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『ぼくらワールド解体新書』(17)感染症

冬になるとインフルエンザの予防に関する情報がテレビで流れます。そんなインフルエンザは感染症の一種です。感染症とは、多くの人にどんどん感染し、広がっていく病気のことです。そのため感染症にかかるのを防いだり、感染症にかかっても症状が軽くすむように予防接種がすすめられています。

先進国の多くは予防接種や上下水道の整備などがすすみ、感染症の発症はかなりおさえられているので目立ちませんが、紛争が長くなっている国や貧しいくにでは感染症で今も多くの人々が命をうばわれています。またウイルスの変化によりエボラ出血熱やSARS(重症急性呼吸器症候群)などの、新しい感染症が生まれています。

これら感染症が人類に広がり始めたのは、農耕時代に入ってからでした。とくに感染症が目立って発生したのは、多くの家畜を飼い始めたアフロ・ユーラシア大陸でした。

農耕が急速に広がっていったアフロ・ユーラシア大陸では人口がどんどん増えていきました。また家畜として飼育できる動物がアメリカ大陸やオーストラリア大陸などよりはるかに多く、数十頭や数百頭の牛やニワトリ、ブタなどの家畜と過ごすようになりました。

こうした家畜が持っていたウイルスや細菌が人間にどんどん入っていきました。その中には人間に悪さをするものもあったのです。それが感染症の始まりでした。

つまり、アフロ・ユーラシア大陸では人口の増加と感染症のウイルスや病原菌を持つ家畜から、さまざまな病気が人々に感染していったのです。

ではここで、なぜ狩猟採集時代には感染症と呼ばれるような病気が発生しなかったかを考えて見ましょう!

狩猟採集時代はひとつの地域でいっしょに生活する人数がものすごく少なく、数十人〜数百人ほどで暮らしていました。そしてそれぞれの集団の生活地域が離れていたこともあり、万が一命を奪うような病気が発生しても他の集団まで感染することはありませんでした。

しかし、農耕時代に入ると、どんどん人口が増え、多くの人が同じ地域で生活をするようになりました。さらに悪いことに、現代の先進国の都市とちがって上水道も下水道もなく、ゴミ収集車もありませんでした。農耕時代の人々は、ゴミやうんこなどの排泄物などに囲まれ、ものすごく汚いところで生活することとなりました。

感染症は感染症の病原菌やウイルスと接触する機会が多く、人口が多いほど流行し広がっていきます。病原菌やウイルスを持つ家畜、病原菌やウイルスがたくさんあるような不衛生な環境に触れると、感染症にかかる危険性が高くなります。そして感染症にかかった人が、周囲の人たちにその感染症を広めていき、どんどん感染者が増える仕組みとなっています。

感染症の原因となるウイルスや細菌に接触することがなければ、感染症にはかかりません。家畜が少なかったアメリカ大陸では、梅毒と呼ばれる感染症は発生しましたが、はしかやインフルエンザなどアフロ・ユーラシア大陸に見られたような感染症は、ヨーロッパの人々がやってくるまではありませんでした。

オーストラリアではヨーロッパの人々がやってくるまで、感染症と呼ばれるような病気すらありませんでした。そのためアメリカ大陸やオーストラリアに住んでいた人たちにはアフロ・ユーラシア大陸で流行した感染症への免疫が一切なかったため、感染症が一気に広まり多くの人々が命を落としました。

感染症の恐ろしいところは、急速に感染者が増え、多くの人々が命の危険にさらされることです。過去に感染症によってなんども多くの人々の命が奪われています。例えば、古代ローマ帝国の皇帝も苦しんだ【天然痘】は、予防接種が全世界で行われるまで、なんども世界各地で流行しました。

また、毎冬流行するインフルエンザも、今では命を失う人は少ないですが、時々大流行し多くの命を奪ってきました。第一次世界大戦後、スペイン風邪と呼ばれ大流行し、推定2000万人の人々の命を奪いました。

古代ローマ帝国の皇帝も苦しんだ天然痘は、ワクチン開発後に予防接種を世界的で行いました。予防接種の効果で1972年までに感染者を0人にすることができ、WHO(世界保健機関)から「撲滅宣言」(=天然痘にかかる人がいなくなったよという宣言)が出されました。その後天然痘にかかった人はいません。ただし、天然痘にかかる人が0人になるまでに推定で2億人以上の命が天然痘によって失われたと考えられています。

感染症をいかにおさえるかは、今も人類の課題となっています。今、ぼくらがあまり感染症を心配せずに生きていけるのは、現在の医療がすすみ予防接種などが効果をあげているからです。

皆さんも予防できる病気は予防接種で防いでいきましょう!

さて、次回は農耕時代に生まれたものとして戦争について見ていこうと思います。

それではまた次回


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