見出し画像

【読書】兎の眼

kindle unlimitedで読了

▫️作者
灰谷健次郎(1934年〜2006年)
日本児童文学者協会新人賞(1975年)
路傍の石文学賞(1979年)
この他に「太陽の子」「せんせいけらいになれ」「天の瞳」など

▫️あらすじ
ゴミ焼却場のある町の小学校が舞台。新任女性教師である小谷(こたに)先生が受け持つクラスには押し黙ったまま話をしない鉄三がいた。鉄三はハエの生態に対してのみ集中力があるがそれ以外は何もやらない。教員ヤクザのあだ名を持つ同僚の足立先生、重い障碍をもつみな子とその対処を考え抜くクラスメイト、壮絶な過去を持つ鉄三の祖父バクじいさんが語る後悔と決意、自分自身の無力さを感じる小谷先生だったが、ゴミ焼却場の移転が決定され、子供達が転校しなければならない事態に、、、

「ぼくはじっとじっと見た。それから、はこの中までじっとじっと見た。赤いやつが出た。ぼくは鼻がずんとした。サイダーを飲んだみたい、ぼくは心がずんとした。ぼくは赤いやつがすき、小谷先生も好き」

兎の眼

▫️感想
感情が表に出ない、ほとんど話さない、ものを書かない鉄三少年が学校の授業で初めて自分の言葉を綴ったシーン。泣けます。
私が小学校高学年に初めて読んでから約40年に渡って何年かに一度読み返す作品。どう生きるか悩んだときに読みたい一冊。児童文学と呼ぶにはヘビーな背景だが力強く生きる子供たちがヘビーさを感じさせない。最近は見聞きすることが少なくなった労働環境や生活環境、教育環境の闇は形を変えて現代にも確かにある。静かに強く生きる鉄三と、新任教師の小谷先生。優しさと残忍さ、美しさと汚さ、強さと弱さ、体制と反体制、普遍と変化などなど、相反するものが同居する人達。良くも悪くもピュアな子供、子供と共に成長する親、奮闘する教師、悩みの多い夫婦、障害者と共に生きる人、それぞれがたくさんの経験を通じてもがきながら成長していく様は涙無しには読めない。私自身、何度読んでも鉄三と同じように鼻がずんとする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?