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君死にたもう時、美しくあれ①  〜宝石の国〜

前回の好きな漫画書き殴りnoteが私にしては反響があり、大変嬉しかったです。ありがとうございました。

ラストに書いた「ある発見」というのは私の好きな漫画に、ラブコメがないことです。
青春キラキラした漫画読むと身体が灰になる呪いにかかってるからしょうがないね。


さて今回から連続した記事を書いていこうと思います。

題して「君死にたもうとき、美しくあれ」。

皆さんはアニメや漫画が好きですか?

私は今まで書いてきた通り大好きです。
そしてアニメや漫画を楽しむと、自然と好きなキャラがいることに気づきます。

そのキャラの言葉や行動を追うことで物語はさらに彩りを増します。

しかし、それがプッツリと断たれることがあります。

それはキャラクターの「死」です。

死後もそのキャラが他者に与えた影響などをなぞることはできますが、新たな活躍を見ることは不可能に等しいのです。

私にできるのはその壮絶な最期を看取り、さめざめと涙を流すことくらいです。

私は特に「あ、好きだなぁ」と思ったキャラが死んでしまうという経験を数多くしてきました。

だからこそ話したいと思います。
私が大好きなキャラがどれほど強く、かっこよく、美しくその生涯を閉じたのかを。
拙い文ではありますが、私自身の知ってもらいたいという欲の充足と、悲しみを悲しみとして大切にするためにこの場を使おうと思います。

なおこの記事には多大なネタバレを含みますのでどうかどうかお気をつけてお読みください。

それでは第1回、参ります。




















「君死にたもうとき、美しくあれ」

第1回 「宝石の国」より
    アンタークチサイト

「宝石の国」は、市川春子さん作、講談社月刊アフタヌーンにて連載中(2020年12月より休載)の漫画です。

人類が滅びた遠い未来の地球で、人と同じ形をし、体が宝石でできた生き物たちが暮らしていました。

宝石たちはその体を構成する石の名前を冠し、それぞれが役割と仕事を分担して暮らしていました。

そんな彼ら(設定上無性ですが彼らと呼びます)には敵がいました。

月より飛来し、宝石たちを砕いて連れ去る「月人」というものたちが。宝石たちは砕かれてもきちんと繋がれば復活が可能で、死ぬ、ということがありません。とはいえ、月に連れ去られ帰ってきたものはおらず、事実上の死と言えるでしょう。

フォスフォフィライト(以下、フォス)は硬度が低く、力も弱く、おまけに月人好みの薄荷色をした元気いっぱいな主人公。宝石内では最年少の300歳です。

仕事のなかったフォスが宝石たちを育て、まとめる「金剛先生」から「島の博物誌の編纂」を依頼されたところから物語は始まります。

その後、フォスがクラゲに食べられたり、月人に攫われかけ、両足を失いながらも島には冬が来ました。

冬は空を雲が覆い、光の質が悪くなるため、光を吸って生きる宝石たちには厳しい季節です。

そのため、基本的に金剛先生とある宝石を除いて冬眠に入ります。

その宝石というのが「アンタークチサイト」です。(以下、アンターク)

実在する宝石であり、室温程度だと液体ですが寒くなると硬くなるという特徴を持ちます。故に、冬以外は液体のまま箱の中に収められ、寒くなると人の形を取り戻し動き出します。

つまり寒ければ寒いほど、アンタークは強いのです。本来の硬度はフォスと変わりません。

そんなアンタークの仕事は冬の見回りと、宝石たちの眠りを妨げる音を立てる流氷を割ること。

1人きりで寂しい仕事。ですがアンタークは金剛先生のことが大好き。むしろ独り占めできて幸せな時間…だったのですが。

今年の冬は違いました。フォスがいたのです。

先の戦いで足を失い、アゲートという宝石を合成したところ足のみが速くなったフォスが。

体質が変わってしまったのか、いつもの冬は真っ先に冬眠するフォスが冬の仕事を手伝うと言い出します。

渋々アンタークはフォスを流氷割りに連れて行くも、雪と天気の悪さからほとんど動けません。

そんな日々が続き、なんとか動いて流氷を削るくらいはできるようになったある日のこと。

フォスは誤って海に落ち、流氷とぶつかり、今度は両腕を失ってしまいます。
自分の不注意を責めるアンタークに金剛先生は2人で新しい腕を探すよう言いつけます。

そうして2人は宝石たちが生まれた場所、緒の浜にやってきます。そこではさまざまな宝石が崖から生み出され、その一部が意志を持って新しい仲間となります。

仮という形で落ちていた金や白金をフォスの腕につけたところ、拒絶反応は起きませんが重すぎてまともに動けません
それどころか流動的な合金が少しずつフォスの体を取り込もうとさえしています。大量の合金にフォスの体が沈んでしまった時のことです。

空が晴れわたり、月人が現れました。

即座に飛び上がったアンタークは訳もなく月人の頭を割ります。

しかし、相手は新型らしく、頭を潰しても霧散しません。

まだ体がベストではないアンタークは月人の攻撃で体中にヒビが入ってしまいます。

しかし、なんとか力技で新型の月人を撃退します。

その後ヒビだらけの体のまま、完全に合金に閉じ込められたフォスの救出に向かいます。 












その瞬間

新たに現れた月人の矢がアンタークの首を射抜きました。


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(宝石の国 3巻 138ページ 市川春子作 講談社 2014年8月1日発行)

「先生が 
 さびしくないように
 冬を
 たのむ」


体がバラバラに砕かれても、大好きな先生のことを想い、自分が死ぬとわかっていても人差し指を唇に当て、目の前の仲間を助けようとする。

本来、フォスがいなければ自分は金剛先生を独り占めできていたのに。フォスがいなければ気を取られて後ろから殺されることもなかったかもしれないのに。

それでも、フォスの腕が失われた時は自分を責め、がんばってみたいと語ったフォスに悪態をつきながらも何かと世話を焼いてくれたアンターク。

彼がフォスに残したものは、この後さまざまなタイミングで大きな影響を及ぼします。

フォスと同じくらい脆くも、勇敢で、最後まで気高い宝石であったアンタークチサイト。

登場してから1巻分も経たずに月に連れて行かれてしまったアンタークですが、彼がフォスやストーリー、そして読者に与えた影響は計り知れません。

そんな彼がこの作品において初めて「死んでしまった」宝石なのでした。


もし気になった方は是非漫画を読んでみてください。コミックDAYS、各種漫画アプリなどで試し読みができます。


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