インチキ病院
芸人になりたての頃、夜勤をはじめた僕は、風邪をひいて体調を崩しました。週5ないし6の夜勤は体に堪えたらしいです。
会社員時代の社宅から引っ越したばかりで、どこに病院があるかも分かりません。高熱にうなされながら検索しました。
病院をしらべる時は、なるだけ口コミ⭐︎数が高いところを探します。口コミ⭐︎数が低いところは嫌な性格の医者がいることが多い気がするからです。なんでこんなになるまで放っておいたんだ!と怒られそう。
口コミの良い個人病院が見つかりました。仮にS医院としておきましょう。さっそく足を向けました。
S医院の外観はどこにでもあるような、古めの町医者病院でした。
入ってすぐ、異様な薄暗さに驚きました。人がいないためか、しんと静まり返っています。
壁は黄ばみ、張り紙はすべて蛍光焼けで白くボヤけています。陰鬱な雰囲気です。
受付で体温計を預かり、38度ほどに温めて返しました。受付の方は老齢の女性。場所もあいまって、失礼ながら不気味な印象を受けました。
いざ診察。こちらもかなりご高齢の先生です。症状は発熱、咳、鼻水。風邪だろうとふんで病院にきました。口を開けて喉を見てもらったり、心音を聞いてもらったり。
しかし、医者の"ベタ"は一切ありませんでした。
始まったのは、奇妙な問診でした。
医者「スマホは使ってますか?」
僕「え、はい。使ってます」
医者「それはいけません。スマホは脳を焼くんですよ」
僕「??」
医者「スマホの使用はなるべく控えたほうがよいでしょう」
スマホが脳を焼く…!?何を言ってるんだ…!?訳の分からないまま問診に答えました。
問診が終わり、次は診察です。
こちらも想定と違い、変わっていました。
聴診器を胸に当てられる代わりに、ペンライトのようなもので喉を見られる代わりに、緑色の光線が全身に照射されました。
光線を照射しながら、先生は機械の上に(上画像2つ目、木の円の部分)薬の瓶を乗せます。と思ったら、その瓶を退けてまた別の薬瓶を乗せる。
何回か繰り返すと、反応があったようで
医者「この薬だね。"気"が悪くなってるからね」
医者「"気"が悪いと体調を崩すんです。この機械は、気の不調を探ります」
結局、診察は緑の光線を照射するだけで終了しました。
抗生物質的なものはもらえませんでした。最小限の漢方薬を処方された覚えがあります。
このあと風邪が悪化して、声がいっさい発せなくなりました。10日ほど声が出ず、バイト先(コールセンター)に迷惑をかけました。休みの電話すらも、声が出ないので出来なくて、飛んだと勘違いされました。
後に調べたら、その病院はオカルト診療で有名なところでした。口コミのほとんどが代替医療と呼ばれる医療法を肯定的に捉えたものです。
「医者が高齢なのにピンピンしてるのが、この治療法が正しいことの証明である」みたいなコメントでした。
風邪でフラフラな状態だったため、コメントを見ていませんでした。
コメント欄の下の方にはちゃんと低評価が並んでおり「インチキなので絶対に行くな」と警告されていました。
みんな、「スマホは脳を焼く」と最初にかまされるようです。
"気"を探る治療法や機械は検索するとすぐ出てきます。上の画像は本物です。
治療法の真偽はどうあれ僕は風邪をこじらせてしまいました。皆様もどうかお気をつけて。
おわり。
身に覚えのない慰謝料にあてます。