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協業と共業。

 まだ九州縦断記が終わっていませんが、筆休めとして今日は少しビジネスに関する事を書いてみたいと思います。

 ビジネスにおいて提携という話は日常であるわけですが、よく聞く言葉が「協業」という単語、字的には協力してビジネスを展開するという意味ですが、三省堂の辞書にはこのように書いてあります。

同一の生産過程あるいは相互に関連のある生産過程で,多数の者が計画的に協力して生産に従事する形態。 → 分業

 個人的にはピンとくる内容でした。目指す姿に到達するために必要な要素となる人たちが協力をしていくという感じでしょうか。次に共業というものを調べてみました。カルマとか宗教的なものが多かったのですが、まとめるとこんな感じらしいです。

共業(ぐうごう)・・・集団としての責任。人類全体や日本人全体の業。

 ビジネスの話なのに、なんか違う方向性になりそうなのでこの意味をそのまま使うのはここではやめます。

 僕が考える共業というものは、ビジネスでは「共に働く」というまさに字の如くです。当たり前ですが共同で働くという意味ですね。協業と同じではないかという意見が大多数だと思うのですが、まあ、同じですね。しかし僕の場合は漢字の使い方で、その意味合いを変えています。いわゆる我流解釈というものになります。

 僕が使い分ける協業と共業の違いはこんな意味の違いがあります。

協業:完成形というゴールが設定されている。そのゴールに向けてお互いがパーツとなって完成形を作っていく。
共業:お互いが既に1つの完成形になっている。お互いの長所と短所を組み合わせる事で次なる完成形を作っていく。

 簡単に言えば、個々がパーツなのか完成形なのかの差になります。個々の存在は時には完成形にもなりますし、パーツにもなります。目的によって異なってくると考えています。例えばエンジニアとデザイナーでECサイトを構築していく場合これは協業だと考えます。しかしエンジニアとデザイナーが手を組んで新しい事業を発生させる事は共業だと考えています。

 今日なぜこの話をしたかというと、昨今の様々な提携話を見聞きする中で、この提携が「協業」なのか「共業」なのかが明確でないケースが少なくないと感じるからです。「一緒にやればシナジー効果があらわれる」という台詞が記者会見でよく聞かれますが、本当にそうだったかというと「効果なし」という結果だったという声も決して少なくありません。

 あるお菓子メーカーの話ですが、ある玩具メーカーと協業をするというニュースを出した事があります。お菓子と玩具はターゲットが同じ子供という事もあって親和性が高い業界です。このケースでは多くの人が玩具にお菓子を入れるなどをした「子供にとって高付加価値の夢商品」の新商品を検討するのではないかと考えたと思います。いわゆる共業です。しかし彼らが実際に行なったのは玩具を購入した人にはお菓子をプレゼントし、お菓子を購入した人についてはスタンプを10個集めたら玩具を1つ無料贈呈などといった、お互いの顧客の相互送客を行うのみでした。こちらは協力して顧客単価をあげていくという明確な目標が設定されている協業ですね。結局、この協業はわずか半年でなくなり、時期的なキャンペーンだったかのような結末になってしまいました。

 他社と仕事を一緒に行うという事はとても大変な作業です。会社の文化や風土も異なるほか、社員意識や労働環境も異なります。乗り越える壁は多数あり、経営者同士が仲が良いからといって始まる提携話は、その多くはどちらかが火の車になって走らないといけなくなる悲話になりがちです。ですから、提携を考えるときは、それがゴールに一緒に走るための協業相手なのか、お互いの提携が付加価値を確実に生むと確信できる共業なのかをしっかりと考える必要があります。

 自分に無い物を他社の強みによって補う事ができ、それによって自分のビジネスの価値を大幅に増す事ができ、そして「売上と利益」が向上できるのは間違いないと確信がもてたなら、それは共業として前に進むと良いでしょうね。しかし「シナジー効果」なるものが「生まれると期待する」という言葉にしかできないような提携話はほぼ間違いなくポシャるので、今一度考え直してみるのが良いかもしれません。

それでは今日はこの辺で。お越しいただきありがとうございました。


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