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ゲストハウスPongyi(ポンギー)

小さな体験が宝石のごとく輝く


金沢はここ数年でものすごく変わった場所のひとつだと思う。特に観光と言う分野において相当なスピードで変化が起きた。北陸新幹線の延伸とそれに伴うインバウンド(訪日外国人客)の増加。京都のような日本の風情と冬は雪景色、おいしい海鮮があることなどいろんな要素が重なり、ホテルやホステルの数が急激に増えた。そろそろ過剰では?などと言われているが、宿泊観光業への投資ラッシュはまだあと数年は続くと言われている。

ゲストハウスPongyi(以後ポンギーと記載)ができたのは、そんな今の状況が全く想像できない2009年、金沢初のゲストハウスがここだった。

いつだったかあるゲストハウスのオーナーにお勧めのゲストハウス聞いたとき、名前がポンギーだった。さりげない接客が素晴らしいと言うのがその理由だった。

ちなみに最近は自分も聞かれるこの「おすすめゲストハウスはどこですか」質問。人によって合う合わないがかなり違うので、なかなか答えにくい。ゲストハウスはその名称に収まる宿泊施設のタイプの幅が広いので、その人の趣味嗜好がわかっていればよいのだけれど、そうでない場合は、ある人にはフィットして、ある人には不快ということも結構あるからだ。そこがゲストハウスのおもしろさでもあり、ちょっと敷居が高い(その人にとってのアタリの宿かどうかということにおいて)ところでもある。

金沢の駅から歩いて7分。築140年という古い金沢の町家をほぼそのまま使い、ドミトリーと個室で構成される定員10名の小さなゲストハウスだ。玄関の前には小さな川のような鞍月用水が流れていて、橋を渡って建物にたどり着く感じもユニークだ。蔵を使ったドミトリーは屋根裏のねぐらみたいな感じで、狭い階段を上っていくのがちょっと秘密基地のようでワクワクする。

宿名のポンギーはちょっと聞き慣れない単語だが、その由来はミャンマー語でお坊さんと言う意味。ここのオーナーである横川雅喜さんが、以前ミャンマーで数ヶ月僧侶体験をしたことがあると言うのがその理由。エリート銀行員だった横川さんが会社を辞め紆余曲折を経てミャンマーへ。その後アジア支援のNPOの本拠地だった石川に移住、自分で稼ぐために直感で決めたというゲストハウスをオープンすることになったのだ。

わざわざ金沢の小さな町家に泊まってくれたゲスト。彼らに喜んでもらうにはどうしたらいいか?ということを常に考え、目に見えないような細やかな配慮を欠かさず運営を切り盛りしている。顧客満足度の高さには定評があり、世界的な旅の評価サイトで常に最高ランクで表彰されているほどだ。その噂を聞きつけ、ここに来る以外は高級ホテルばかり宿泊しているエグゼクティブが宿泊することもあるそうだ。また、アジアの恵まれない子どもたちのために、宿代の一部を寄付をするミッションを掲げて営業しているのもこのゲストハウスの特徴だ。

海外からのゲストに日本らしい体験をしてもらいたいという意向もあり、その日のゲストに習字のレッスン、抹茶づくり、折り紙などの小さなワークショップが毎日のように行われている。私が訪れたときは真夏だったので、夜「みんなで花火をしよう」と軒先で手持ちの花火を楽しんだ。

日本人にとっては、ちょっと懐かしいけれど、なんてことのない経験。でも海外からのゲストはそもそも「手持ちの花火をする」という文化がない国も多い。それに日本人のわたしたちだって、大人になって手持ちの花火を楽しむことは稀だし、たまたま同宿のフランス人家族と一緒に花火をするなんて体験なんてなかなかできることではない。

たまたま起こる楽しい出来事。夕食処をスタッフに聞いてたら「じゃあ一緒に行きましょう」とバイクで2泊3日旅していた初対面の中学校教諭と駅前のゴーゴーカレーを食べにいったりだとか。

そういう些細な体験が、旅で一番記憶に残ったりする。小さな予測できない出来事をたいせつに記憶する。それがもしかしたら自分の人生をだいじに生きることなんじゃないかと思ったりもするのだ。


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