見出し画像

無邪気な心

年末年始は沖縄で過ごすことにした。那覇空港近くで車を借り、恩納村へ向かう。数分後、長くて急な坂道の途中で信号に捕まった。
左手に見える駐車場で、中学生くらいの少年が自転車を漕いでいる。グルグルと円を描きながら何周も何周も。
何かの遊びかな? やがて信号が青になると、勢いよく歩道へ飛び出した。グングンと、あっという間に30メート先へ。なるほど。坂道を少しでも楽に登る工夫だったのか。その無邪気さに微笑ましくなる。
たが車を発進させると、少年との距離はすぐに縮まった。せっかくスタートダッシュを決めたのに、悔しいかな? それとも羨ましいかな?
追い抜く瞬間に視線を向ける。だが少年は、車どころか前すら見ていなかった。頭を下げ必死に足を動かしている。
そういえば昔、私も同じことをしていた。なのに、いつの間にやめてしまったのだろう。少年のことが急に羨ましくなる。
君は、失うなよ。心の中でそう声をかけ、私はさらにアクセルを踏み込んだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?