窓

連載『オスカルな女たち』

《 内緒話と捨て台詞 》・・・16

「それって、どういう…」
 つかさにはなにがなにやら…といった感じではあったが、玲(あきら)の様子から自分になにか「深刻な話」があるのだろうことだけは理解した。
 玄関を入ると、天井に埋め込まれた電気がぽっとついた。対人センサー付きの照明なのだろう。プライベートスペースというだけあってあまり使われていないのか、生活臭のない、住宅展示場のような不思議な空気感がふたりを包んだ。
「あなたの…お店の開店の日ね。私、あなたの彼とすれ違いだったでしょう?」
 ヒールを脱ぎ「ごめんなさい、スリッパ置いてないの…」と言って玲は、つかさをL字の廊下の先に案内する。
「あぁ、そうだったねぇ。探したんだけど…向こうもすぐ帰っちゃったし」
 一番楽しみにしていたはずの玲は結局、圭慈と会わず仕舞だったのだ。つかさは玲がもっと残念がるものと思っていただけに、そのあと意外なほどあっさりと受け流されたことが気になっていた。
「それはね。つまり顔を合わせられなかったからなのよ」
 いつもなら重低音が足元から響いてくる廊下を、静かに進んで行く。
「え? どういう…」
 扉の前で立ち止まり、一見なんの変哲もなさそうなそのドアノブを引くと、室内ではなく、暗幕のようなものが邪魔をした。
「え? なにこれ…」
 言いながらもつかさは、どん帳のようなビロードの布を引き上げて入っていく玲に続いた。そして次に目に飛び込んできたものは…
「え…」

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです