約をつけませんか?」という内容でした。

2.あやうく承諾しそうになる

たしかに向こうが言うことも一理あるなと思いました。掛け金のことを聞くと「だいたい1000円くらい上がる計算ですよ」とのこと。じゃあいいかもしれませんねと言うと、「そうですね、月額は9000円になります」と。待って、待って。
1000円上がるなら、6000円+1000円で7000円です。小学生でもわかる計算です。そこを聞くと、年齢のためですと言い返されます。要するに、いまの契約(基本料6000円)からバージョンアップした契約に変えることはできない。いまの契約を解約して新たにバージョンアップした保険に入り直す必要がある。そうすると今年、私は40歳になるので基本料が高くなり8000円になる、プラスバージョンアップ代で9000円ということでした。
掛け捨て保険は若いうちに入った方が、月々に支払う金額は安く済みます。高齢になると本当に病気にかかる可能性が高くなるからです。または若いと長期間、お金を払うことになり、会社は元が取れるからという理由なのかもしれません。

3.この時に気づいたこと

ここまで聞いて、バージョンアップは断りました。保険の見直しとは、医療環境の変化を言い訳にした値段の釣り上げだと思ったからでした。
仮に、今回、提案のバージョンアップに同意したとします。月々9000円払い始めます。ところが10年後に医学が進歩し、治療は内服薬が中心になり、外来通院が基本になったとします。保険会社は、そのタイミングでまた電話をかけてきて、「いまの契約だと通院の治療代をカバーしていません。バージョンアップしませんか?」と言いだすのではないでしょうか。50歳になっているので基本料もさらに上がり、今度は月々12000円のプランに切り替えることになります。そしてさらに10年後、オンライン診療が進み、病院に行かないで治療することが常識な世の中になったら。「オンライン診療をカバーする保険にしませんか?」と言われ、その時には60歳になっているので…
ここまで読んでわかる通り、きりがないなと思ってしまったのです。

4.医師の立場から思う医療保険

入院した時の医療費をカバーしてくれるのが医療保険ですが、大前提として日本の健康保険制度により医療費は3割負担(小学生から70歳未満)だということがあります。それでも100万単位でお金がかかる治療もありますが、高額療養費という制度を使うことによりかなり抑えることができます。少し前に承認された白血病の治療薬でキムリアという薬があります。1回の投与で3300万円程度かかる超高額治療ですが、保険承認されているため、高額療養費を組み合わせれば年収500万円の人なら40万円くらいの負担で済むそうです。
問題は高額療養費があとからお金が返ってくるシステムなため、まず大きな額を払い込まなければならないということです。ただこのあたりも病院の事務に相談すればなんらかの解決策を提示してくれる気がします。例えば、頭金だけ出して支払いは少し待つとか。あまり言いすぎると無責任になるのでこれくらいにしておきますが、高額医療を受けることで破産するとかそういうことはないようにできているのです。
したがって医師の立場からすると、掛け捨ての医療保険は正直、あまり必要ないもののように映ります。ある程度、収入がある人は上記のような感じで、きちんと医療費を支払えるからです。
逆に極端に収入が低いとか、色々な制度を駆使した額の医療費の支払いも厳しいという場合ですが、掛け捨てだと病気をするまではお金を払い続けることになるので、言い方を変えれば病気をしなければ損し続けることになります。そうすると掛け捨て費用がもったいない気もしますので、やはり入らない方がいいという結論に達します。それなら保険に入るより来たるべき時に備えて貯金したり、投資に回した方が良いと思うのです。
少し見方を変えて、医療保険のメリットを考えます。国民健康保険は差額ベッド代をカバーしていません。では高い個室を希望しなければいいのかというと、そういうわけではありません。緊急時に差額ベッドしか空いていない場合なども考えられるからです。したがって医療保険で受け取ったお金を差額ベッド代に当てるというのはありだと思います。
もうひとつ、個人的に唯一、必要かなと思うのが先進医療特約です。最近は新規治療がどんどん開発されていますが、それらを先進医療として行う場合、費用はすべて自己負担となります。先進医療特約をつけておけば、この点は安心です。ただ病気になって、先進医療を受ける可能性も一般的には高くないので、経済的に余裕がない場合には無理に入らなくて良いと思います。

5.じゃあなぜ保険に入るのか

私の場合はお守りです。両親もよく言っていましたが、保険に入っていると病気にならないと信じているからです。「掛け捨て保険で、損し続ける」と書きましたが、裏を返せばそういう人はずっと健康ということになるのからです。このような考え(屁理屈)に基づいて経済的に逼迫しない範囲で、保険には入っています。世間では、保険は費用対効果から意味ないとか、損するようにできているとか否定的な意見も多いですが、私個人は入っても、入らなくても自分が後悔しなければいいだけだろうと考えています。掛け捨てのお金を払うだけで何も起こらなくても、それは健康な状態を維持できているのだから悔いはないし、万が一のことが起こったらある程度はお金がもらえるからよしとする、こういう楽観的な考えで私自身は保険に入っています。
逆に言えばお金の損得にシビアな方は入らない方がいい気がします。先に書いたような医療システムもありますので、治療を受けても経済的にはそこまでダメージをもらわないと思いますし、保険会社にお金を取られると思ってしまったり、そういうことを考えること自体がストレスになるのなら、入らない方が快適に生きていけるはずです。
最後にこれだけ色々、悩んだ医療保険ですが、先日、自分が入っている保険をすべて見直していたところ、親が私名義で入ってくれていた生命保険に医療保険特約がついていることがわかりました。したがって今回、書いた医療保険は近々、解約するつもりです。とんだおちになりました。
今回はこのへんで、お付き合いいただき、ありがとうございました。

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?