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格闘家のフィジカルトレ不要論

都内新宿区四ツ谷にあるパーソナルジム「ファンクショナルトレーニングラボ クエスト」代表岩沢です。
格闘技歴50年、トレーナー歴40年のボクが今日は格闘家にフィジカルトレーニングが必要なのかについて書きます。
その中で日本人の文化や社会心理的な側面についても触れますのでぜひ最後までお読みください。

はじめに

まずは上の動画を見てください。
ボクのクライアントであるキックボクサー白州康仁選手のフィジカルトレーニングの様子を短くまとめました。

みなさんに質問です。

これは「筋トレ」ですか?
「リハビリ」ですか?
「フィジカル」?
?????

そう、その全てを内包した「ファンクショナルトレーニング」に分類される「フィジカルトレーニング」です。

格闘家は「フィジカルトレーニング」の意味を理解しているのか?

YouTubeなどで「現役格闘家」「元格闘家」「格闘技関係者」の意見を聞くと以下のようなことを言う方がいます。
「格闘技に筋トレとかいらない」
「あきらかに筋肉が動きの邪魔をしている」
「あれだけフィジカルやりすぎたから減量に失敗した」
「あれだけフィジカルやって筋肉つけてスタミナ落とすなら、もっとダッシュとかやった方が良い」

という趣旨の発言の結論は
「だからフィジカルなんて必要ない」
「動きの練習で身につけた筋肉が使える筋肉」
挙句の果てには
「だから俺は筋トレはやらなかった」

こういう発言を聞くとこの人たちは「フィジカルトレーニング」の意味がわかっていない=真っ当な「フィジカルトレーニング」を受けたことがない人なのだと思ってしまいます。
そしていつの時代の話だよと思わず突っ込みたくなります。

「成功者バイアス」の甘い罠

人や自分の成功体験は人の論理的な思考を狂わせます。
上記のような発言を聞いた格闘初心者はどう思うでしょう。
確実に半分以上の格闘初心者は「じゃあ、フィジカルはやらない方がいいんだな」
と思うでしょう。
だって成功者がそう言っているんだから。
つまり成功者の真似をすれば成功に近づけるという思考ですね。
こうして「心理バイアス」がかかり、客観的なデータ収集や思考といったフラットな作業ができない状態を「成功者バイアス」と言います。

以前noteに「パブリックナラティブ」の話を書きましたが、この「パブリックナラティブ」は「成功者バイアス」がかかる人の真理をついた話法であり、これを利用すればモノが売れるわけです。

それは「ダイエット本」「健康法」から「投資話」まで、すべて「成功者バイアス」が起こりやすい心理状態を利用して成り立っているわけです。

でも本当の「フィジカルトレ」は違うんです

「ファンクショナルトレーニング」による「フィジカルトレーニング」では一人一人の対象者、この文章の場合、クライアントである格闘家と向き合い、分析して、現状からさらに未来に向けて、戦い方も含めて望む形になるように「体の全機能を高める」トレーニングを指します。

だからその格闘家を分析して
「筋トレが必要なら筋トレを」
「動作のクオリティを高めるなら動作のトレーニングを」
「可動性を高めるならファンクショナルモビリティを」

という風に必要な能力から必要なトレーニングを処方し指導します。

つまり「その選手に必要なことしかやらない」 
これが本当の「ファジカルトレーニング」

だから「フィジカル不要論」って日本語として意味をなしていないんです。

それはトレーナーのせいです

もし不要な「フィジカルトレーニング」というものがこの世に存在するとしたら。
それはそんなプログラムを組み、指導し、実践させたトレーナーのせいです。
きっと知識も技術もなく、「俺の格闘家向けフィジカルはこれだ!」というスタイルを持ち、それを全ての格闘家に「これくらいできて当たり前!」と押しつけるようなトレーナーなのでしょう。

その場合、「フィジカルトレーニング」がダメなのではなく、そのトレーナーがダメなだけです。

全ては個人

  • フィジカルが必要かどうか?

  • どんなフィジカルをやれば良いのか?

  • どんな能力を高めたいのか?

全ては個人によって違う。
誰が何をやって成功したかは関係ない。
あなたに本当に必要なものを抽出して実行する。
これが本当の「フィジカルトレーニング」
それについては特に成功した「個人」の意見は参考にならないし聞かない方が良い。
なぜなら成功者バイアスがかかるから。

でも参考になる成功者のデータもあります

それは世界のトップクラスの格闘家が「フィジカルトレーニング」を取り入れているかどうか??
日本ではなく、世界の。
そう、もう答えは明白です。
世界を見た時、「フィジカルトレーニング」をやっていないトップクラスの格闘家なんて皆無です。

ではなぜ成功者バイアスに引っかかるのか?

  1. きついフィジカルはできるだけ避けたい。

  2. 体ではなく技で勝ちたい。

  3. 上の人の言うことを聞いていれば間違いないと言う思考停止でいたい。

はい、ざっくり言うと日本のスポーツ界、いや、もしかしたら日本社会全体にあるこうした思い込みのなせる技でしょう。

これも統計学やジャンルの最先端に対する情報が不足したまま、こういう思い込みを助長させるような「俺流経験論」を語りたがり、ポジションを確保しようとする「ご意見番」のような老害が多いこともその一因です。

最後に

結局「フィジカル不要論」は「筋トレ絶対説」や「走り込み重要論」と同じで思考停止を意味しています。

ここで冷静になって考えてください。
もしあなたが選手なら何が大切ですか?

楽して勝つこと??
自分のスタイル??
コーチやトレーナーとの人間関係??

もし
「強くなること」
「勝つこと」
が優先順位の上位に来るならフィジカルトレーニングがいらない選手なんてどこにもいないことを知ってください。

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