MEMENTOMORI

荒野行動で出会った彼女の声を俺は一年ぶりに聞いた。

諸行無常、人の世は川の流れのように、うつりにけりな、いたずらに。

今俺は、過去と未来と現在の葛藤に挟まれている。

MEMENTO MORIはラテン語で「いつか必ず死ぬことを忘れるな」と言う意味だそう。

意訳すれば、人はいつか死ぬんだから人生の短さを感じながら今この一瞬を必死に生きなければいけないし、物も人も気持ちも流行もずっと変わらないものなんてないのだから、ノリと勢いってのを大事にしてうまーいことタイミングよく時流に乗ってけってな。

僕には苦手な考えかもしれない。
小学生の頃からすでに物思いに耽ることが増えていた、おそらく1人の時間が長かったから人よりも昔を振り返ることが多かったのだろう、僕は立派な懐古厨だ。
また、交友関係も多くなかったし、田舎育ちだし、与えられたおもちゃも少なかったから、一つのものを遊び倒し、一つの物事に何度も頭をこね繰り返して、一つのアルバムを繰り返し聴くことも人より多かったのかもしれない。

刺激の少ない環境で育った僕は、少ない要素から多くの情報を引き出すことが上手くなった。それは俗に頭がいいと言う人もいるかもしれない。

他方、僕は執着心が強くなり、依存性が高くなり、今どきの言葉で言うところのメンヘラになってしまった。

荒野で出会った彼女と最後に話したのは一年以上前のこと、当時彼女は僕の世界の神だった。
彼女こそが唯一心の支えであり、僕の全てだった。
そんな彼女を失い、泣き疲れて道頓堀の橋の上でヘタってタバコを吸っていたあの絶望にまみれた景色を僕は忘れない。
その日僕を助けに来てくれた友人がいなければ冗談無しに僕は死のうとしただろう。

その日、心に誓った言葉が一つある。それがMEMENTOMORI


今彼女は、同じ声で、違うメンツと、別の世界で楽しんでいる。
気づけば僕らは再びゲーム内でフレンドになり、意思疎通をするようになった。
やっぱり俺はこいつのマブダチなんだって、そう思ったけど、彼女の声の影には棘がある。
また顔を合わせる前の、声だけの関係に戻れるなんて思ってた僕は、

バカだ。

あの頃には戻れないし、あの時の彼女はもういない、あの時の俺もいない。みんな死んだ。俺が殺した。俺は殺人を犯したんだ。思い出せ、自分の罪を。背中に背負った十字架を。体に刻んだ傷を。胸に誓った言葉を。

前後を切断せよ、妄りに過去に執着するなかれ、いたずらに将来に望を属するなかれ、満身の力をこめて現在に働けというのが乃公の主義なのである。(夏目漱石『倫敦消息』より)

MEMENTOMORI いつか必ず死ぬことを忘れるな

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