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龍王岳東尾根

雪を踏む感触、雪を滑る感触、氷を叩く感触、冷たい岩の感触、美味しい食事と酒をいただきながら一日を振り返る日常的な生活。そんな当たり前のことが既に遠い過去のことのように感じる巣篭もり生活。緊急事態宣言解除が進む中で、私自身のガイド活動をどのように再開すべきか。組織団体からは、やってはいけないことのガイドラインは様々出てくるが、活動再開に向けた具体的なガイドラインは当分出てきそうもないので、医師と相談しながら富山県に住み富山県の山をガイドする私自身の活動方針を作成し、感染リスクを避けながら登山するためのガイドラインをお客様に向けて既に発信した。

内容については地域的なことや特殊環境もあるので、ここでの内容紹介は避けるが感染防止とレスキュー体制への負担軽減を優先考慮して活動して行く。私自身もお客様も数ヶ月のブランクで山から遠ざかったため、いきなり平時と同じように山に対することは難しい。まずはウォーミングアップしながら、様子を見ながら慎重に行動したい。かなりの疲労を伴う厳しい登山後は一定期間免疫力も落ちるので、今シーズンは憧れのルートよりワンランク落としたルートをお勧めすることも周知した。

そんな中で登山復帰にもお勧めで、立山黒部アルペンルートの室堂から近く、6月ならまだ残雪豊富な初級バリエーションルート「龍王岳東尾根」を紹介したいと考えた。

龍王岳は標高2872mで立山連峰に属する山。鋭い岩峰から東に向かって御山谷カールへ伸びている岩尾根が通称東尾根。

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龍王の名に相応しい山容は黒部側に落ちる岩稜である東尾根にあり、別名、永島尾根ともいう。1930年5月6日に京都大学の永島吉太郎によりこの尾根が初登攀された。岩質は剱岳東面に似て硬くフリクションが効いて快適である。

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内容的には典型的な初級バリエーションルートで、全体的な傾斜もなく、とことん弱点を突けばロープの必要性を感じないくらいだが、岩の部分を積極的に繋げていけば爽快な岩稜クライミングも楽しめるだろう。北アルプス南部の槍ヶ岳北鎌尾根、穂高岳や後立山連峰、薬師岳などを眺めながらの登高は至福の時である。

立山黒部アルペンルートを利用して2450mの室堂から出発し、約4〜6時間で往復でき、手軽に楽しめる貴重なルートである。ただし、浮石も多く基本的にはバリエーションルートなので経験者や山岳ガイド同行の上で、ロープ、ハーネス、ヘルメットなどクライミング基本装備を必ず用意して望みたい。

私の一番のお勧め時期は4月中旬から5月中旬の残雪期である。白い立山と剱岳をバックに急な雪壁を登るシーンは実に絵になる。

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国指定特別天然記念物である雷鳥も4月になると動きが活発で、オス同士の縄張り争いが始まり、斜面を滑空する雷鳥の姿を見ることができる。上の写真は私が偶然撮影した奇跡の一枚。

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