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任官拒否への批判が的外れな理由とは!

3/29(火) 毎日新聞によると、
自衛官任官拒否72人、過去2番目の多さ 防衛相「極めて残念」という記事が配信されていました。

私は、防衛局に勤務する前、防衛大学校に勤務していたので、毎年この時期になると、卒業生の「帽子投げ」のニュース映像に、当時を懐かしく思いながら見ています。

今回は、あまり馴染みのない防衛大学校の任官拒否について、私なりの考えを述べたいと思います。

そもそも防衛大学校とは

防衛大学校は、日本の防衛を担い、国民の安全・安心を守り抜き、世界平和に貢献することに強い関心があり、また将来、社会を支える重要な自衛隊のリーダー育成機関です。

防衛省の機関ですので「大学校」となっていますが、一般大学と同じ4年制の教育を実施し、卒業時には学士の学位を授与しています。

学生の身分は、特別職の国家公務員です。

全員学生舎に居住し、被服、寝具、食事などが貸与又は支給されるほか、毎月学生手当(令和元年12月現在:117,000円)が支給されます。

また、6月、12月には期末手当(いわゆるボーナス、年397,800円)が支給されます。

4年間国費で暮らし教育を受けながら、自衛隊に入らないのは何事か。様々な批判の声がヤフコメなどのネットで投稿されています。

任官拒否への批判が的外れな理由

税金で食わせてもらっているのに。任官拒否するなんて、とんでもない!と批判する世論が圧倒的です。

しかし、現在、防衛大学校を卒業しても自衛官に任官しない者に対して償還金を徴収しています。昔、私が勤務していたころは、そのような制度はありませんでしたが、一般大学の学生との公平の観点から、任官辞退者に対して授業料の償還金を徴収することは、当然だと思います。

償還金額は国立大学の入学金と4年間の授業料の標準額に相当する約250万円。6年以内に退職した自衛官も勤続年数に応じて減額した額の償還金を徴収する。新制度は平成26年4月の入校生から適用されています。

在学中に支給された学生手当、期末手当と現物支給の給食、宿舎の関係費は「教育訓練を受けた対価にあたる」として徴収しない。中退した学生からも償還金は徴収しないとしています。

やりがいのある仕事として、国防を担うリーダーになるべく、夢を持って入学してきたにもかかわらず、幹部自衛官としての適性や資質に疑問が生じることはあるでしょう。

それを早い時期で、見切りをつけることも重要です。個人の人生に関わることなので、任官拒否することは、誰にでも止めることはできません。

さらに、職業選択の自由は、日本国憲法では 22条 1項で定められています。 何人も、公共の福祉 に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有することは、ご存じでしょう。 

憲法でも保障されているので、防衛大臣が仰っているような「遺憾」という言葉は適切ではありません。撤回してほしいです。

それより、重要なことがあります。

学生生活を終えた後には、自衛官任官への道が待っています。陸上要員は陸上自衛官(陸曹長)に、海上要員は海上自衛官(海曹長)に、航空要員は航空自衛官(空曹長)にそれぞれ任命され、幹部候補生として各自衛隊の幹部候補生学校に入校します。

ところが、防大を卒業して任官したにも関わらず、翌月に幹部候補生学校に入校しない任官者(仮に「入校辞退者」とする)は少なくないそうです。

私が防大に勤務していたころ、こんなことを聞いたことがあります。

指導教官は、卒業前に任官の意思を確認する際、なるべく任官を拒否する学生数を減らしたいために、幹部候補生学校で辞めろ!と言っているそうです。

任官拒否数は、指導教官の評価につながるので、出来る限り少なくするよう、学生を説得にかかるそうです。

さらに、幹部候補生学校を卒業し、部隊に配属した直後、辞表を出して、早期退職する幹部自衛官もいるそうです。

これでは、現場としては、たまったものではありません。自衛隊の士気に大きく支障をきたし、現場は混乱してしまいます。

幹部自衛官は、己の生命を危険にさらすにとどまらず、部下に命懸けの任務を命じなければならないことがあります。

そのような自己保身に走る幹部自衛官の命令に従わざるを得ない自衛官の気持ちを、私は沢山見てきました。本当にやるせない気持ちで一杯でした。

任官拒否に注目が集まっているようですが、むしろ、入校辞退者や早期退職者が組織に大きく影響を及ぼします。

実際、防衛大学校では、4月に入学し、GW後に約1割は退校していきます。

防衛大学校はあくまでも公職として働くための養成機関ですので、当然ながら、一般的な自由な大学生の学生生活イメージとは大きく異なります。

例えば、起床時間は6時、消灯は22時30分というように、一般的な大学はもちろん、一般企業で働く以上に、生活全般において制限された日常生活をおくります。


起床の合図はラッパの音で、音が鳴るまではベットから出られませんが、鳴ってからは素早く起き上がり、5分で寝具を片付けなくてはなりません。

また、学生全員が入校と同時に「学生隊」に入隊し、生活全般の規律を集団で守っていくこととなります。生活の中の清掃などの用務は、学生隊組織が担当を振り分ける仕組みになっています。

防衛大学生になるということは、日本を守る自衛官になるための相応の覚悟が必要だということであり、その規律ある生活に対しても給料が払われているのです。

防大生の上下関係は、絶対服従です。当時、下級生は奴隷扱いでした。今はどうだかわかりませんが。指導教官のパワハラもありました。

普通の学生生活と大きく異なる生活環境なので、在学中にノイローゼで自殺する学生もいます。

無理することはありません。早めに区切りをつけることも必要です。別の大学に受験するため、早々と退校する学生もいました。

防衛大臣が「防大生が誇りと使命感を持って全員が任官するように一層努める」と語ったようですが、その言葉が現場の指導教官に大きくプレッシャーを与えることになり、問題の本質を見誤ってしまうでしょう。

任官拒否する理由も人それぞれです。事を荒立てれることはありません。それより深刻な問題が潜んでいるわけですから。

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