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あれ、スーパーポジティブなのに初めて心が泣いたとき

渋谷に住んでいたことがある。

渋谷には一人で歩く女を物色する人種が2種存在していた。

ナンパ男と、おばさん集団だ。

そして、自称女盛りの私は捕まった。

そう、おばさん集団に。(ナンパ、されなかったな、、、)

当時、家路に向かう道には、いつも狙いを定めるおばさん集団が立っていた。

世界中の人々を幸せにしたいというとても素晴らしい志を持つマダムたちが、迷える子羊たち(=獲物)を探していたのだ。

宗教勧誘である。

おばさんA「あら、ちょっといいですか」               
私「はい!」
おばさんA「とってもキラキラしていて思わず目をひいちゃったわ!」
私「え、えへへ(おそらく今まであなたの前を何十往復もしてるんだが)」
おばさんB、C近づいてきて、囲まれる。
おばさんB、C「私たちも気になってたの〜〜!!」
私「え、えへへ」
おばさんB「好きなものとか、はまってるものってある?」
私「え、あ、はい!エマ・ストーンです!!」
おばさんA「ストーン?え、石?」
私「(石...)いや、あ、あのハリウッドの女優さんです。最近だったらラ・ラ・ランドとかで話題に」
おばさんたち「あ〜へ〜ふ〜ん」(興味ねえやん)
おばさんA「じゃあ、将来の夢とかある?」
私「はい、あります!!!」

おばさんA「いいわねえ!でも、
夢があったら、やっぱり悩みとか不安とかもあるよねえ?

王手!!!..........すごい指し込み方で、感動した。どんなことにもテクニックは必要なのである。何人も努力しているのである。

私「(満面の笑みで)スーパーポジティブなので、ないです!」(馬鹿)
おばさんたち「あらそう!ありがとうございました〜!」

そこで、おばさんたちとバイバイ。

実話である。あとで、ネットで調べたら選ばれし者たちはおばさんたちにビルの一室に連れて行ってもらえるらしい。

私は、迷える子羊として不合格。スーパーポジティブはお断りなのだ。そんな可愛くない女は、男にもおばさんたちにも救ってもらえない。男の家にも呼ばれない女は、おばさんたちのビルの一室にも呼ばれない。宗教の仲間にすら加えてもらえないとなると、ほんと、一人で強く生きてこ。

しかし、そんな私が、ある日、ベッドで大泣きしていた。

真剣に、本当に心のそこから真剣に、

「今後、エマ・ストーンと仲良くなることも絶対ない。そんな世界線で頑張る意味って何?アメリカに生まれて、こうしてこうしてああなれば、エマ・ストーンと仲良くなれたのに(無理だろ)。もうやだやだ、頑張るのやだ、生きる意味もない」

と急にめちゃくちゃ病んだのだ。初めての経験だった。
人生の半分以上、追っかけた夢がだめになったときですらそんなことなかったのに。

メンヘラの友達の気持ちが初めてわかった気がした。明るい発想がひとつも思い浮かばないのだ。頭に流れ込むネガティブは、せきとめることが全くできない。

頭の中ではPretenderが何度も何度もぐるぐる。「グッバ〜イ〜」

重力以外の別の力が私をグイグイとどこかへ連れて行こうとするのを感じた。ぱたり。寝込んだ。

起きたら、体がとてつもなくだるくて、熱い。

熱を測ったら

「39.6度」

診断は、インフルエンザ。

おい。はい。すみません。

心が叫ぶとき、体はもう、死んでいる。

それを学んだ瞬間だった。

エマ・ストーンと仲良くできない世界線にいることで泣けてきたり、

Pretenderが頭の中で不自然に何回も流れ始めたら、

それは、サインかも。結構キテますよ、注意。

身体と心は想像以上に、ひとつ。

不健康でストレスフルな自粛が続くけれど、深い闇に沈み込まないよう、自分の身体を、心をいつもより大事にしてみる。

髭男さまの優しい歌声に包まれながら、あったかいお風呂にでも入ろ。




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